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toccata 個人的まとめ1

J.S.Bachのオルガン曲にはToccata & Fuga という曲名が多数見られる。Bachの時代にはtoccataは単独で1つの楽曲とはならず、他のものと組み合わされて1つの楽曲となる傾向があった。
しかし、Andera Gabrieliから始まるVenezia派、そしてそれとは少し異なった傾向を見せるFrescobaldiやその周辺の作曲家はtoccataを単独で成立する楽曲とみなしていた。これは16世紀後半から17世紀にかけて出版された多数のオルガン曲集をみれば明らかである。

Bianconiの著作の表によれば、toccataはオルガン ミサにおける重要な構成要素であった。



「推察」オルガン ミサのもう一つの重要な構成要素はricercarである。toccataとricercarは、それぞれ、ミサのなかで2回演奏される。これは、ricercarが後にfugaへと発達し、教会音楽のなかで重要な位置を占めたことにつながりがありそうである。

Girolamo Frescobaldiの1637年の曲集の3番目と4番目のtoccataにはPer l’Organo da sonarsi alla levationeという注釈が付けられている。


このtoccataが聖体奉挙(礼拝の最も印象的な瞬間である)の場面で演奏されたことを示すと思われる。このようにtoccataが演奏される場面をはっきり設定し、その場面にふさわしい音楽内容を盛り込んだものと思われる。


同じ曲集の8番目のtoccataには、durezze e ligatureという注釈が付けられている。このtoccataには細かい音符はみられず、不協和音が多用され、ニュアンスに富んだ音楽が展開され、他のtoccataと質的に異なるのは一目で見て取れる。このtoccataがオルガン ミサのどの部分で演奏されるのかは私にはわからないが、先ほどの聖体奉挙(礼拝の最も印象的な瞬間である)の場面に近い緊張感を感じる。



Ercole Pasquini(ローマの聖ピエトロ聖堂のオルガニストとしてのキャリアーでいけばFrescobaldiの一代先輩にあたる)のオルガン曲でもDurezze e Ligatureという曲名が付けられものがある。これはtoccataとはみなされず、別ジャンルとして扱われている。おそらくFrescobaldiの8番目のtoccataと同様な場面で演奏されたのだろうと推察されるが、オルガン ミサの場面によって音楽内容を大きく切り替えるという手法はFrescobaldiの先輩のErcole Pasquiniがすでにして採用しているようである。


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