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麻雀87:Mトーナメント観戦記#6

2ndG卓
寿人vs堀vs松が瀬vs東城

▫️エクボ見納め【東城りお】

今季限りでフェニックスを退団する、東城りおが2ndステージで敗退となった。退場シーンでの切ない表情が印象的だった。

初戦トップが寿人。2戦目は序盤に松が瀬が大量リードし、ポイント優位の寿人が露払いとなって積極的に曲回しに専念すると、さすがの東城にもつけ入る隙はなかった。

入団当初は、雀力よりもルックスや知名度重視での起用と叩かれたこともあったが、底抜けの明るさとファンサービスでチームに明るさをもたらしたことは貢献度大であろう。
また、トップどりに特化した強気の麻雀スタイルは結果こそムラがあるものの、ハマった時の連勝爆発力は相手チームからしても脅威だったことだろう。
来季のフェニックスはチームとしての総合力は補強されているに違いないだろうが、こうした爆発力に欠ける構成に見える。長いシーズンで4名皆が沈んでしまった時に、普段通りに明るく振る舞えるムードメーカーが東城だった。そうした選手がチームに一人は必要だと思うのは私だけではないだろう。
その美しい笑顔がまたMの舞台で拝める日が待ち遠しい。

2ndH卓
仲林vs下石戟vs西川淳vsHIRO柴田

▫️四暗刻【西川淳】

昨シーズンからの役満ロスに終止符を打ったのは西川淳だった。トンパツで2000-4000を親被った次局、早めに役あり聴牌を果たすも一手がわり役満が見える手牌。

「あの時点ではアガるつもりはなかった」

数巡後に望みどおりツモリ四暗刻テンパイしてからリーチ和了と、理想的な結果となった。
5万点越えのダントツトップにたって、トップは当確と思いきや、さすが相手も一流。HIRO柴田が6000オール、仲林は8000オールとほぼ並びまで迫られる。

「あのリードで勝てる相手ではない」

西川のインタビューから滲み出るのは、対戦者へのリスペクト。相手の強さを認識しているからこそ、リードがあっても守り一辺倒にならず、むしろリードを広げに行く選択が多い。
ヒヤリとする点差まで詰められても、トップを取り切れた強さの真相はそこにあると思えた。

▫️チームメイトのあおり気にせず【仲林圭】

2ndステージから登場したパイレーツの面々がここまで全員勝ち上がるを決め、最後の出番となった仲林。ここまで散々煽られ続けた中で、プレッシャーがないと言えばウソだろう。いや、仲林なら、(負けても美味しいか)くらいには思っているかもしれないか。
いずれにせよ、打牌にはブレている様子はなく平常心でいつも通り淡々と打っているようだった。

▫️麻雀職人、散る【HIRO柴田】

対照的に、勝ちへのこだわりが見えたのがHIRO柴田。リーチかと思われるところでヤミテン選択が多く見られたところにやや違和感があった。結果はアガリにつながっており、点棒は増えているものの、決定打にはなっていない。
絶妙なリーチ判断や相手の手牌を見透かしたかのようなビタ止めやアガリで対戦者の心を追い詰めていく。そんな不気味さを秘めたHIRO柴田がこの対局では見られず、ここで敗退となった。

HIRO柴田のような、麻雀の捉え方が常人とは異なるような職人気質の選手がMリーグに増えてくると、対局に深みが出るように思える。
雷電の麻雀スタイルに合うかも。

finalステージA卓
寿人vs勝又vs西川淳vs杉浦勘介

▫️A1決戦に勝利【杉浦勘介】

ベスト16が出揃い、セミfinalに進出する8名を決めるfinalステージ。その初戦は奇しくも連盟A1リーガーによる対局となった。

相手の手の内を知り尽くした4名での対局を制したのは、杉浦勘介と寿人の両名。初戦トップだった西川が2回戦目はラスに沈み、杉浦、寿人、西川の3名によるアガリ勝負の様相となったオーラス。杉浦と西川が上下の関係にある中、西川から仕掛けが入る。杉浦も良形のピンフテンパイで真っ向勝負で、勢いそのままに杉浦がアガりきった。

4者の中ではタイトル経験、実績という意味ではやや見劣りする杉浦にとって、この勝利は自らの麻雀やこれまでの努力を証明する自信になるのではないだろうか。
風貌が童顔であることや緊張感を漂わせながらインタビューに受け答えする様子からは、頼りない印象を受けがちだが、麻雀そのものは相手との間合いを読み切り攻守のバランスに優れた理想的な麻雀に見えた。この勝利を糧にさらに気合の入った次の対局が楽しみである。

finalステージB卓
仲林vs松本vs松ヶ瀬vs瑞原

▫️親倍放銃からの大逆転【松ヶ瀬隆弥】

松本、瑞原の勝ち上がりで終局と思われたオーラスに、松ヶ瀬がとんでもないドラマを起こした。

道中、松ヶ瀬はそれなりに手が入りリーチで勝負に行く場面が多かったが、その一つで瑞原に親倍24000を放銃。誰もがここで松ヶ瀬は消えたと思った。しかし、挫けずに失点を取り返し、2万点付近まで盛り返してオーラスを迎える。オーラスの逆転がクローズアップされるが、この道中の踏ん張りこそ「繊細なる超巨砲」の真骨頂だと思う。
さて、オーラスに話を戻す。
オーラス親番の仲林が連チャンで繋ぎ、松ヶ瀬の勝ち上がり条件が緩和され、仲林からの6400出アガリ、2000-40000ツモで勝ち上がり。
配牌からドラ2、白トイツ、そのほかも横に並んだ好配牌。ツモが進んでトイツ多めになったところで、少考の末、⑧に照準を合わせて七対子に決め打った。

思えば、初戦からツモる所作がいつも以上に気合が乗っていた松ヶ瀬。こういう劇的な勝ち上がりは次の対局にもいいイメージを持って望めることだろう。

▫️悪夢の3連続放銃【松本吉弘】

初戦トップになりながら松ヶ瀬の大逆転を演出する形になってしまった松本。

試合後のインタビューでは、瑞原に捲られ下位二人から狙われるポジションだったことから、自力でアガリにいった結果と話した松本。

1stステージでは自らが奇跡の逆転を成し遂げ、このfinalステージではその仕返しをされた格好。後味の悪い敗戦となったが、本シーズンでなくて良かったとポジティブに捉えよう。

finalC卓
小林vs岡田vs瀬戸熊vs和久津晶

▫️勝負どころの見極め【和久津晶】

この試合唯一の白組である和久津晶が、勝負リーチを決め切って、勝ち上がりを決めた。
初戦が小林の大トップだっただけに、3人で残りひと席を争う格好となった2戦目。
相手の出方を窺いながら自身の押し引きを判断する麻雀が持ち味の和久津。そうした雀風のため、ヤミテンに構えたり、鳴きを駆使したかわし手などのクレバーな選択が多い選手であるが、タイトル経験豊富なベテランらしく、勝負どころと見極めた場面では力強く踏み込むことが必要であることも熟知している。
この日は、岡田が国士模様の河となっている中、自身に高打点の勝負手が入り、怯まず勝負リーチ。その直後、岡田のツモ番で国士無双テンパイが入り、当然の全ツッパ。この岡田の押しを見て、正直ヒヤッとしたことだろう。数巡後、和久津がツモアガリ、勝負所を制した格好となった。

和久津の麻雀は一巡一巡に方針が変わるところが面白い。解説の白鳥翔いわく「ふらふら麻雀」と称していた。
カムバックMリーグの際には、本田とのふらふらコンビであること、瀬戸熊イズム・連盟イズムの継承者であること、など雷電との親和性が高いように思う。

finalD卓
日向vs本田vs優vs藤島健二郎

▫️雷電のエース【本田朋広】

危なげありつつ本田が勝ち上がりを決めた。

「2戦目が何をしていいかわからない」

本田本人は自身の麻雀を振り返って、危なっかしい戦いだと語った。
確かに、2戦目は複雑な条件が絡み合う条件戦であり、相手の出方に合わせた自身の振る舞い方に様々なバリエーションがあって迷いがち。

しかし、トップだった初戦の戦い方は対戦者を圧倒する見事な戦い方であった。トップの価値が高いこのルールにおいて、初戦は全員がトップを狙ってくる。これはMリーグのレギュラーシーズンと酷似した状況といえる。この状況において、見事にトップをもぎ取ることができるということは、来シーズンへの期待が否が応でも高まってくるというものだ。

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