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<誰かの手作り>が散在する日常

約十年前に逝った義母と、未だ健在の実母は二人とも手作りをする女性でした。私の母は高齢かつアルツハイマーと診断されており、すっかりモノづくりをする人ではなくなってしまったので、生きてはいますが先の「・・・女性でした。」という表現でいいのかと思います。

二人の女性が特別だったのではなく、お金を出せば何でも手軽に買えるわけではなかった時代と、戦後のモノが無い時代を知っているので、当時の女性達の多くが家内で必要な様々なモノを自ら作って、大事にしていたのだと思います。

それでも二人の母はそれぞれに作ることが好きだったとみえ、今の私たちの生活のここかしこにその形を留めています。

義母の編んだケープ
実母が編んだセーター

ローズ色のケープは形見分けの際に頂きました。寒い時期、黒のシンプルな上下にこれを一枚羽織るだけで素敵だし、温かそうなので大事にしています。

グレーの男物か?と思うようなセーターは私が高校生のときに母が編んでくれたもの。これを着て受験に行ったことを覚えています。母は凝った編み方よりもシンプルなメリヤス編みを好みました。この毛糸、たぶんアクリル混であまりいい素材ではないと思いますが、毛玉を取り除き、やはり大事にしています。

昔の人は着なくなった手編みのセーターは解いて、熱いお湯で糸のクセを直し、巻きなおしてから再び何かを編んで使うということをしました。子供の頃、左右の手を差し出し、蘇生した毛糸を巻きなおすお手伝いをしたことを何となく覚えています。

次の四つはいずれも義母が作ったもの。

縦約35㎝×横約20㎝×奥行約5cm
リビングの壁に
縦・横 約20㎝
廊下に
直径約30㎝
玄関に
幅約18㎝×高約12㎝
仏壇の横に

これを何と呼ぶのか未だに知らないのですが、紙粘土のような材料で作っています。実は手元に有るのは全くもって小品ばかりで、義母が(いい意味で)脱力し、何気なく作ったという印象のモノたちです。本当はスゴイ大作がいっぱいあり、教室も開いていて、作品は都心のデパートで売られていたとのこと。でも、あまりに大きく、立派過ぎて、なかなか狭い住居空間に置く場所もなく、我が家には貰いませんでした。私は、こうした力みのない、小作品の方が好きなので、満足しています。生活にも溶け込んでいます。


サイズがまちまち
直径10㎝前後

こちらは親戚の叔母の形見分けの際に頂いたもの。段ボール箱に色とりどりの球たちがいっぱいで、何に使うのかなんて考えもせず貰って来てしまいました。この叔母も家の中でよく動く女性で、お野菜から料理から色々なモノを作っていたという印象があります。信州で一生を過ごした女性で、勝手な解釈ですが愚痴を言わない、芯の強い女性像が私の中にあります。最後に一人暮らしになり、常時手を動かしてこれを作り続けていたのかな、何を思って続けていたのかな、などと思うことも。今はリビングの片隅に置いています。

12月になると出します

こちらはトールペイントというのかな(?)
今はもう会わなくなった古い友人がXmasシーズンになると毎年手作りのオーナメントを送ってきてくれました。その一部です。この暑い最中に季節外れですが…12月に入ると、ちっちゃなツリーや電飾と共に今も飾ります。彼女は元気なのかなぁ…?

まだまだ掘り起こせばあれもある、これもあると、手作りのモノって結構生活の中にあるのですが、キリがないので最後はコレをご紹介。

ご覧の通り、ぬか床です。
私が20代で一人暮らしを始めるとき、実家の母のぬか床を分けてもらったものを、こうして今も存続させているのです!つまりかれこれ三十数年ものということです。因みに元のぬか床はどういう経緯か、もうとっくにナキモノとなっており、これは貴重なぬか床なのです。

ぬか漬けやってるなんてスゴイね~、と若い頃はよく言われましたが、ぬか床を初めから作った経験はなく、ただただかき回したり、漬けたり、ぬかや塩を足したりしているだけで何十年も生き続けてくれているので、それほど大したことではないのですが・・・。

子供の頃は、母の手作りの洋服や木琴袋、体操服入れなどよりも皆と同じ既製品の方がいいと思うこともありました。でも、こうして大人になってみると、本当にそんな風にしてもらえたことに感謝しています。アルツハイマーで妙ちきりんなので、イケナイと分かっても最近はジャケンにしていて反省…。

私も色々作る方なので、こうした作る人の気持ちや込める思い、楽しんでいる感じが理解でき、そうしたものをひっくるめて大事に思い手元に取っておきたいのだと思います。もちろん作り手の自己満足は少なからずありますが、「楽しい」「誰かのために」「喜ぶ顔が見たい」という思いが、こうした手作りには込もっているのです。
何しろ一点ものですからね!
貴重です!



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