ホワイトアルバム2 追加エピソード「不俱戴天の君へ」感想
ホワイトアルバム2特典ディスクに入っている追加エピソードの、"不俱戴天の君へ"を3年越しにようやくプレイ出来ました。面白かった。何故これを3年前にプレイしなかったのかなぁ、春希君…(雪菜並感)
物語としては本編のかずさルート、ノーマルエンド(浮気エンド)の続きからスタートする。浮気エンドのラストでは後日譚として春希が精神的に参った事、それを雪菜が支えた事を抱き合うCGと共に語られるが、その内容自体は詳細に語られていなかった。"不俱戴天の君へ"では、雪菜がどうやって春希を支えたのか、何があったのかを明かされる。
まず初めに驚いた点として、雪菜視点で物語の大部分が進行していく事。やはり人間単純なもので、雪菜の視点になって、純度100%の雪菜の心情描写を目にすると、どれだけかずさ派の俺としても雪菜に愛着がわいてしまう。春希視点で見る雪菜というのはどうしても春希のバイアスがかかっている為、誰にでも優しくてちょっと強情で春希が大好きな女の子,というあっさ~い部分で見てしまいがち。だが雪菜視点になった事でそこにいたのは、必死になって愛する人を介護する一人の女性の姿だった。
これが新鮮で良かった(あっさ~い感想)。そして俺が一番雪菜視点で嬉しかったのは…
かずさに対して明確に嫉妬する、雪菜の抱えている暗い部分を見れた所。
これまで俺が春希視点で見てきた範囲だと、雪菜はかずさに対して、嫉妬心よりも春希を取った事に対する"申し訳なさ"が先行していたように見えた。ここまで、かずさと春希にむき出しの嫉妬を抱える雪菜をみることができたのは、雪菜視点によるもので、普段明るく振舞っている雪菜が黒い部分を見せてくれたことで、俺の中で雪菜の魅力が1段階上がった。
この辺から雪菜は徐々に徐々に、春希を治したいという純真な思いから、しなければならない義務感へと変化していく。春希の介護を苦痛に感じるようになって、壊れていく雪菜を見るのが苦しかった。同様にかずさ視点も苦しい。曜子さんが白血病で、頼れる人間が一人もいない中必死にピアノを弾き続けるかずさ。3人が3人それぞれ苦しんでいる中でこのストーリー最大の盛り上がり所が始まる。
それが、かずさと雪菜の電話での大ゲンカ。ここ、マジで苦しいけど良かった(このゲーム苦しんでばっかりだな)。かずさも雪菜も互いに後ろめたい部分が合って、電話でも最初は当たり障りのない会話しかしないわけですよ。でも雪菜も色々と限界で、最後の最後に春希について弱音を吐いてしまう。そこからは堰を切ったように、5年分の思いをぶちまけるような大喧嘩。お互いが春希を愛しているからこそ起こる大喧嘩。普通の作品なら最悪なシーンなんだけど、この二人は、互いを思いすぎてるからこそ、最高のシーンに昇華している。
かずさも雪菜も春希も、大前提にそれぞれの事が好きなんですよ。でもそれが恋愛感情によってグチャグチャになってしまうわけで、それでも好きだから苦しんでる。かずさに嫉妬した上で立ち上がる雪菜と、雪菜に嫉妬した上で立ち上がるかずさ。これが本当の意味で尊い関係だって言えるんだよな。
雪菜としてはどれだけ時間がかかるかも分からない春希の介護に不安を感じるのは当然なわけで(プレイヤーの俺たちは1年後には治ってるの知ってるけど)、そんな雪菜が、一生をかけて今の春希と付き合っても良い、一生をかけて治しても良いと自分の人生を捧げる覚悟になったシーン、泣きそうになった。
一方のかずさも、オーケストラで冬馬曜子から頼まれたclôtureを大成功に導く。プレイ中はクラシックで存在している曲かと思ってたから、まさかのclosingのオーケストラ版が流れるとは…!closingはかずさTRUEで流れるエンディング曲で、全てを捨てた春希と、初めから春希とピアノ以外持っていなかったかずさの為のエンディング曲。そのエンディング曲が、曲名のように閉じられていた筈のかずさの世界が、一人じゃなし得ないオーケストラを通じて、開かれた世界へと、本当の意味で羽ばたいていく。あれだけ口下手で、誰にも心を開かなかったかずさが、本当の意味で世界を受け入れ、世界に受け入れられる事を選んだシーンだけで、このエピソードをやっていて良かったと思えた。
生涯の大親友として、許し合って前に進んだ雪菜TRUEルートとは逆に、不倶戴天の君に向けた一言は、その言葉とは裏腹に愛に溢れていて、かつて閉じられていた世界に居てくれた友人達に向けた、"前を向いて生きていく"というメッセージだったのではないでしょうか。
いや~~~~、ホワイトアルバム2面白れぇ~~~~~~~~~~~~~~