スキゾフレニアワールド 第二十四話「痛み」
朝焼けが優しくオーロラの様に茜空を包む。東の太陽は全ての生きとし生ける者を照らし静かな朝を連れて来る。誰もが寝惚け眼を擦り日の光を求む。今日も一日という物語がスタートしては社会の歯車が廻る。誰も地球の自転と公転を止める事等出来ない。他意等無く音も無く忍び寄る出来事に全神経を傾けその、命の煌きを燃やす。今に生き、今を追求し今に果てて行く。過去も未来も現在地すらも超えて戒めの大地を駆り出す。其処に残るべき物とは……愛、無常。人々はまだその意味の正体を知る由も無い。静かに刻み続ける胎動に只の少年こと僕は耳を傾けていた。涼子の体が悪化した。それは紛れも無い事実。ならば自分に出来る事とは何か? 何度も自問自答して来た胸中に魔が差した様に一本の着信が入る。知らない電話番号。僕は出る事にした。
「もしもし」
「小倉君! 覚えてる? 玉井麻友よ。元気?」
「玉井先生?」
予想外の人物に少し拍子抜けしたが事態をすぐ察知した僕は要求を理解して電話を切った。
同窓会。
そんな行事興味が無い。ましてや涼子があんな状態なのにとてもじゃないが参加する気なんて成れない。返事は来週で良いと言っていたので僕はその感情ごとオールセーブした。答えはNOだ。同級生の再会に懐かしむ余韻なんて微塵も無い。
「下らねえ……」
僕は癖である溜息を付いた。誰も涼子を思えないとでも言うのか。僕は、そんな現実糞食らえだ。雨宮涼子の居ない世界の小倉輝何て無い。僕は無神経で心知らずな同級生のクラスメイトに腹を立ててそのまま昼寝をしてしまった。目覚めた時には梅澤のLINEを確認した。遊びの誘いもとてもじゃ無いが行く気分には到底成れなかった。不甲斐無い自分に腹が立ち此の世界全てを憎んだ。苛立ちは募り何度も舌打ちし握拳を構える。遣り場の無い怒りが全身を駆け抜け音信不通の現実に只耐える事しか出来なかった。嫌な事なんて忘れるに限る。百害あって一利無しだ。今の僕は非力だ。こんな自分じゃ迚もじゃ無いが涼子を救えない。もう一度落ち着き彼女の幸せの為に出来る事を考えるべきだ。でも……僕は多角的に物事を思考した末、その同窓会に出席する事に成る。其処で見た物は人間の目の背くべき感情、怨恨渦巻く情念の場に相応しき飲み会だった。