被疑者番号「10」【前編】


これは、とある事件の記録である。
留置場の構造や生活リズムは警察署ごとに違っているため、詳しく説明するとどこの警察署にあるかわかるらしい。


【2/15(水)】 

20:00 某所

その日は大した慌ただしさもなく、私は日々の業務をこなしていた。
「もうそろそろ戻りますね」
そう私は仕事仲間に話して別の現場へ向かう。

当時、私が雇われていた会社は、キャバクラ・ガーズルバーをはじめとして様々な事業を展開していた所だった。
飲食業を続けていた関係で、調理を任されたりすることもあって大変ながらも楽しんでやっていた。
時間は20時を回っていたが、まだまだ業務は残されていた。
足早に車で30分の距離にある別の店へ向かう。
店近くの駐車場に止めた時、計ったかのようにスマホが振動した。
上司からだ。
「ちょっと店がトラブってるみたいだから向かってあげて」
はて?店にはもう一人従業員がいるから大丈夫なはずだけど……。
そんなことを思いながら急ぎ荷物を肩にかけて店へと向かった。

21:00 家宅捜索

「ちょっといいかな?」
入り口には複数の人が立っていた。何やら物々しい雰囲気である。
私はそのうちの1人の男性に声をかけられた。
「どうなさいましたか?」
そう、私はどういう状況なのかわからないのだ。揉め事が起きているのであれば意図を汲み取り、それが対応可能かどうか、判断に迷うのであれば「確認しますので少々お待ちください」と一言添えて相談するのが基本である。
顔を見て脳内で記憶検索をかける。……この男性は見たことないなぁ。あっ、でも隣の男性はお客さまで何度も来られたコトのある方だな。確か本指名のキャストさんはー。
と考えていると、声をかけた方の中年男性が「こっちきて」と引っ張ってくる。
うむ……、こういう時は逆らわずに流れに身を任せる方が吉だ。

店内に入ると、入り口には10人ほどの靴。営業中でもここまで多くの人が入ることがなかった店だけに、何かこれまでと違う揉め事なのだろうと緊張した。
「〇〇さん、いいですか?これを見てください」
そう言って差し出された用紙を見て驚いた。
ー捜索差押許可状ー
なんだそりゃ。30年あまり生きてきて初めて見たぞ……。
「それとこれね、 あなたとその他数名に逮捕状が出ています。今からあなたの身につけているもの、持ってるもの、この店にあるものを押収するので、触らないようにお願いします」
逮捕状内容「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反」?
じゃあ何かい?目の前にいらっしゃる方々は全員刑事さんだってのかい?ドッキリだったらもう少しチープな作りにしていただかないと本気にしちゃうよ?なんてことを腹の中で思いながら、カウンターで他の男性と喋っていた従業員に目をやる。
ー俺に言われても迷惑だ、営業があるのにこんなことされて困るーそんな話をしていたように思う。正直、この段階では従うより他はない。
「はい、承知しました」
そう伝えるや否や4人の男性警察官(?)に囲まれ、じゃあこれから持ってるものを写真撮るからそこのソファでポケットにあるものと鞄の中身を改めさせてもらうね、と伝えられる。
あれ?これドッキリじゃない??
そんな風に思い始めた。

「じゃあこれから〇〇さんの家に行って、事件に関係あるものがあるかどうか調べるからね」
どうやら、私は自宅の捜索をされるらしい。
ー自宅に入られるってめちゃくちゃ嫌やんーカウンターで喋っていた同僚がそんなことを言っていた。代弁ありがとう、その通りだ。

後部座席に私を挟むように3人が座る。一般車とは言っても成人男性3人はかなり狭い。
「ちょっと狭いけど勘弁してな」
50代中頃と思われる刑事はそう呟いた。
「大丈夫ですよ。寒かったのでちょうどいいです」
何がちょうどいいのかはわからなかったがそんなことを言って家へと向かった。


21:30 自宅ガサ入れ・逮捕


「時間も遅いので、静かに入ってあんまり物音立てないようにするのでよろしくお願いいたします」
男1人暮らしの1ルーム、そんな人いらんやろと思いながら「これがガサ入れってやつなんですね」とこぼす程度には客観的に今の状況を分析していた。
令状を見せられた後、4人掛かりでの家宅捜索が始まった。
すぐに50代の刑事が呟いた。
「こうやってファイリングしたりまとめてあるから、ガサ入れが楽だわ」
見ると高校時代のネタ帳や趣味のクリアファイルが並べられている棚を見ていた。
「そこは事件とかは関係ないと思いますよ」
「なら通帳とか事件に関係ありそうなものだけ指さしてもらっていい?そこを重点的に探すから」
30代中頃と思われる刑事。効率は大事だよね。

ひと通り所持品と物証を抑えた後、工事現場の職人さんが着るようなベストを持ち出して来た。
見ると夏でも使用できるようなメッシュタイプで、腰のところに工具をかけられる伸縮性の通しがついている。
50代の刑事が若い刑事に向かって、おい逮捕状、と言っているのが聞こえた。
「〇〇さん、これがあなたとその他数名の逮捕状ね。これから拘束するから、このベストを着てもらうよ」
差し出されたベストは前後ろ反対だ。
こういうのは背中から羽織るものじゃないのかな?そんなことを思いながら腕を前に出す。
「〇〇時〇〇分逮捕」
装着されたベストは後ろでマジックテープで止められ、手錠がはめられた。
手錠には右手と左手の中心にリングがあり、そこに頑丈なヒモが結ばれている。
そのヒモを腰に巻きつけ、両手と腰がほとんど動かないような状態になった。
なるほど、よく考えられた構造だなぁなんて感心しながらも、初めての体験に少しだけワクワクしていたのはここだけの話だ。
「手錠が見えないようにカバーをしておくから、足元気をつけてついて車まで行きましょう」
「これから警察署に行って取調べするから、トイレとか大丈夫?」
30代の刑事は手錠のヒモをしっかりと持ちながら告げた。
「とりあえず大丈夫です」
正直、この状態でいつ行けるかわからないから行っておきたかったが、家に知らない人がいるのとお隣さんへの迷惑とかを考えて家を出ることにした。
施錠と消灯をしたことを確認し、家をあとにする。

行きと同じで後部座席に私を挟むように3人が座る。今度はチャイルドロックがかけられ、後部座席の内側からは開けられないような仕様となった。
「なんだか刑事ドラマのワンシーンみたいな感じですね」
ふと子どもの頃に見た記憶が蘇った。


22:00 警察署取り調べ


警察署に車が到着すると、普段は閉まっている門が開いた。
車の中で、もう5分で到着します、と50代の刑事が電話をかけていたからだろう。
奥へ入ると、裏口のようなところに5・6人の刑事が待ち構えていた。
「身ガラ通りまーす」
裏口から入り、カーテンで仕切られた通路を通ってエレベーターへ向かう。
「こっちの壁を見て立っててください」
指定された壁へ向かって立ち、待つ。
続々とエレベーターに刑事が乗り、あぁこれは身動き取れないなーなんて思っていると、降りてくださいと肩を叩かれる。
「身ガラ通りまーす」
取調室へ向かう途中に何人も警察官が立っていた。
曲がり角や階段の始めと終わりに見かけた。後から聞いた話だが、新しい警察署ほど人が立たなくていいような作りになっているそうだ。
これは被疑者が署内を移動する時に、一般人から被疑者が見られないようにという配慮だからだそうだ。
さすが国家規模の組織だ。連携が取れている。
「身ガラ通りまーす」
この掛け声は伝達のために被疑者が通る前に必ず発せられる言葉だ。
「すいません、トイレだけ行っていいですか?」
学生時代に恩師から「トイレは行ける時に行っておけ」と念押しされたことを思い出した。
「ちょっと待ってなー大か小か?」
「小です」
「わかった」
そう伝えられてトイレへと。
あっやらかしたかもしれない……、と思ったのも束の間、トイレへ到着。
周りには5・6人の警察官、利き手だけ手錠を外してもらって、用をたす。
視線が痛いー。
「すみません、お目汚し失礼します」
「仕事だから」
全国の警察官さん日々お仕事お疲れさまです、内心そんなことを思っていた。

取調べは取調室で行われる。
刑事ドラマのような薄暗い部屋、机の上に電気スタンドがある、古いパイプ椅子、壁には大きなマジックミラーなんてことはなかった。
天井には昼光色の埋め込み式のLED、動かないように脚が固定された事務机、パイプ椅子、入り口天井には監視カメラ。
やはりドラマはドラマだったようだ。

椅子に座ると、まず手錠のヒモを机の金具に固定、次に手錠をパイプ椅子に繋げる。
なるほど、机は床にボルトで固定されているから、この場所から抜け出すのは小型の刃物程度では難しいということか。
そんなことを考えていると取り調べが始まった。
「まず、あなたには黙秘権があります。言いたくないことは言わなくていい権利があります」
これは個人的人権を守る上で必要な台詞。取調べの際には必ず言われる文言だ。
逮捕内容の説明をされ、どのように何が行われていたのかを質問された。
「作業員として業務命令に従って店舗の運営をしていました」

取り調べの途中、身長、体重、顔写真、指紋採取が行われた。
「俺は取調べ官じゃないからリラックスしてくれていいよ」
そう気だるげに話したのは担当した警察官らしからぬ風貌の男性だった。
いや、何を話しても筒抜けなんでしょ?特に話すこともないな、なんて思いながら指示に従って写真を撮られる。
ものの数分で終了して取調べに戻る。
この時にちらっと時計が見えた。
時間は24時を回っていた。こんな時間でも大勢の警察官が仕事しているんだなと感心した。
途中「〇〇さんは事情によりこの留置場にいます、と郵便で1箇所に送ることができますがどうされますか?」と聞かれた。
今はよくわからないから送りませんと伝えた。また検察庁の調べの時に聞かれるらしい。

取り調べが終わったのは5時になる少し前だった。


【2/16(木)】 

5:00 留置場へ移送

「これから留置場へ〇〇さんを移送します。また、これから勾留期間は僕が取り調べをすることになるからよろしくね」
そう告げたのは取調官の30代の警察官だった。
「はい、よろしくお願いします」
K(本名は伏せる)と書かれたネームプレートを首から下げた彼とは、しばらくの間密室で過ごすことになるのだ。
相手も仕事でやっているのだから、変に因縁をつけて逆恨みするのも筋違いというものだろう。
確か逮捕から48時間以内にどうするか決めて、その後10日から最大20日間拘束できるって学校の授業で言われたな。その間の取り調べってことか……。その間どうするんだろう?
初めての経験だからこそ、知識として知っていても漠然とした不安というのがふつふつと湧いてきた。

移動、と言われてからが長い……。
「そういえば、今回私の他に何人かまとめて逮捕ということでしたが、全員同じ所で勾留されるのですか?」
「それはないね、全員違う所で過ごすことになるよ」
「そうなんですね、てっきり同じ事件だから同じ場所でと思っていました」
「それこそありえないことだよ。共謀の可能性もあるから、別の所に行くことになる」
Kは昔観たドラマのようなー強面で被疑者に圧をかけるようなーイメージとは違っていたので少しばかり安心した。

取調室には時計がない。
どれくらい時間が経ったかわからないが、途中で50代と見られる男性警察官が入り口を開けた。
「あと5分くらいで移動だから準備しよう」
手錠がパイプ椅子から両手に、繋ぐヒモは金具から外されて動けるようになった。
とは言っても入り口には数人の警察官、通路には例に漏れずたくさんの警察官、圧がすごい……。
「身ガラ通りまーす」
この掛け声は何度聞いても他人事にしか思えないのだが、残念ながら私自身のことなのだ。
そう思うと、なんでこうなったのだろうと考える程度には落ち着いてきた。
ワンボックスカーの一番奥の後部座席に私を挟むように3人が乗る。
門は重い音を立てながら開かれた。


6:00 留置場手続き


留置場へ到着した。
道中「深夜だから到着が早すぎるな……。調整してくれ」など到着時間の調整があったようだ。
到着はきっかりだった。
ここでも10人程度の警察官が待ち構えていた。
通路を通っていて初めて知った。留置場は警察署の中にあるということだ。
刑務所が法務省が管轄する所だから警察署とは別にあるとは知っていたが、留置場はこんな身近にあったのだなと驚いた。

金属探知機とボディチェックがされた後、留置場内の待合室のような所に通された。
白のワイシャツに使い捨ての衛生帽子、不織布の白衣に身を包んだ警察官が3人で対応。
「衣類や現金などを預かります。また、留置場の中はベルトなども持ち込みはダメなので、ヒモのない服に着替えてもらいます」
「ここから出る時にそれらは返すことになるのか、次の所に引き渡されるかは分かりませんが、ちゃんと戻ってくるので安心してください」
そう言って身につけているものは全て預かり用紙に記入される。
あー、そう言えば取り調べの時に後ろで押収されたスマホだとかクレジットカードだとか現金だとかが細かく書かれていたなぁ。ついさっきの記憶が蘇る。
「留置場では自分でものを買うこともできます。その際には持ってる現金から使っていくことになるのですが、留置場の全員の現金をまとめて管理(領置金と呼ばれるらしい)するので、最終的に持ってる金額から使った金額を差し引いたお金が戻ってきますので、よろしくお願いします」
「わかりました。またわからないことがあれば聞きます」
「あと、ここでは名前で呼ぶことができないので、番号で呼ぶことになります。あなたは10番です。また、あなたには接見禁止が出ていますので、弁護人意外と面会することができないのでご理解ください」

「留置場内では生活のルールがありますが、過ごしながら覚えていきましょう」
就寝時は部屋に衣服以外は持ち込めないらしい。メガネなども部屋の外に出すことになるそうだ。
「あと10分くらいで起床の時間だから、布団は出さないでおこうか」
気づけば時計の針は50を刺そうとしていた。
もうそんな時間だったのか……。

留置場は3重扉だった。
後で知ったのだが、一人部屋(独居)とそうでない部屋を分けるための構造上の仕組みだった。
改めて金属探知機とボディチェックがされる。
靴は没収されているのでこの時から「10」とマジックで書かれたゴム製のスリッパを履くようになる。
「腹へった……」
ここまで何も食べていない。……そう言えば昼から何も食べていない気がする。飯はまだか……、臭い飯というのは本当だろうかなんて思いながら静かに待つことにした。


7:00 洗面・朝食


部屋には鉄格子の扉があり、そこには目の細かい金網が貼られている。穴は大人の小指程度の大きさだった。
3畳程度の部屋だ。天井には取調室同様の昼光色の電灯が埋め込まれていて真っ平らだ。
奥にはドアで仕切られたトイレがあるが、とっかかりのない和式便座でよく見た水洗レバーは無く、壁にあるボタンで水が流れるようになっていた。ボタンの下には窪みがあり、そこで手を洗えるようになっている。
鉄格子の方から上半身が見えるよう、透明のアクリル板が窓の代わりをしている。
壁にもたれながら静かに目を閉じているとアナウンスが響いた。

「起床」
ずいぶん控えめな声だった。
熟睡していたらこれは起きられないのでは?なんて思う程度には控えめだった。
「開錠ー!」
私の部屋の扉が開いた。
「洗面と掃除、本替えの時間なので、まず洗面をしましょう」
そう担当官に指示され、貸し出されたタオルと歯ブラシで洗面を済ませる。
ちなみに担当官というのは留置場で世話をしてくれる人のことだ。警察官ではあるけれどかなりフランクな感じの印象を受ける。
「朝晩で本を3冊決めて部屋に持ち込めるけどどうしますか?」
「今回はいいです」
手続きの時に留置場生活はかなり暇だと聞いていたのだが、それよりも眠い……。普段なら寝ている時間に起きていたからか、慣れないことばかりだったからか、瞼が重くなっていた。
終わって部屋に戻る。
「大鍵お願いします!」
部屋の鉄格子を開ける際も、1人ではなく必ず2人が立ち会うようにルールがあるようだ。
被疑者が暴れて閉じ込められでもしたら大変だしな。
それからすぐに朝食が小窓から入れられた。
1.5合くらいの白米、たくあん、昆布、卵焼き、味噌汁。
「質素ー」
半ば驚きつつ冷えた飯の上に昆布を乗せて腹を満たした。
白米が多いのはありがたい。

そそくさと食べて横になることにした。
床が冷たく感じた。


10:00 検室


「検室ー!」「「検室ー!」」「「検室ー!」」
検室とは、変なものがないかチェックすること。
物々しい声と共に複数の担当官が留置場へ入ってくる。
そう言えばこういうのを「やまびこ挨拶」っていうのだっけ?店舗内で「いらっしゃいませ」と聞こえたら「いらっしゃいませー」という感じに似ている。
「開錠ー!」「「「「開錠ー!」」」」
部屋の鍵を開ける際は鍵を持っている担当官が開けることになっているようで、鉄格子を開ける時は常に2・3人はその場にいる状態だ。
ボディチェック、トイレチェック、設備に異常がないかなどがされる。
この時も壁や部屋とは違う方向を見るように指示され、それを監視する担当官もいるので、どのようになってるのかわからないようになっている
ちなみにトイレには紙が備え付けられていない。必要な時は、
「ちり紙くださーい」と担当さんに言うほかないのだ。

「ちょっと寒いので上着もう一枚もらってもいいですか?」
まだまだ春先で寒さが残る頃だったので、室内は暖房がかかっているとはいえ寒かった。
「これでいいかな?」
そう言って太めの担当さんが小窓から入れてくれた厚手のパーカー、かなり暖かかった。
これでまたゆっくり眠れる……、そう思いつつゴロンと横になった。


11:30 昼食

部屋寒い……。
慣れない床と明るい照明、換気のために無駄に風通しの良い室内。
なかなかぐっすりとは眠れないらしい。
昼飯は白米、おかず5品、お茶という質素なものだった。
食えないよりはありがたい、そう思いながら黙々といただいた。
14時頃にお茶が出された。
水分補給は適度にできるが、定時のお茶以外は水なので暖かいお茶は暖をとるのに重宝した。


17:30 夕食


夕食は白米、おかず5品、お茶。
3食きっちり食べたのはいつぶりだろう?不規則な生活を改めて思い返してみる。
そう言えば留置場の手続きの時に担当官が「お酒もタバコもないし、3食きっちり食べれるから、出る時はほとんどの人が健康になって出ていっているよ」と言っていたなぁ。
確かにここで20日も生活していればアルコールもニコチンも抜けるよなぁ、白身フライを齧りながらそんなことを思っていた。


19:00 布団入れ


部屋には基本的に朝に入れた本くらいしかない。
この時間に読みたい本を交換して寝る為の準備をするようだ。
ただ、マットレスのような快適に眠れるような寝具などはないようだ。
薄い敷布団、掛け布団、毛布、枕、シーツを自分で部屋に運んで用意する。
シーツは留置場を出るまで同じものを使うようだ。
しかし敷布団と枕は薄い……。
例えるなら使いすぎて綿がペシャンコになった年代物の座布団のようなものだ。かろうじてクッションがあるように感じる程度で、ないよりはマシかという程度。
確かに、いいものがあるとここに何度も来たくなるだろうからそういう配慮なのだろうか。
20時にお茶がでた。暖を取れるのはありがたい。


21:00 消灯


「消灯です」
とは言っても完全に電気は消えない。
昼光色から電球色に変わって見える感じになる。
いつも完全に暗くしていたからなかなか寝られない……。

【2/17(金)】 

6:30 起床・掃除・風呂・食事

48時間以内に留置かどうかの判断がある。今日は風呂の日だから早めの起床だった。
風呂に入れるんだ、少し感動した。
ただ何人も入れなくてはいけない宿命なのだろう、着替え含めて入浴は15分。
タオルで体を洗い、お湯は出しっぱなしという感じだった。
検察調べがあるとのことなので、着こめるだけ着込む(シャツ、トレーナー× 2枚、ジャージ)。
留置場を出る時はベストと手錠は必須、これが不自由さを加速させる。
担当官が「介護員さんよろしくお願いします」
介護員という警察官が手錠のヒモを握る。


8:00 検察調べ


検察庁へ。心なしか空気が冷たい。
例に漏れず、1人移動するのにも10人以上が動員されていた。
「身ガラ通りまーす」
護送は文字通り、護られている感じだった。被疑者1人に対して介護員1人のマンツー体制。
移動はマイクロバスのようだ。窓側に座らされ、挟まれるように介護員が座る。
「他の警察署も回っていくからトイレ大丈夫かい?」
気にして下さってありがとうございます。部屋を出る前に出てきました。


9:30 待機


「身ガラ通りまーす」
とにかく、寒い。
コンクリート造りの檻、イメージとしてはバイオハザードに出てくる地下とかの部屋。
駅のホームや野球場の観客席みたいな椅子が並べられている。
もしかしたら椅子の下とかにアイテムとかありそうだが、そんなものはない。
奥に仕切られたトイレ、ここもちり紙は小窓から入れる仕様。
1部屋4人程度、廊下には介護員が長い椅子に1列にずらっと座る。ネズミ1匹も逃さない視線だった。
ちなみに介護員は警察の刑事課以外の課が担当するらしい。長丁場で被疑者に合わせて行動するから介護員さんも1日仕事で大変そうだなとしみじみ。


昼食


部屋には時計がない。
時間がどれだけすぎたかわからないくらいに昼食が檻に入れられた。
ビニール袋にパン2本とパックジュース。
待つだけでも疲れるのはなんだろうか。スマホのようにスリープモードとか人間に実装される日はくるのだろうか?
なんて思っていると「◯(留置場の略称)10番取調べ」と声。
介護員が入って来てヒモを持つ。
もしかしたらペットってこんな気持ちなのかな?なんて思ってみた。


取調べ


エレベーターを上がり、検察官がいる部屋へと誘導される。
見ると机には大量の書類の山。世の中いろんな事件が起きてるんだなぁ……これを1日で捌いていくのかと尊敬の念でいっぱいになったのは言わないでおいた。
事件内容は業務命令に従っていたということで深く追求はなかった。
まぁ、本当に何も知らないし喋れることもない下っ端だったのもあったのだが。
簡潔に事件内容と事実確認で取調べは終わった。
「留置裁判までお待ちください」
またあの檻に戻るのか……と少しげんなりした。


16:00 留置裁判


続々と同じ檻の人が出ていく。
この残される感がもの悲しい。
最後の1人になってどれくらい経っただろうか、介護員も瞼が重くなって来たくらいに声がかかった。
「◯10番、出るよ」
法廷みたいな所を想像したが、簡素な部屋で2人の裁判官と書記?が待ち構えていた。
「あなたは勾留されます。10日間、もし勾留延長の場合は最大20日間です」
えっ、ショック。事件の内容もなんも知らんのに??
「これから勾留されることになりますが、誰か知らせたい人はいますか?郵送で送ることができます」
家族にはちょっと心配かけたくないし、知ってる人に送りたいが住所がはっきりわからないと送れないと言われる。マジか……。
「弁護士を依頼することができますが、私選国選どちらにしますか?」
資産があるかどうかのチェックがあるが、弁護士の知り合いがいない……。
こういう時は人脈があると違ってくるのかもしれない……、というよりも普通の人はそんなお世話になるような事態にもならないか……、と自分で納得。
「国選でお願いします」

移動


留置裁判が終わってからは早かった。
檻に戻ったと思ったらすぐに「◯10番、留置場に移動の準備をしてください」と。
そのまま車に行ってもよかったんじゃないのか……、なんて考えていた。
廊下の介護員にも疲れが見える。監視対象が変な動きをしないようにずっと気を張っているのだから、この役割も大変だ。
マイクロバスに移動してからも長かった。車内は介護員と私の1組だけ。日は暮れて辺りは暗くなっていた。
待てど暮らせど車は動かず……あれ?これ忘れられてね……?1人護送するのに3人動員するというのは確かに効率が悪い、複数人を護送するためだろう。と勝手に納得。
寝るか。

留置場に着いたのは夕食の時間だった。


19:30 夕食


ひとまず10日間が始まる。まずはノートとペンだ。
担当官に聞いてみた。
「ノートとペンが欲しいんですけど買えますか?」
買える日が決まってるからその日なら可能、ということだった。
思い立ってすぐ動けないのは歯がゆいなぁ。


21:00 消灯


この日は待ち疲れでよく眠れた。
やっぱり動くことは大事だ。

【2/18(土)】

7:00 起床・掃除・朝食

よく眠れた気がする。
枕はペタンコで高さが足りないのはご愛嬌と言ったところか。
本は3冊、朝晩に交換が出来る。
ラインナップは小説、漫画、啓発本などが本棚にある。
勾留されている人は基本的にここか差し入れの本を読んでいる。
読む書く以外のことが制限されているからこそ、自分のことをよく考えられるのだろう。
『こち亀』は偉大だなとしみじみ。
朝食に出てくる味噌汁は冷え切った体にはやたらとおいしいと感じる。


10:30 取調べ


検室が終わった後、担当官が部屋の前へ来る。
「10番、取調べだ」
おっと、留置場での取調べは初めてだ。
手錠とベストをつけられて留置場を出る。出た先で30代の警察官にヒモが渡された。
あれ?この人は確か逮捕の時に世話になったKさんじゃないか?勾留中は取調べするって言ってたなと思い返す。
「身ガラ通りまーす」
取調室は殺風景な部屋に事務机、パイプ椅子、パソコン、監視カメラという、最初のところと似た感じだった。Kの馴染みの警察署でなかったのも相まってなのか、取調官も落ち着かない感じだった。
「ちゃんとご飯食べた?じゃあ取り調べ始めますね」と取り調べは始まった。
生まれから調べられたのだが、正直そんなところから始めるのかと驚いた。
どこそこで生まれたの?なんて必要か?
じっと座って喋るだけだが、腹が減る
「じゃあお昼挟んで午後からまた取り調べするからよろしくね」
そうKは言って留置場へ戻った。

12:00 昼食


昼食は思ったよりも早く食べ終わった。
Kを待たせてはいけないと思ったのと、久しぶりに人と話してお腹がすいた、というのも相まってという感じだった。


13:30 取調べ


意思に反しての供述はしないとあるが、ちょくちょく言葉のニュアンスが違ってくるので、訂正してもらう。
「〜で〜だから同じだよね。」と言われても、直してもらえないと後で訂正するのは難しい。
受け取り方で違ってくるから言葉には気をつけて供述していたのに、そこを訂正されるのか!と思うことがあった。
「よし、今日は終わろうか」
ひと段落着いたのか、Kは取り調べの終わりを宣言した。
「明日は日曜日だから、月曜日にまた来るからよろしくね」
留置場へ戻る前にKはそう伝えてくれた。
報連相がしっかり出来るっていいことだなぁと思ったり。

留置場へ戻ると、担当官から「今日20時に弁護士面会があるから準備しておいてください」と一言。
早いなぁ……いや、ありがたいことなのだけど。


20:00 弁護人面会


テラスから派遣されてきた弁護士が来る。
ここでは弁護人と呼ぶようだ。呼び名がコロコロ変わるから法律ってややこしい……。

派遣された国選弁護人は柔和な人だった。
白髪が混じるAという弁護人だった。
弁護人という生き物がどういう生態系をしているのかはわからないが、とりあえず「弁護士は被疑者の味方だから安心してください」と担当官から言われていたので、深呼吸して面会室へ入る。
あっ、これドラマとかで見た覚えがある。口元にすりガラスがあってそこから話す感じだね。
なるほど。
「曖昧な返事をしたり、覚えていないことをやったと認めてしまったりしたら、供述調書にその内容が記され、後の裁判に重要な証拠として提出されてしまいます。すべての供述を拒否することも可能ですが、できることならば弁護士に相談してから取調べに応じるという姿勢を示すことをお勧めします」とのこと。
A先生、形式的な感じがする。ちょっと不信感がある。
とはいえ、国選弁護人はこちらから選ぶことはできない。
うまいことやっていくしかないのかもなとこの時思った。

21:00 消灯


そんな感じでこの日は終わった。
接見禁止もあって、外部との頼みの綱はA先生しかいないというのは正直辛いところだ。
もし今後捕まるとしても、知り合いの弁護士に頼んだ方がいいと学んだ。

【2/19(日)】

7:00 起床・掃除・朝食

パンだった。日曜の朝はここはパン食らしい。
紙とペンが欲しい……。いつどうなって、どう感じたかなどを書いておきたい。
パン2枚、マーガリンとジャムで食べたが、足しにならなかった。
白飯とかラーメンとか食べたいなぁ。
そう思うと、なんでも調達できた外は自由だったんだな……。

ノートに色々書いて自問自答していきたい。

「自弁どうされますか?」
見ると担当官が鉄格子の側に立っていた。
そう言えば昨日もなんかそんなワードを聞いた気がするぞ。
どういうことなんだろうと尋ねる。
「自分でお金を支払って弁当を買えるというものです」
見るとA4用紙にメニューが載っている。
ほうほう。からあげやカレー、カツ丼や牛丼もあるな……。
そう言えば留置場の手続きの時にそんなことを言ってたなぁ。


10:00 検室

くだらない事でも何でもいい。
他人と関わるのは億劫だが、ないとそれはそれで寂しいもの。
失って気づくありがたさなのかもしれない。

ローランドの「俺か、俺以外か。」は、突き抜けた生き方に感銘を受けた。
ローランドが1歳年下だと言うことにもショックを受けた。
いや凡人だからこそショックと言うのはあつかましいか!
結局のところ、何かに熱中している人間って輝いて見えるものだよね。

昼食と夕食を食べている時もそんなことを考えながら、「じゃあ自分は輝いて見えていたのか?求心力が足らなかったのはなぜなのか」とずっと考えていた。
ローランドがホストで有名になったとすれば、いわゆる人気商売から有名になった。
名が売れるというのは周りに認めている人が多いということ。
それは逆を言えば認めさせる実績だとかスキルだとか完徹する意志があったということではないか。


19:00 布団入れ

今からやれること、この空白の6〜16日間でやれることを考える。
次の準備、仕事収入を得るために何をする?
もう30歳を過ぎている人生。
なぜか2〜3年で移り変わる人生。
今後は何を目指していこうか。


21:00 消灯

この日はなぜか悶々とした気持ちで床へ着いた。
「俺はなんで生きているのだろう」哲学的な考えが頭から離れないのだ。
確か「人間は死ぬために生きている」とか身も蓋もない名言もあったなと思い返す。
少なくとも、人間は不幸になるために生まれてきているわけじゃないんだから、がむしゃらに何かしてもいいんじゃないかと思う春先の夜であった。

【2/20(月)】

7:00 起床・掃除・朝食・運動・風呂

「起床ー!」

留置場の管理をしているのは「担当さん」と呼ばれる警察の留置担当官で、一般的に知られている「看守」ではない。「看守」は刑務所や拘置所といった法務省管轄の刑事施設の管理や警備を行う刑務官で、留置場は警察の管轄、刑務所や拘置所は法務省の管轄であるということから、担当官は警察官であるのだ。
とは言っても、中にはめちゃくちゃフレンドリーに話してくれる担当官もいれば、そうでなく堅い感じの人もいる。フレンドリーとはいっても、あくまで警察側の人間だからそこのところは気をつけなくてはいけないのが難しいところ。


10:00 検室

「検室ー!」「「「検室ー!」」」「検室ー!」
この声にもだんだんと慣れてくる。
脱走とか自殺とか考えませんから。

14:00 取調べ

昼飯が終わってしばらくした頃。
「10番、取り調べだ」と声がかかった。
そう言えば月曜日に取り調べするとKさん言ってたなぁ。

「身ガラ通りまーす」
仕事内容について、基本的に料理を楽しんでいただき、満足していただけるよう努めてきた、ざっくりと話した。
飲食業をこれまで続けていたから、当たり障りのないというか至極真っ当なことだったので、嘘偽りはない。


19:00 布団入れ

新世紀エヴァン〇〇オン面白い。
長編漫画はあると時間使えるからありがたい。

【2/21(火)】

7:00 起床・掃除・朝食・運動

検室が終わった後、弁護人さんに面会したい旨伝える。いつくるやら……。


11:30 昼食

新聞の「歌舞伎町に立つ女性」が目が入る。
新聞は朝から各部屋を回っているが、1人読むだけでも時間かかるから終わりの方は夕方になったりするのが留置場。
土曜日に注文したノートとペンが届いた。
ここで逮捕からの流れを書いていく。
やることが単調だったから6日の記憶は鮮明だった。


13:00 取調べ

「身ガラ通りまーす」
取り調べは仕事内容について。とは言ってもKの取り調べは、雑。ところどころ私が訂正したり……。


15:00 差し入れ

留置場で着用する衣類は、ネクタイやベルト、靴紐など、紐状のものはすべて取り外す。
加えて、紐状の物が付いた衣類、例えば紐付きのパーカーや、ファスナーの付いたズボンもアウトです。
Tシャツ、トレーナー、ジャージ、スウェットが無難ですね。
ということでスウェット、パーカー、パンツ、靴下……あれ?パーカーOKなの??
というより、本!エロ本差し入れるとか馬鹿なの?しかもガチロリ系。
担当さんから「こういう系好きなの?」と冷やかしを受けた。
「いや、趣味じゃないですよ。捨ててください」恥かいた。
差し入れした同僚には感謝と遺恨を送ろう。


17:30 夕食

コーヒーは昼夜のみ、パンは開封しても賞味期限内なら残して保存するのは大丈夫。
お菓子は食べ切り。ビスケットとか煎餅は口の中の水分もってかれるから、頼む時は気をつけてください。
口の中パッサパサになります。


19:00 弁護人面会

夕食が終わってしばらくした頃。
「10番、弁護士面会だ」
例の面会部屋へ。柔和な白髪が混じる中年男性が壁越しに座っていた。
今回の事件は複数人が同時逮捕、ニュース新聞乗ったかどうか、他の人たちはどうなっている?気になることはとりあえず聞いてみた。
面会部屋にはスマホやパソコンは持ち込めないため、次回調べてくるそうだ。
取り調べでは何を話しましたかと弁護人。
今までの取り調べ内容、指示されてやってきているため故意ではないことを伝えた。
「言い方は悪いですが、話を聞く限り、あなたは今回の事件に対しての関係性が薄いですね。であれば主犯格に対しては何かしらあるでしょうが、あなたに対しては比較的軽いものになるかも知れませんね」
なんだか曖昧な返答だ。確かに間違ったことを言って後から訂正するのが難しい世界だから、歯切れが悪い言い方にもなるだろうが……。もう少し慈悲はないのか……。

「次いつ来てもらえますか?」
これは担当官から聞いた質問だ。国選弁護人にも良し悪しがあり、その時々で忙しい人とめちゃくちゃ忙しい人がいるそうだ。だから次に面会に来る予定を決めておいた方が、お互いにとっていいとのことだった。
ー弁護人に対する熱量とか仕事に対する誠実さとかは別になんとでも取り繕えるから、事実は残しておきたいよなー、などと思いながら「確かに予定を決めるのは大事ですね」となったのだ。

でしたら〜、と勾留延長があるのを見越して次の面会日が決まった。
終わり際に、もうしゃべりたくないとなったら「弁護人にしゃべらないようにと言われた」と伝えていいと言われる。
少しだけだが、信用度が上がる。こういうことが言える人は少しだけ安心できるな。


20:00 布団入れ

戻ると、担当官からこれまで部屋には1人だったが2人になると指示される。
翌日の昼までの一時的なものと聞かされた。
ワンルームで2人と言うのは……。なんだか嫌だなぁ。
壁を背にして視線が合わないよう横になった。なかなか眠れず、結局寝入ったのは空が白み始めた位だった。
ただ1つ勉強になったことは、毛布を枕がわりにするということだ。
薄っぺらい枕は使わず、頭の高さに合わせて毛布を折り畳めばいい感じに使えるというのは早めに知れてよかった。
首が痛くて仕方なかったからなぁ。

【2/22(水)】

7:00 起床・掃除・朝食・運動・風呂

この留置場での風呂の周期は5日ごとに1回だった。夏は週に2回入れるらしい。
仕事前に必ずシャワーを浴びて清潔にするのが習慣だったからか、毎日風呂に入れるということがステキなことだと気づいた。
「失って、初めて気づく、ありがたさ」と都々逸をつぶやいてみたり。
風呂上がりに差し入れの服に着替え、借りたものは返すことにした。
というのも、着替えは番号の札が貼られたロッカーにしまわれているのだが、着替える際はその前で着替えなくちゃいけないというルールなのだ。
しかも着替えを担当官はずっとしていて、その光景も部屋のどこからでも見えるのだから、なんというかお互いに嫌じゃないかという羞恥と気遣いとできればしないでほしいなという圧力と。

ロッカーの前で着替えなくてはいけないと知った時からは、風呂の時くらいしか着替えなくなった。


11:30 昼食

自弁が届いた。1週間ぶりのコーヒー(紙パック)はうまかった。
本当は挽きたてがいいのだけれど、そんな贅沢は言っていられないのが国家権力。
何より缶コーヒーも金属があるから紙パックのコーヒー飲料ということなんだろう。
紙パックもゴミとして小窓から出す時は、ちゃんとストローが刺さったままあるかどうか確認される。
これも一種の武器になるからなのだろう。

新聞に歌舞伎町に立つ女性の記事が載っていた。
だめだと思いながらも、ホストに貢ぐために体を売る女性のことが書いてあった。
一時的に売り稼業から抜け出せても戻ってしまうのは、心の支えがそばにいないからなのかもしれない。無償の愛とかそういうことを言うつもりはなく「嫌なことがあったときにそばにいてくれる人」「間違ったことをしたときに叱ってくれる人」「エネルギーをかけてくれる人、身近な存在」とかかな。
ありのままの自分を認めてくれる(見てくれる)人が近くにいるってすごくステキなことなんだと思う。
前提として、ホストもキャバ嬢もコンカフェ嬢も接待業なんだから、お客さんを満足させようと真剣にやってるよ。だからこそ、お金でサービス内容も変わるさ。
そこでお客さんが、もっともっと。となったら相応の金額がってなってしまうんでしょうね。
ところで、女性にフォーカスしている記事だがこれが男だとしたらどうだろう……。
男はつらいよ昭和の名作がまぶたに浮かぶ。

日に2回お茶の時間があり、冬場はこのお茶で暖を取る。
もし水分補給がしたければ、水をもらうことはできる。
夏は喉乾くだろうな……。


17:30 夕食


書いていると、時間が過ぎるのが早い。
スケッチブックと鉛筆があれば落書きができるんだが……。
どちらも自殺や逃亡のリスクになるからだろう、注文できないようになっている。
スケッチブックの針金はいろいろ使えそうだからな。


19:00 布団入れ


雨の中、少し寒い。体が鈍るからストレッチしよう。

【2/23(木)】

7:00 起床・掃除・朝食

祝日で運動がなかった。爪とヒゲが伸びている……。
そういえば夏目漱石は抜いたヒゲを机に並べる癖があったそうだが、それにならって私もやってみようか、とちり紙にヒゲを抜いて並べてみた。


11:30 昼食

土曜日に買ったコーヒー2本とチョコパンを食べきった。
甘いものを週に1・2回でも食べれると気が紛れるというもの。

酒かタバコどちらかを辞めると言うのならば酒かと思う。酒は思考を止めさせる。酒は道具だ。
扱えるならいいが振り回されてはダメ。何度失敗してきたことか。
人は考える葦である。パスカル先生はそう言っていた。
そう10番は言い残して寝ることにした。

交流中はやれることが限られる。
今回の接見禁止処分になれば、外部とは取調官と弁護人しかつながりは無い。
3畳ほどの部屋の中で約20日間過ごすのだから、寝るにも限界が来る。
休日に12〜18時間寝ていた私も、慣れない床と薄い座布団と風通しの良い部屋と他の部屋からの音で寝付けなかったりするのだから、普通に考えてしんどい時間となる。
自分のしたことに対して、省みる時間に充てるなら、ノートとペン便箋はあったほうがいいかもしれない。
ノートは200円程度、ペン(マジックペン)は100円程度。
メモしないと(メモしても)忘れる性格の人間は、気になったこと、聞いてみたいこと、思ったことをメモしておいた方が後々使えることがある(はず)


17:30 夕食

運動と言う運動をしなくなるので、留置場2日目からストレッチをしている。学生時代に得た知識で、下半身をほぐす5分程度のものだ。
ラジオ体操とかも考えたか、飯の量などを考えるとこれぐらいがちょうどいい。
戻ったら、ストレッチを朝活として行くのもありかもしれない。


18:00 弁護人面会


「10番、弁護士面会だ」
前回の面会の時に支払い関係を弁護人にお願いした。入金確認はレシートをコピーしてきていて、客観的にもわかるからありがたい。
お願いしていた報道状況は、Yahoo!ニュース記事を持ってこられた。
「これだけしかなかったです」と弁護人。
後でわかったことだが、実際はニュースが流れたりSNSで投稿されたりしていて結構祭りだった。

今後はどういう風になるかをざっくりと説明された。
10日目か20日目に、裁判か罰金が釈放かで決まる、裁判は約1ヵ月先、罰金と釈放はその日。
公務員だから日曜日に動きは無いそうだ。
検察官の調べが平日にあり、この調子で行くと20日目に何かの判断がある。
3月の3~6 日に取り調べがありそうということだった。


19:00 布団入れ


家に戻ったらやることをまとめてみた。

万が一、押収品のスマホに位置情報アプリなどが入っていないか確認しよう。
いや、そんな浮気調査的な探偵ではないからそうはならないかもだけど。
ニュースで名前が載っていない可能性が高いことがわかった。
不安は少し和らいだ。ただ、家族に迷惑かけてしまうかもしれないから出たら確認しようと決めた。

次回弁護人には転職情報誌を持ってきてもらうようお願いした。
ネットが使えない以上フリーペーパーでも探せるだけ気が紛れるだろう。
簡単な心理だが、先のことがわかっていると不安がほぐれる。
大目標小目標だったかな?
10日よりも20日と思っておいた方が10日で終わったらラッキーと思えるだろうし、どっしり構えていられると言うものだ。弁護人には聞く方が良い。

さて、3月8日までの13日間何をするかと考える。
自分のできること、やってきたこと、それをもとに次の一歩を。

【2/24(金)】

7:00 起床・掃除・朝食・運動

今日は朝から腹痛。
例えばスマートフォンが1台あれば、動画アプリやゲーム、SNSで様々な娯楽が時間を消費してくれるだろう。
そう考えると、私にとっての楽しみはアニメマンガゲームだったのかもしれない。
「お金を生むのは仕事、お金を生まないものは、趣味」と何かの動画であったように思うが、まさにそれかもしれない。
こち亀の両津勘吉のように稼ぎにつながることに発想を結びつけて行けたら面白いかもしれないなぁ。
このプレイヤーユーザである以上、お金と時間を使う側だと言う事はへ前提だから難しいかもしれない。
だったらいいな(願望)、を実現するには、行動が必須。
やることとやらないことを決める。

「10番、延長通達が届きました。3/8まで延長になるから了解お願いします」

延長が決定した。

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