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麻雀82:Mトーナメント2024観戦記#3

G卓 園田vs真田槐vs白銀紗希vs杉浦勘介

協会の新星

真田槐。<えんじゅ>と読むそうです。
松本吉弘と同世代の協会最年少A1リーガーとの触れ込みで、Mトーナメント初参戦。

トンパツの親番でいきなりの6000オール。鮮烈なデビューとなった真田。このアガリで真田ペースで対局が展開していく。
点棒を持った有利な状況でも、ベタオリすることが少ない。自ら局回しをしてくるため、追いかける立場の選手にとっては辛く、ともに勝ち上がりポジションにいる選手にとっては心強いと思える選手。

Mリーグでも活躍する堀慎吾や松本吉弘など魅力的な選手がひしめく協会。そうした実力者たちの間で日々鎬(しのぎ)を削り、力のある若い選手が台頭してくる協会。いまもっとも勢いのある団体と言えるかもしれない。

連盟は明暗分かれる

この試合、連盟からは杉浦と白銀が参戦。
A1リーガーの杉浦は、真田の影に隠れながら、着実に要所でのアガリを積み重ねての勝ち上がり。
まだまだ実力・手のうちを温存し、真田の勢いを利用した感のある試合運びはトーナメント方式の経験が豊富なベテランならではの味わいがあふれていた。

一方の白銀は、全体的に手牌が苦しい中、前に出たところを放銃にまわる展開に。道中では、役満・大三元がみえる手が入るも不発に終わり、昨年に続き2回目のMトーナメントはほろ苦い初戦敗退となった。

H卓 渋川vs魚谷vs西川淳vs水巻渉

西川の存在感


連盟のA1リーガーである西川がMトーナメントに初参戦し、トップなしでの勝ち上がりを決めた。

初戦からエンジン全開で、手牌に恵まれトップ目に立つも渋川に捲られ2着。続く2戦目では、対照的に手牌に恵まれず、我慢の展開。水巻とのオーラスアガリ勝負で、序盤に軽い手が入ってくれて、1人テンパイでなんとか競り勝った。

2戦通じて西川のバランスの良さが出た対局となった。すなわち、攻め手が来た時は緩めず攻め切る一方、攻めに値しない手ではしっかりと我慢が効く。麻雀の理想形を体現したような戦いであった。
オーラスの配牌から見ても、勢いがありそうなだけに、Mトーナメントの台風の目となりそうである。

最後の最後で、、、

西川とは対照的に、運に見放されてしまった、水巻。もともと業界内での評価が高い打ち手で、その片鱗は十分見せてくれたが、いかんせん、あと一歩のツキに見放されてしまった。

水巻の雀力を示す場面が、勝ち上がりの権利をもって迎えたオーラス。ライバル西川とも僅差で、テンパイノーテンで入れ替わる条件。そんな厳しい局面において、テンパイすら厳しい配牌とツモ。そこに、ヤミテンで構える西川のアタリ牌である五萬をツモってしまう。そこで水巻が出した選択は五萬切らず。

試合後のインタビューで、「西川がノーテンだと思ってた」と答えた水巻。ノーテン同士なら自身の勝ち。テンパイできない状況も想定し、与えられた手で勝ち上がりの可能性を最大限高める選択を捻り出しているように見えた。水巻の底堅い強さを見せた場面に思えた。

泣き虫マーメイド

Mリーグの幾多の場面で、魚谷は必ず瞳を潤ませ声を震わせてスピーチしてきた。そんな魚谷についた異名が、「泣き虫マーメイド」。

しかし、この日もインタビューでは、いつも以上に毅然として、しっかりと前を見据えて語る姿が印象的であった。

フェニックスとの契約を満了し、Mリーガー魚谷としては、健闘虚しく最後の対局となった。
だが、魚谷はすでに次のステージに向けて歩きはじめているように思えた。きっと、彼女の中では、

これがMリーガー魚谷の最後の対局ではない。

第1期が終わったに過ぎない。またこの舞台に戻ってきてやる。

負けん気の強い彼女の表情から、そんな心の声が聞こえた気がした。
6年間、いくつもの感動的なプレーを見せてくれてありがとうございました。

l卓 内川vs日向vs中田vs三浦智博

二冠王沈む

三浦智博。王位と十段位(ともにG1タイトル)ぼ二冠を獲得してMトーナメントに初参戦。
所作からはさほど緊張がうかがえず、自然体で戦いに臨んでいるように見えた。

が、この日はどうしようもないくらいにツキもなく、展開にも見放された。
トーナメントは4分の2が勝ち上がるので、確率50%。しかし、強者同士の戦いにおいては、当然ながら、自らに有利なように(敵が嫌がる選択も含む)それぞれの戦略が交錯するため、一旦不利な立場に追いやられると、そこから浮上するのは雀力だけでなく運の要素が不可欠。

「勝って偶然。負けて必然。」

“5万半荘の感覚派”の通り名を持つ三浦が、この使い古された麻雀の金言を、今改めて噛み締めているのではないか。

憧れるのはやめましょう

ビースト・中田は1回戦で敗退となった。Mリーグの初シーズンはトップ1回と、チームに貢献できたとは言えない結果だっただけに、このトーナメントでは結果を残して来季への弾みにしたかったところだろう。

随所で良いアガリがあった。とくに、このアガリ。

白とニ萬のシャンポンにとらず、ペン三萬で追っかけリーチ。一萬がアンパイであることから、シャンポンがマジョリティに思えるが、この待ちはジュンカラ。見事、山にある待ちを選択した判断に実況解説も絶賛の一打であった。

また、本人はずいぶん悔やんでいたが、勝ち上がりポジションからライバルの日向へ放銃した、この場面。

日向がドラポンした時点で、ベタオリとするか、攻めるかの場面で、テンパっていた中田は攻めを選択。ライバルの親を蹴る絶好のチャンスと見たのだろう。
この判断は妥当。勝ち上がり濃厚な内川が前に出ることはなく、三浦もこれ以上ポイントを失うわけにはいかない状況。つまり、中田もオリに回ると、日向の一人旅が確定するからだ。
結果が残酷なだけで、判断自体は間違っていない。

中田はもっと自分を信じて自由に打つべきだ。
麻雀が好きで、Mリーグが好きで、憧れを持ってプロへの道を進み、縁あってMリーガーになった。
そんな彼女の歩みからすると、対戦相手はキラキラして見えるのだろう。しかし、自らもMリーガーなのだ。キャリアから見て、雀力が一段劣るのはチームもファンもわかっている。雀力と結果が伴わないのが麻雀であることも理解している。
だからこそ、結果に一喜一憂せず、中田自身ができる最良の選択をぶつけ合う場にしてほしい。余計な感情は無用だ。憧れるのはやめましょう。そこが中田花奈のスタートラインだと思う。

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