見出し画像

ピアノと仏壇<本物論> 奇妙な比較

スリーブレス・カットソーのECショップ【DeeDee-T】を運営しています。
単なるカットソー、それもノースリーブ・無地・シンプルなカットソーのみを取り扱っているのですが、ファッションの一端であることには違いないので、少しずつではありますがとりわけ大人の女性達の<お洒落感>について思うことを発信していこうと考えています。

そこで、<本物>というワードが頭の中でふわふわ、ゆらゆら浮遊し始め、家事や日常の雑多をこなしながらしばらく<本物>について色々と思い巡らせていました。大人の域に入れば、数少なくても<本物>を身に付け、あるいは使い、違いが分かる感覚が欲しいものだ、などと考えていくうちに、でも<本物>とは何だろうと、頭の中がぐるぐるしてしまいました。

<本物>・・・
決して高額なモノ、ブランドモノというわけではないと思うのです。かつ、決して一生モノ、というわけでもないと思います。例えばウールギャバのようなしっかりとした素材の冬物コートといえば一生モノも有りでしょう。一方、私が扱っているようなカットソーなら、どんなに丁寧に作られたとしても限界があり、一生モノのTシャツなんて、むしろ不自然でしょう。

家具類だとどうだろう。やはり無垢素材のモノは<本物>と呼びたくなります。・・・・・と考えるうち、我が家の仏壇と私が小さい頃から弾いてきたピアノが頭の中で並びました。

前置きが長くなりましたが、ここからが本記事の本題です。
8年程前に愛知県の実母を関東圏の我家に呼び、夫と私、母の生活が始まりました。その際、紫檀の大きな仏壇を処分すると母が言い、現在ではコンパクトな仏壇に変わっています。

実家は先祖代々というわけではなく、父が亡くなってお墓や仏壇を用意したので、私もその仏壇と共に暮らしたというわけではありませんでした。愛着だの思い出だのは、私の中では希薄な方だったと思いますが、それでも仏壇を買い変えるなんてと少々驚きましたし、抵抗も覚えました。

そこで、たまに家具類を購入していた近くの家具屋さんが修理もやっているというので問い合わせてみました。処分するならその一部でも使って何か手元に残せるモノが出来ないかと思ったのです。小さなナイトテーブル、小さなスツールなど。これは昔、家にあった仏壇の材料で作ったモノなのだ、といえるようなモノを。

ところが、驚いたことに、仏壇はだいたい合板で出来ていて、表面に薄く張った素材が紫檀なのではないか、と言われたのです。え~っ? 仏壇って無垢なんじゃないの? とびっくり。無垢材なら何かしら出来るが貼り合わせた物なら無理だし、それだけのことをする価値があるかどうか… ということでした。

うーん。おおよその価格を母に聞いたところ、無垢材の大型食器棚、箪笥二竿くらい買える程の金額。アップライトのピアノも買えるくらいの金額。なのに、無垢材じゃないなんて。私には衝撃的な事実でした。

そのすぐ後、実家に行くことがあり実物を触って確認したところ、やはり無垢ではなかった。仏壇と聞くだけで、私はてっきり<本物>なのだと思い込んでいました。

問い合わせをした家具屋さんによると、数百万円になると無垢材で作られていることもあるが、少々の高額程度ではほぼ無垢ではない、とのこと。

仏壇の真の価値は、残念ながら私には分からないのですが、なぜ純然たる木で出来ていないのだろうか。そこで比べてしまうのがピアノ。まぁ、ピアノといえども現代では変わっているのかもしれませんが、私が幼少時に買い与えられたものは木材をふんだんに使い、蓋もずっしりと重く、その様相からも重厚感が見て取れます。うろ覚えではありますが、小さいときに見たパンフレットには木材が切られ、数年の乾燥などの処置を経てやっと製造に入るという一連の写真が掲載されていて、以来、私はピアノだけでなく、木材で家具を作るって大変なんだなぁ…と思っていました。

はっきり言って衝撃的でした。
以前、職場の人のお宅ではお祖母ちゃんのお位牌などは酒屋さんで貰ってきた木箱を利用して納めている、と聞いたことがあります。実際、ネットでも2、3万円という安価な仏壇も売られています。私的には合板で体裁を繕った立派なモノも、ネット販売の2、3万円のモノも同等に感じてしまうのでしょうが、違いってあるんでしょうか… ?だったら、例え粗末ではあっても本当の木材を使った酒屋さんの木箱の方が良いんじゃなかろうか… ?それとも、そもそもそんなことを考えてはいけないんだろうか?

結局大きな仏壇はそのまま専門業者に依頼して引き取って頂き、母は転居後、改めて小さな仏壇を用意したのでした。

買い替えた小さな仏壇
縦55㎝×幅45㎝×奥行31㎝
ウォルナットのピアノ
重さは約250㎏
製作年代は1970年代

ピアノは木製の本体だけでなく、鍵盤、ペダル、フレームや響板、ハンマー、ピアノ線、などなど様々な部品を要するほか、複雑な調整が成されています。楽器から奏でられる音は空気の振動を伝って届いたり広がったりするものです。なので、電子ピアノなるものは本当のピアノとはいえないと思っています。つまりピアノではないと。こうした楽器演奏では鍵盤に正しく指を置く以外に、「音を作る」という要素が加わって初めてその人の演奏になります。ある方のコメントでは電子ピアノは楽器ではない、パソコンのキーボードと同じだ、と述べていましたが、私もそうだと思います。また調律の方にお聞きした話では、電子ピアノでもある程度は上達するが一定のところで止まってしまうのに加え、感性の発達が難しいようだということでした。住宅事情もあり難しいかもしれませんが、どうせやるなら中古で全く構わないので<本物>のピアノをお勧めします。


さて、中古ピアノだったら、数十万円で手に入れられますが、新品ならと考えて比較すると、やはり小型の仏壇とはいえご本尊や香炉、お鈴、花器などなどを合計するとピアノと同レベルなんですよね。木材や真鍮など使用する材料の量も違い過ぎるのに。
いや、こんな比較をしてはいけないのかもしれません。比べるもんじゃないのかもしれません。

仏壇が偽物などと言う気はないし、そんなことを言ったら罰が当たりそうですが、それにしても、重ね重ね、なぜこんなに大事なもので、しかも高額なものが無垢材、つまり私に言わせれば<本物>の材料で作られていないのだろう・・・。

折しも、お盆で、つくづくそんなことを考えながら我家と実家の二つの仏壇をお掃除していたのでした。




いいなと思ったら応援しよう!