「2024年11月16日」 前編
たしかあれは金曜日の19時。横浜に向かっている電車の車内だった。
だいだいクリープハイプからのお知らせがある場合、12時と18時にXにてポストされる。たまに11時と19時にもお知らせがある。ただこの2回のタイミングで通知されることは珍しいのだが、その4回のタイミング近くになったら通知が来ないか気を張っている。
するとクリープハイプからXの通知が来た。19時なのに珍しいななんて思っていた。そのポストを見てみると何も文章が書いておらず動画だけが挙げられていた。
その動画を見てみると、クリープハイプの今までのライブ映像をミックスしたような動画でなにか荘厳な雰囲気があった。すると「クリープハイプ」「15周年」と字幕が出て「クリープハイプ」のロゴだけの画像に切り替わる。なんだこれは。
すると「栞」のイントロが流れ、「K-Arena Yokohama」と字幕が出た。思わず声が出た。そしてギターが入ったとともに「クリープハイプ現メンバー15周年記念公演「2024年11月16日」」と表示された。理解が出来なかった。もう一回見直した。
そうしているとまたXの通知が来た。それは「クリープハイプ現メンバー15周年記念公演「2024年11月16日」」のチケット情報だった。
クリープハイプにとって11月16日は大事な日で、当時サポートメンバーであった長谷川カオナシ、小川幸慈、小泉拓(以下敬称略)が正式加入した日である。クリープハイプの「バンド」という曲でもこの日のことが歌われている。
5年前には、3人が正式加入すると発表した会場下北沢CLUB QUEにてライブが行われた。当時太客倶楽部(クリープハイプのファンクラブ)に入っていなかった私は箸にも棒にも掛からず、その日クリープハイプのグッズのポップアップストアが下北沢で開かれていたのでグッズだけを買いに行き、会場上にあるサイゼリヤで昼ご飯を食べた。
今年はクリープハイプが現体制になって15周年の年である。そんな日にライブをやるのかと思い、すごく嬉しかった。テンションが上がって横浜駅を降りてKアリーナ横浜を見に行った。
クリープハイプを初めて観たライブについて過去noteに書いたことがある。それは横浜の神奈川県民ホールについてのライブである。
その日の最後を締めくくったのは「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」という曲で、これが本当に素晴らしかった。私が一番好きな曲だからというのもあるが、ステージ上にバラの花びらのようなものが降りしきるなか「最後の4小節 君の気持ちが動く さよなら」と歌う尾崎世界観の姿に鳥肌が止まらなかった。この曲を最後に歌ってステージを去るというのはあまりにもかっこよかった。ライブに行った時点で好きなバンドではあったが、このライブを境にさらにハマっていった。
それからフェスや対バンライブなどで神奈川県や横浜に来たことはあると思うがワンマンではそのライブ以来だと思う。そんな思い出の地横浜では2度目のクリープハイプを、しかも15周年の大事な日に観られるのが本当に嬉しかった。Kアリーナ横浜はキャパ20000人の会場でこれならライブに行けそうだと思い、テンションが上がった。
その日のうちにチケットは申し込んだ。そしてチケットは無事当選。15周年の日を会場で祝えるのが嬉しかった。
2024年11月16日になった。
最近はなかなかライブに行く時にキーホルダーなどのグッズを身に付けていなかったが、今回は前日から準備を始めてカバンにジャラジャラと付けていた。
そしてタオルと服をどうするか。普段のライブではあまり考えずに選んでいるが、今回は自分の中で「文脈があるもの」を選びたかった。そこでタオルは初めて行ったツアーで販売されていたタオル、そしてTシャツは10周年ツアーで販売されていた”I DON’T DO THE ENCORE”と書いてある「アンコールはやらない」歌姫2020Tシャツを着ていった。
「バンド」の歌詞に
今までバンドをやってきて 思い出に残る出来事は
腐る程された質問に 今更正直に答える
2009年11月16日 アンコールでの長い拍手
思えばあれから今に至るまで
ずっと聞こえているような気がする
とある。現メンバーで活動していくとアンコールで発表した時の拍手について歌っている歌詞だ。
クリープハイプは2018年頃からアンコールをやっていない。下北沢で行った10周年ライブでもやっていない。そこで問題となるのが「今日果たしてアンコールはやるのか？」という点である。今日のライブが終わったらアンコールを求める拍手はするが、きっと今日もアンコールはやらないと思い、好きな「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」がモチーフとなっているこのTシャツを着ていくことにした。
そしてグッズをジャラジャラと付けたカバンとバンドTシャツ、タオルを身に付けて私はKアリーナに向かった。グッズと太客倶楽部向けに今までの活動の歴史を振り返る「太客倶楽部記念観」を見に行くために10時には横浜駅に着いていた。
横浜駅を降りるとちらほらグッズを身に付けた人がいた。グッズを付けている人を見ると頼もしく、同士のように感じる。そんな人たちについて行き無事Kアリーナに着いた。遠くに見えていたKアリーナは間近で見ると大きく、要塞のように見えた。
すでにグッズを買うためにたくさんの人がいた。幕張メッセでライブを観た時にも思ったのが、これだけ多くの人が同じ目的をもって集まっているというのがなんか嬉しい。無事欲しかったグッズも買えたし、太客俱楽部記念観にも行けた。あとはライブを見るだけだと思い、それまでの時間を過ごしていた。
そんなこんなでもう開場時間となっていた。全席指定なので開演時間の20分前くらいに席に着いた。座席番号はファンクラブの最速先行にしては悪いかなと思っていたが、きっと自分よりも前にいる人たちも同じタイミングでとったと思うので、悔しさはなかった。むしろファンの多さに圧倒された。会場は横にとても広く、壁にはカーテンのようなものがかかっており、祭典が執り行われるような雰囲気だった。
席に着いて私は「おやすみ泣き声、さよなら歌姫」と「バンド」を聴いた。この2曲はぜひやってほしいと、すがるように聴いていた。聴き終わるとすぐにイヤホンをしまい、携帯も機内モードにして始まるのを待っていたが、開演時間の17時には始まらなかった。
だいだいどのライブでも開演時間ちょうどには始まらない。しかし開演時間を過ぎてから段々と緊張してくる。いつ始まるか分からないからスマホも使えず、何か考え事をするしか時間が過ぎない。
今日の一曲目は何だろうか。「栞」か「バンド」かな。「バンド」は最後かな。今日アンコールはあるかな。君の事だからきっと無いね。12月に出るアルバムから新曲やるかな。あと今日ツアーの発表あるかな。
そんなことを考えていたら徐々に会場内の明かりが薄くなっていった。鳴りやまない拍手とともに会場内の明かりはステージ上だけとなった。
いよいよライブが始まる。