統一被害の実態が分かる本 『自立への苦闘』を読んでみた。
今回は、統一教会の被害を取り上げた書籍について紹介したいと思います。
タイトルは、「自立への苦闘 -統一教会を脱会して-」という本で、全国統一教会被害者家族の会の編集の元、脱会活動に携わってきた牧師、弁護士、元信者の方などの論評をまとめたオムニバス形式の本です。
2005年初版のやや古い書籍ですが、当事者(主にサタン側)から見た統一教会(統一家庭連合)の実情が描かれており、その悪質な実態の端緒を知るうえで有用な一冊だと思います。
以下、本著の内容について私自身の感想を交えながら紹介します。
1. 『お前は既に入っている』 〜入信に至るまでの信仰の自由侵害〜
統一被害者を見た際に、私みたいな素人は「何で文鮮明みたいな怪しいオッサンに引っかかるんだろう、バカだなあ」と思ったりするのですが、本著を読むとこんな私でも引っ掛けられるように統一の勧誘システムが巧妙に出来ていることが分かります。
具体的には、
最初のアプローチの時点では自分達の正体を見せずに近づき、運気upとか人生相談とか(最近はSDGsとかも)、話しやすい話題を切り口に人間関係を築く、
人間関係が出来た後に、各種の催眠技術を用いつつ、セミナーやら講習会で徐々に教義を教え込んでいく、
教化の過程では先祖の怨念が不幸をもたらす等の、霊的な脅しのスパイスを加える、
もう逃げきれなくなった最後の段階で、文鮮明や自分達の正体についてカミングアウトする、というステップを踏んでいきます。
これを見て分かるように、その人が正常な判断能力を持っている最初の時点では普通にバカバカしいと思える教義を、組織的かつ計画的な手法によって拒絶できない状態に個人を嵌め込んでいく、という点が彼らの巧妙なやり口だといえます。
本書でも書かれていますが、このことはその人から正しい情報や判断能力を奪ったうえで信仰を選択させるという点で、個人の信仰の自由を著しく侵害していることは明らかだと思います。
よく「好きで信仰しているのだから自己責任だ」という人がいますが、自己責任の前提となるフェアな意思決定が入口の時点で侵害されている、という点でこの論が乱暴だということが本書を読むと分かります。
2. 脱会させることの困難性 〜家族を分断する教団〜
上記のようなステップを経て本人がマインドコントロール状態に陥った後、通常は家族がその異変に気づきます。
例えば、大量の献金をして生活が立ち行かなくなっているとか、合同結婚式で素性の知れない韓国人に嫁ごうとしているとかといった事情に気づけば、多くの家族はそれを止めようとするでしょう。
しかし、家族を脱会させることがいかに困難かが、本著では多くの体験談とともに語られています。
1つは、信者自身が既に教義の理論武装を果たした状態にあり、家族であっても素人による説得は困難であることが多い点が挙げられます。
そのために、統一の教義の矛盾を丁寧に説明できる牧師や、統一の教義を十分に勉強した家族がその説得にあたることが重要となります。
そしてもう1つ、信者と家族とが向き合う機会を教会が組織的に奪っている点が明らかにされています。
マインドコントロール状態にある信者自身は、基本的に教団の教えに従順ですから、組織の指示通りに家族との話し合いに応じない方向で動きます。さらに『サタン』が近づいてくることの恐怖を植え付けられた状態ですから、彼らは本能的に非信者である家族との接触から逃れようともします。
ですから、家族との話し合いに応じるふりをして家族のもとから逃げ出すことや、家族との話し合いの最中に居所が漏洩して他の統一信者が妨害しにくるといった事例が起こります。
家族がいくら話し合いたいと願っても、統一は組織的にそれを妨害しようとしますし、何より個人をマインドコントロールすることで話し合い自体を困難にしています。
統一家庭連合は「家庭を大切にする」などと標榜しているはずですが、信者でない家族というのはあくまで邪魔者でしかなく徹底的に排除しようという姿勢が現れており、著しい言動不一致があることがよく分かります。
特に本書では、信者である母との関係に苦悩を抱えた娘が、あまりのストレスで家族を殺して自分も死のうとするエピソードが描かれており、その壮絶さがうかがえます。
3. 戦いは脱会した後も続く 〜マインドコントロールの後遺症〜
仮に、幸運にして信者だった方が脱会できたとしても、問題はまだ解決していないことが本著では描かれます。
まずは、信者の方がマインドコントロールの過程で恐怖による支配を受けており、その心の傷が一種のPTSD的な症状を引き起こします。
頭では教義のデタラメさが理解できたとしても、心の奥底に恐怖心を抱えた状態なので、何かのトリガーがあると強い不安が襲ってくる、そしてそのPTSDとの戦いは長期にわたって続くのです。『やっぱり文鮮明は真のメシアで、それに背く自分はとんでもない不幸を背負うのではないか』という常人ではあり得ない思考回路に陥り苦悩する元信者のエピソードが、事態の闇深さを物語っています。
またマインドコントロールされている間は、自分で思考・判断することを止められている状態であり、そういった一種の思考停止の状態のまま社会生活を送ろうとしても、周囲に適合することが難しい点も描かれています。
過度に上司や会社組織におもねってしまったり、常に周囲の指示命令を気にしてしまうなど、一般人とは異なるリアクションを示すことから、周囲とのトラブルを引き起こしやすくなる点が描かれています。
やはり社会の側も寛容な気持ちで元信者の方を受け入れる姿勢が大切であることを痛感させられました。
4. 政治との不健全な関わり 〜"反共"に騙されちゃう残念な人達〜
統一教会の活動は、前述した正体隠しの伝道活動をはじめとして多くの違法判決が裁判所で出ているという点で、反社会的な要素が強い集団と言えます。
それに加えて本書では、信者を恐怖で支配する過程で、日本の朝鮮侵略に関する強烈な映像を見せて「連帯罪」を自覚させつつ、その恩讐を赦してくれる文鮮明がいかに偉大なメシアであるかといった教義を刷り込んでいく点が描かれています。つまり、信仰を強制する過程で反日的な教義が利用されているということです。
そんな中でも、統一は御用学者(★三浦瑠璃さんではありません)を使って「霊感商法訴訟を扇動しているのは共産主義者の弁護士だからだ、作為的な宗教弾圧だ」というキャンペーンを張って、これまで取り締まりを逃れようとしてきたことが指摘されています。
常識的に考えると『反日的』な教義を利用して『反社会的』な活動を行う集団に対して取り締まるのに、右も左も関係ないと思うのですが、『反共』というお題目を唱えてさえいれば簡単に騙されちゃう残念な人達が国の中枢部に数多くいることは、この国にとって不幸以外の何物でもないと強く思います。
〜最後に〜
最後に、統一問題について考えるうえで最も重要なことが本書で語られているので、以下に引用します。
統一や統一シンパの政治家を擁護する全ての人達は、是非一度上記の言葉に耳を傾けるべきではないでしょうか。
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