
『デッドプール&ウルヴァリン』ロバート・ダウニー・Jr復帰に思ふ、マルチバースの功罪。
マーベル・シネマテック・ユニバースの新作
『デッドプール&ウルヴァリン』を劇場で見てきました。
本記事は『デッドプール&ウルヴァリン』のネタバレを含むのでその点はご了承ください。
『D &W』とロバート・ダウニー・JrがMCUに復帰するに辺り思うことをツラツラと。
| 過去問対策が無意味のサプライズ
さて映画は非常に楽しく見る事が出来ました。
先ず冒頭。オープニングから最高。
デッドプールがNSYNCの曲『bey bey bey』に合わせて盛大に暴れ回るというシーンですっかり心を鷲掴みにされました。
単なる映像やアクションの音ハメだけではなく
デップーがガッツリ踊るという名・珍シーン。
MCU作品だと『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のオープニングに匹敵する位のお気に入りとなりました。
そして物語はデッドプールとウルヴァリンが
どこのユニバースにも属さない、マルチバースの掃き溜めにて、ダンテよろしく地獄巡りを結構します。
そして、きびだんごをお腰につけて、鬼ならぬカサンドラ退治の仲間に加わるのが
ダフネ・キーンのX-23!
ジェニファー・ガーナーのエレクトラ!!
ウェズリー・スナイプスのブレイド!!!
チャニング・テイタムのガンビット!!
また、クリス・エヴァンスがまさかのヒューマン・トーチを再演。
このようなサプライズキャラクターの登場だけでなく
”パニッシャーは五人いる”
“デアデビルは既にカサンドラにやられた”
“リード・リチャーズが作ったであろうヘンテコな乗り物”
”ヴァリアントのウルヴァリン達”
“スーパーマン登場”
“赤白タンクトップのケビン・ナッシュ”
など出題範囲が想定より幅広かった
学力テストを受けているかのような錯覚に陥りました。
エンドロールでは20thFOX版の『X-MEN』シリーズをはじめとした製作の舞台裏映像が流れ思わず涙が出ましたよ。
| MCUにロバート・ダウニー・Jr. 復帰
思わぬメンバーが同窓会にやってきて多幸感が溢れた状態で帰路についたのですが、若干複雑な気持ちにもなりました。
それは
”充実”と、”焦燥”と。
今ふたつ我にあり。
by田村潔vsノゲイラ
そして”焦燥”が勝る出来事が映画鑑賞後にXで見たサンディエゴ・コミコンのニュースで爆発しました。
サンディエゴ・コミコンで発表されたのは
『アベンジャーズ』の最新作に関する事です。

何とあのロバート・ダウニー・Jr.が
ドクター・ドゥーム役でMCUに復帰するという。
"3000回愛している"
『アベンジャーズ エンドゲーム』で完璧な退場を見せたロバート・ダウニー・Jr.でしたが、まさか自ら墓石に泥を塗るとは。
もちろんアイアンマンとDrドゥームという異なるキャラクターでのブッキングだし、これだけマルチバース化が進んだMCUですから、同じ俳優を別キャラクターで登場させるという禁じ手も敷居が低くなっているのかも知れません。
或いは近年のMCUの不入りからロバートというスター俳優をブッキングしてユニバースの起爆剤として投入したという意図もあるかも知れません。
しかし、やはり、儚く、美しく、散ったものには手を付けない
それが美徳というものでございます。
| 想い出はいつもキレイだけど
製作側はそれだけじゃお腹が空くからか、過去の成功を引っ張りだしがちですね。
今回の『デッドプール&ウルヴァリン』にも言えることでエレクトラ、ブレイド、ガンビットという人気キャラの登場。まず見た目でいくと各俳優が煌びやかな若かりし頃とのビジュアルの違いが明確に顕になりました。
元々爬虫類顔のジェニファー・ガーナーは、50歳を超えてエレクトラのコスチュームを着ると、悲しいかな恰幅の良い女子プロレスラーにしか見えない。
中二病満載でキメキメだった黒い番長こ
とウェズリー・ブレイド・スナイプスは髪や髭に白いものが混じり、痩せこけていて『違う違う、そうじゃない』の鈴木雅之味がますます増していた。
製作中止となって満を持してガンビットのコスチュームで登場したチャニング・テイタムですが、やはりガンビット役が似合わず。『ステップアップ』『マジックマイク』の頃のシェイプアップされたテイタムからまだしも、顔もボディもXXLになったテイタムは、コミコンで好きなキャラクターの恰好をしたい只のオタクにしか見えなかったり。
見た目の問題だけでないく、この様な大切なキャラクター達がマルチバースという免罪符で軽く扱われているように思います。
MCUのマルチバース化が進みパンドラの箱がパンドラではなくて、出し入れし易く、壊れやすい段ボールになってしまっているのではないでしょうか。
“デッドプールかメタ的キャラクター性だから”
“アメコミの世界設定がそもそもそういうものだから”
言い訳 aka 良い訳や御託はいくらでもつくろえるのです。
個人的にMCUが好きだった理由は、想像上のキャラクターであっても、彼らは確かに地に足のついたヒーローだったから共感や現実味が増していたのです。
アイアンマンは現実社会の中東情勢のテロ組織に武器を供給していたカウンターテーゼで生まれたキャラクターでした。酒浸りで金持ちになっても、パンツとズボンを着用したまま
お〇っこするような奴です。
キャプテンアメリカは第一次世界大戦の時のヒーローを浦島太郎のごとく現代にやってきたからこそ、直球のストレートしか投げられない堅物でした。現代の政局に放り込まれたキャップに談合や根回りのようなことは全く通じず
、目を真っすぐ見て正義を語る姿は嫌味がなく清々しいのです。
神話の神様であるマイティ・ソーは設定から浮世離れしていますが、この世界でやっていることは『クロコダイル・ダンディ』のような
カルチャーショックコメディです。それでいてビール片手に誰とでも仲良くなれるナチュラルボーンな陽キャです。
ハルクは典型的なジキルとハイドものです。優秀な頭脳とキャリアのオーナーなのにブチ切れると我を忘れるというまるで現代病のような人です。
一作、一作を大切に育てていった、かつての映画製作スタイルは最近のMCU作品にはありません。マルチバースをいいことに、かつての名歌手に”昔の名前で出ています”と歌わせるだけで、芸がなすぎます。
今の製作スタイルでは命やキャラクターの重みが全くありません。浮世離れした現実味のない場当たり的な盛り上がりだけのような
気がしてなりません。
