見出し画像

THE ORIGIN OF THE TOCCATA 1

AMERICAN INSTITUTUTE OF MUSiCOLOGY. のシリーズであり、1972年に刊行された。

最初にお断りする必要があるのは、筆者はキリスト教文明の知識に乏しく、教会行事への参加はほとんどないことである。そのためキリスト教信者の方なら簡単に理解したかもしれない事を見逃している可能性がある。
また時間的制限からtoccataの本来の意味が伝えられただろう撥弦楽器のtoccataについても考慮できていない。

16世紀の初頭からその世紀の末にかけて、Venezia派のtoccataは大きな興隆をみた。作曲家の名前でいけば、Andrea Gabrieliをパイオニアとして、Annibale Padovano、Vincenzo Bell’Haver、Sperindio Bertoldo、Claudio Merulo、Gioseffo Guami、Luzzasco Luzzaschi、Paolo Quagliati、Giovanni Gabrieli、Girolamo Diruta といった人たちが活躍した。

20世紀初頭の音楽学者はVenezia派のtoccataをcantus firms(定旋律)に基づかない自由に作曲された曲と位置づけたが、今日の分析によれば、cantus firmusに忠実な音楽であると認識される。

それではそのようなcantus firmusに忠実な音楽(特に鍵盤音楽)の起源はどこにあるのだろうか?
グレゴリオ聖歌の多声部の声楽曲として演奏する技法として、falsobordoneがある。これは最初は声楽曲の技法としてスタートしたが、3-5声部の音楽を扱うため、オルガンでも演奏されたようである。

このHenestrosaのfabordonがグレゴリオ聖歌に非常に忠実に作られていることが分かるであろう。

この楽曲はとても短く、鍵盤楽器特有の装飾もほとんど含まれないが、その後のVenezia派のtoccataも構造的にはほぼ同じである。

Andrea Gabrieliの音楽を少し聴いてみようと思う。曲はIntonationeであるが、toccataと様式はほぼ同じである。

続いてAndrea Gabrieliのtoccataの楽譜を見てみよう。

楽譜の最上列に書かれているのは、The Origin of the Toccataの著者が追加したcantus firmusである。

このようにVenezia派のtoccataはグレゴリオ聖歌を非常に高く尊重し、オルガンで奏されるとはいえ伝統的な声楽スタイルをそのまま受け継いだものである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?