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戦争 こわい

遮るものの無い開けた場所
夏の強い陽射し

蝉の声
お盆
灯篭の灯
鎮魂
静寂

この時期に対して今の私が漠然と連想する言葉です。

亡き父も、存命の母も昭和一桁生まれですが、戦争の話は聞いていません。父は船乗りでしたが、招集がかかり赴く直前に終戦となり、母は東京から愛知県へ疎開し、一度も戦火を見ていないと聞いています。知る限りでは親族にも戦死したという人は居ないようです。

学校から帰れば母が居て、決まって「今日のご飯なに?」と聞き、家族で囲む食卓では無邪気にも今日学校で何があった、友達がああだった、テストがどうだった、部活がこうだった、などの話題ばかりで、正に平和そのものの中で育って来られ、戦争とは歴史で学ぶ過去の出来事であり、私にとって全くリアリティのない事象でした。

つまり私は喧嘩は知っているけれど戦争は知りません。
有難いことに、そうした時代に生まれ落ちるという幸運に恵まれていたのです。



避けて通ることの難しい自然災害とは違い、人為的な戦争による日常の消滅は避けられることだと思います。本当は。

武器兵器でいとも簡単に人が人の命を奪い、日常を無きものにする。なんと恐ろしいことでしょう。しかも、見知らぬ者同士で、好き嫌いの感情を持つほどの接触さえしていない無関係の者同士で。

街中で、すれ違いざまに見ず知らずの人とちょっとぶつかってしまったら、普通は「あ、ごめんなさい」と言いますよね? それなのに戦争では知らない相手の、同じ人間の命まで奪っておいて、全くもって「あ、ごめんなさい」どころじゃない。

人間のダークな部分が前面に露出するのも恐ろしい。戦争未経験の私には想像の域を越えられませんが、それでもあんな状況に立たされたなら…と考えると自分もどうなるか自信はありません。国のために、家族のために、自分たちのアイデンティティーのために、自由のために、正義のために、今目の前にあるものを破壊するのだ、と強固なバイアスが掛かるでしょう。

兵器の類も恐ろしい。
言ってはイケナイだろうか。
私は人や街、自然を破壊する道具を作る仕事と人を肯定することは出来ません。社会を知らないと言われるでしょう。世界の状況を見たら、何を寝ぼけたことを言っているのだと。隣人は信用できない。上等なナベやヤカンを持ってるだけじゃ丸腰もいいとこで「どうぞ侵略してください」と言っているようなものだと。

兵器類の実践や実験も恐ろしい。
人気のない原野、山林、海の真ん中で凄い爆発をするシーン。人命の安全は確保されているから大丈夫と。大丈夫なんかじゃない。そこには人以外の生命が存在しているでしょう。生態系があるでしょう。この星に居るのは人間だけじゃない。生命のない場所なんて、この星の上にはない。

原子力はもっと怖い。専門的なことを知らない私には得体が知れない。無知が怖がり過ぎていると言われるのでしょう。その通りで得体が知れない上にあまりにも大きな威力を持っていて怖いという表現だけでは言い尽くせない。原子力爆弾も原子力発電も、原子力の力を使うことにははっきり言って反対です。

原発は出たゴミを処分できないのにどうするのでしょう。家庭で片付けられないゴミが出続けるなんて考えられない。置きっぱなしで腐ってくれるならまだしも、腐りもせず何十年も変なモノを放出し続けるゴミなんて、主婦として考えられない。処分に窮して、「ええい! 地中に埋めちゃおう!」なんて、常識的にどうなの? 土に還る生ゴミじゃないのに。

「じゃあ、使用量が増加する電力をどうしろというんだ?『電気を沢山使うから私はAIは使いません』って言ったってね、自分は使わなくても世界には既に浸透してて、知らないうちに使ってるんだよ。」



「戦争はどうしたら無くなると思いますか?」

マイクを向けるインタビューに、思わず家事の手が止まり耳を澄ましました。答えを知りたい、と。

「早く、愛する家族の元に帰りなさい」
そう言ったのは、かのマザー・テレサでした。

本当に? それだけ?
なんと単純明快で易しい回答でしょう。
一人一人が、我が身の帰宅を待つ家族の元へ「ただいまー」と帰れば、物理的に戦争は成り立たないですしね。皆、帰っちゃうんですから。仕事を終えたら、普通は帰りますよね。
でも、戦争は国や属する機関がそれを許さない。全てを捧げることを強要する。逆らえば逮捕されちゃう。

でも、お家へ帰ろう。毎日。
家族とご飯を食べ、お風呂に入り、乾いた布団で眠って疲れを取り、また翌日元気に仕事に行こう。

Go home.
I can do it.
Everyone can do it.

戦争は私にとってリアリティのない事象です。このまま知らないままでいたい。無知の怖がりと言われようと、臆病なままでいたいと思っています。

どうか、一日でも早く、この世の戦争が止みますように。


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