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半導体パワーアンプ
「システム図(ブロック図)のようなもの」で、システムの本丸は「プリアンプ」「パワーアンプ」「スピーカ」にあると書いたが、本丸の中核に位置するのが「パワーアンプ」である。市販品のプリアンプと市販品のパワーアンプを比較すると総重量を含めた物量はパワーアンプのほうが大きくなりがちで、購入者とアンプビルダーの関心もパワーアンプに偏っているし、プリアンプと異なりパワーアンプには最大出力の大きさを競う側面があり、数値上のヒエラルキーが存在する(してしまう)のと、手持ちのスピーカを上手く鳴らすための(数値には現れてこない)性能(相性)の実現がなかなかに難しいためである。
ではパワーアンプの最大出力における中庸(足るを知る)はどこにあるのであろうか。我々の日常のリスニング環境、音楽のジャンルと聴き方を軸としてあくまでも私の経験に基づく主観ではあるが整理してみることにする。厳密解を得ることは不可能であり大雑把な整理/結果となることをご容赦いただきたい。
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こうしてみると、BGMとしての聴き方ならば最大出力は1(W)あれば足りることになる。大多数のリスナーの多くの場合(Situation)で不満が出ないレベルであろう。ただし気に入った曲をシリアスに聴こうとする場合(結構あるよね)、音量をどうしても上げてしまうし耳を澄まして曲の細部を聴くことになるため音の歪には敏感になってしまう。こうした場合でも不満が出にくい状態とするためには最大出力は10(W)欲しいね、ということになる。
以上の検討結果より8Ωのスピーカで約10(W)が出せることを、ここでは仕様上の解とさせていただく。
上記仕様で廉価な実用パワーアンプを実現することにするとコストと作りやすさの理由から真空管アンプではなく半導体アンプが選択肢となる。10Wを出力する真空管アンプを廉価に実現するのは無理である。非D級のパワーアンプICには心が動かないしトランジスタアンプをDiscreteで構成するには部品の入手が困難になってきたし部品数が多く高価になってしまうので(正直に言うと10Wのアンプを設計する自信がない)、LCフィルタレスのD級アンプICを採用する。ピュア オーディオ派からは、『そんなので、本当にいい音が出るの???』と言われそうだ。LCフィルタレスにするのは周波数特性のスピーカインピーダンス依存性が小さく、音質のチューニングが容易で再現性が高いからである。
D級アンプICと周辺部品が実装された基板(音出しまですぐたどり着けるのがありがたい)が現在は大量に出回っており廉価に入手できるので、それを使いこなし、音質上の手当(アレンジ)を施すことで実用レベルに持っていく方針とする。極めて安直で手抜きな路線なので、どう手当(アレンジ)するかが本プロジェクトの肝となる。
よってパワーアンプの構成は大別すると
・電源部
・D級アンプ(LCフィルタレス)ユニット基板
・音質上の手当部
となる。
【製作例】
以下の写真に示すPAM8610の載ったアンプ基板(30mm x 25mm)を使った製作例を示す。PAM8610はDiodes製のD級アンプICである。
https://www.diodes.com/
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この基板を使いこなす上で、課題は3つある。
そのまま鳴らしたのでは音質が悪い。
・低音量でも音が歪みっぽい(雑音のような付帯音がある)
・残留ノイズが多い(ニヤフィールドで気になるレベル)
・低域での周波数特性が良くないので低音不足に感じる
という状態なので音質上の手当が必要である(特に歪みに関しては必須)。ネットで検索しこの基板を買った人の評価を読むとかなり評価が低いのですぐに売り切れる心配は少ないと思うが、販売側が(売れないので)提供中止する懸念はある。ご興味のある方はお早目に。まあしかし、世の中にはもっと良いD級アンプICはたくさんあるし、今後も性能が改善したICが登場するであろうからあせる必要はない。手頃な値段のアンプ基板が入手できたらあれこれ弄んで、錬金術にいそしむのだ。現代のオーディオに欠けている(失われた)のは『遊び』である。『やってみなはれ』である。『感謝』である。上記のような基板が廉価かつ容易に入手できる時代になったことに対し素直に感謝し、老いも若きも自由に遊ぶべきなのである。効率化なぞ糞くらえ、である。
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