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ある朝の大寝坊で見えたもの
うっかり大寝坊をしてしまいました。
6時前の夫の出勤時に「行ってらっしゃい」をした後、もうちょっと寝られるなと、いわゆる二度寝をしたのが失敗でした。
次に起きたのは、母のデイサービスのお迎えの声で。8時半頃です。「おはようございます!」という明るく元気な声で一瞬にして覚醒し、事情も理解しました。私は大きな声で玄関から出ようとする母とお迎えの人に向かって「ごめんなさ~い!行ってらっしゃ~い!」と言いました。
日ごろ、玄関に出て見送り、デイサービスの方にも挨拶をするので、いつもとちょっと違う様子に気が付いたのでしょう。閉まるドアの向こうで「どうかしました?」というお迎えの人に、母が「娘がね、ちょっと風邪気味で寝てるもんだから」と言っているのです。このことに私が驚くのは、母はアルツハイマーで、最近ことさら状況理解や物忘れが酷くて会話が成り立たなくなっていたからです。
なんと機転の利いたセリフでしょう。一人になって「失敗した~」と少々自己嫌悪になりつつも、母のこの物言いにしみじみ感心しました。
同時に、コーヒーも朝食も何もお腹に入れず行かせてしまって申し訳ない!と深く反省。ここが、やはりアルツハイマーなのであり、「ちょっと起きて、お腹が空いたわよ」と声を掛けてくれたら良かったのに、とも思うのですが。母はよくある「食べたのに食べてない」というのとは逆で、「食べてないことを忘れる」タイプのようで、これは日常的に多いのです。食事を出すと「あら、私食べてなかった?」とか、デイのお迎えもまだ来ておらず、朝食も食べていないのに「行って来ます」と玄関を出ようとしたり。「ちょ、ちょ、ちょっと朝ごはんまだだよ」と止めることも。
そもそもここまでの、穴埋めできないレベルの寝坊をしたこと自体が、思えば近年では珍しく、なんだか懐かしい感じのする自己嫌悪感。少々ボーっとする頭とパジャマのまま、顔を洗ったり、夫が淹れて行ってくれたコーヒーを飲んだり、モップ掛けをしたりするうち、そうだ・・ここ15年近く愛犬と暮らし、一緒に寝ていたから、朝モソモソ動き出せば私も自然と起きたりして大寝坊なんて無かったんだ・・と分かりました。
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動き出した故愛犬
一人暮らしのときには危ない寝坊はあったし、休日には「うゎっ!こんな時間」なんてことはちょこちょこありました。若かったから徹夜もできたけど、恐ろしく長時間寝ることもできた。
また、寝坊した際の職場への連絡の仕方について、実は夫の様子を見て勉強になったことがあります(滅多になかったですょ・・一応夫の名誉のため弁明を・・)。そこそこの役職付となれば「ワルイ!寝坊した」とは言わないものなんだな・・と。「朝一で取引先に寄ってるから、ちょっと遅くなる」というような連絡をするのです。なるほどなるほど。スマートだ! 大人な世界とはこういんものなんだな、といたく感心しました。私なら、ついついホントのことを言ってしまうタイプなので、慌てて「ゴメン!今起きた!すぐ行く!」と言ってしまいそうです。
そこで、母が落ち着いて「娘が風邪気味でね」と話すのが強く印象に残るのです。アルツハイマーで妙ちきりんなはずなのに、なんて気の利いたことを言うのだろうと。「娘ったらね、まだ寝てるんですよ」じゃなく。
そうはいっても、そのまま寝かせておくんじゃなく、「もう起きて、お腹が空いたわよ」と一声かけてくれたら飛び起きたのに、とも思ったり・・・。だって普通は起こすでしょ? おそらく決して私を寝かせておいてあげようという殊勝なものではなく、ただただスルーしたということで、そこがやはりアルツハイマーなのだと理解しますが。
そんなわけで、久しぶりの大寝坊をした朝、いい意味で衝撃的な母を見て、そこから色々思いを巡らせながら、一人充実の朝食をとる私でした。何にも食べずに出かけた母に小さく詫びながら。
ごめんね、お母さん・・・。
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