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追放王女と傭兵団長 ~王女は傭兵団長に奴隷として買われる~ 第5話~第7話 +1章まとめ (合計9000文字)

前回 1話~4話は以下のリンク先にあります。
追放王女と傭兵団長 ~王女は傭兵団長に奴隷として買われる~ 第1話~第4話|天音朝陽(てんのん ちょうよう) (note.com)

♥は性的描写・暴力描写ありの回です


第5話 べアトを買う会議が開かれる

ユキが細い指先を伸ばし、棚に置いてあるベルを五回続けて鳴らす。

『役職者はホールに集合、緊急会議』の合図だ。
 ズボンをはく衣擦れ、ドタドタと廊下を走る音、扉の開け閉めの音が響き、十名ばかりの黒鷲傭兵団の幹部たちが集まってきた。

 娼婦と最中の者がほとんどだったのだろう、ほぼ全員上半身裸だ。キスマークをつけた者、オイルまみれの者、道具を手に持ったままの者までいる。
 先ほどからいる団員もそのまま居座っているので、ホールには二十数名が集まっている。

 やや遅れて、王女を風呂場に連れて行った戦闘副官のディルトがやってくると大声で言う。
「団長、ヴィオラ姐さんは王女の世話で手を離せないっす。で『団長に賛成、異議なし』に一票だそうっす」

 ディルトの発言が終わると、二階から降りて来た下っ端の団員が挙手をする。
「参謀副官のカシス姐さんは『団長に反対』に一票とのこと『男娼といいところなので会議には参加しない』そうです!」
 その報告に団員の一人が指笛をならし、さらに数名が発狂したような叫び声をあげた。
 「わかった、伝言ご苦労!」
 ユキは元気よく答えた。

「参謀長と娼館長が不在ですが会議を始める! 議長は僕ユキが務める。ルーヴェント団長が本物のエフタル王女『麗騎ベアトリーチェ』姫を拾ってきた。問題は団としてコレをどう取り扱うか? だ」
 「恰好いいぞ! ユキ!」
 「女装してくれ! ユキ!」
 「抱かせてくれ! ユキ!」
 凛々しいユキに対して、団員達の拍手と喝采、口笛、床を踏み鳴らす音がホールにやかましく響き渡っている。

 困惑した表情のユキが金槌でカウンターを激しく打つと、再び皆が静まり返る。

 やれやれ、だ。

「ベアトは俺がいただく」
 俺は、深く重厚に声を響かせる。ホールはさらに落雷の後のように静まり返るが、団員達はすぐにざわつき始める。

 「まず王女を獲得してきた団長とカシス姐さんに、それぞれ金貨五枚の臨時賞与を出したい、これについて」
「異議なし」
「異議なし」
 異議なしの声がホールに響く。
 とりあえず俺とカシスの野郎には今日の働きとして、臨時賞与が出るらしい。

 ユキは会議を進行していく。
「僕の見立てで、まず『奴隷商に売る』として白金貨十枚の利益。エフタル王家に睨まれない限り、リスクは比較的少ない」
「王女様を奴隷に売るとかオメー鬼畜だろ」
「じゃあ、お前が買えよ」
 ユキの説明に合わせて、幹部団員が意見を述べている。

「次に『エフタル王国に人質として身代金を請求した場合』わが傭兵団は白金貨三十枚を吹っ掛ける、奴隷商に売る場合の三倍以上の値だ。しかし、交渉には莫大な危険が伴う、下手したら団そのものが、エフタル王国から潰されかねない」
「問題ねーだろ、交渉はカシス姐さんにまかしときゃあ大丈夫よ」
「しかし王国相手の喧嘩は面倒だぜ」

 ふむ……、という感じでユキはいったんうなづく。
「この場合成功報酬として、僕はカシス姐さんに半分の額を渡すつもりだ。それだけ困難で危険な仕事だ。そうなると団の利益は奴隷商に売った場合よりやや多いくらいにとどまる」
「カシス姐を危険にさらすのは反対だな」
「オレも反対だ」
 反対の声が相次ぐ。

「身代金より、十年契約でエフタル軍で雇用してもらないのか?」
「それもいいが、ガシアス帝国との戦いになっちゃ勝ち目が薄いぞ」
「人質じゃなくて、保護したことにすれば良いだろ?」
「エフタル王都で娼館の建設許可をとろう」
「鉱石の販売権を独占させてもらうとか」
 妥当な意見が入り乱れるが、これといった意見はない。面倒だ、そろそろ終わらせたい。
 ユキを見るとふたたびカウンターを金槌で打とうとしている。その前に、俺はテーブルを拳で叩き割り、豪快な音を響かせた。
 団員の注目が集まる。

 立ち上がると議長を務めるユキのとなりまで歩き、彼の胸元に刺さる羽根ペンを奪う。
『白金貨二十枚』
 白い紙にそう書き込み高くかかげた。

「白金貨二十枚かあ、団長いいの? そんなに……」
 ユキが申し訳なさそうに丸眼鏡の縁をさわる。
「かまわねえ、あの女は俺が買う」

 ホールを唖然とした空気が包んでいた。俺の思い切った金額に、団員のだれもが顔を見合わせている。
「皆さん、よろしいか? 団長が白金貨二十枚で買い取りたいと。現在のところ反対意見は『カシス姐さんの一票』のみだけど」

「賛成」
「異議なし」
「賛成」
「団長すげえ」
「異議なし」
「おおいに異議なし」

 一気に絶叫と口笛と拍手が巻き起こり、ふたたび飛び跳ねる者、下品な声をあげる者、走り回る者が出てくる。
 団員の意見は賛同のようだ。

 困惑顔のユキが、金槌を振り上げカウンターを激しく打つ。
 皆が静まり返る。

「決定だ! 保護されたエフタル王女ベアトリーチェ姫は黒鷲傭兵団の所有物からルーヴェント団長のっ」
「俺専属の奴隷だ、誰も手を出すんじゃねえぞ。アイツの団の中での立場は最下層の奴隷だ!」
 ユキの声をさえぎり、地に響く声を響かせ皆の顔を見た。

 ユキが体を俺に寄せ、小さい声で言う。
「なあ団長、王女を私費で奴隷として買うとか聞いたことないよ」
「ユキ、白金貨十八枚にまけろや」
 頭を強く押さえつけ、さらに小さい声で脅すように言ってみた。

「駄目だよ、団長の信用問題にかかわるから。あと、またテーブルを壊したよね」
 ユキの尻を蹴り飛ばした。

「では、緊急会議は終わりにする。お楽しみのところの方も集合いただきありがとう! 」
 立ち上がったユキが蹴られた尻を押さえつつ、金槌でカウンターを何度か打ち鳴らし会議の終了を告げる。
 会議中の騒ぎが嘘みたいに静まり、幹部団員たちは一目散に娼婦が待つ部屋に戻っていく。

 □

 その時、下っ端団員の一人が廊下を走って来る。
「団長! あの女が……王女が風呂場で暴れて大変だ! 手が付けられねえ」

「えっ、お風呂場で?」
 ユキがいち早く反応する。
「素っ裸でか!?」
 ディルトも叫ぶと、テーブルを蹴飛ばし立ち上がる。

「ヴィオラ姐さんは無事なのか?」
「風呂? 王女? ヴィオラさん?」
 ホールに残っていた団員たちが再び興奮し騒ぎ始める。
 ユキが、早くどうにかしてという目で俺を見る。

「ユキ、ディルトちょと手を貸してくれ、風呂場に行こう」
「わかったよ」
「了解っす」
 ゆっくりと立ち上がり、二人と風呂場にむかう。さらには頼まれてもいない団員達までもがついてくる。

第6話 ベアトを風呂場でわからせる   ♥


*暴力描写、性的描写があります。あからさまなものではありませんが、苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

「団長! あの女が……王女がっ、風呂場で暴れて大変だ! 手が付けられねえ」

「ふっ、風呂場だとぉ!」
「素っ裸でか!?」
「風呂場で乱闘だ!」
 ホールに残っていた団員たちが再び興奮し騒ぎ始める。

「ディルト、ユキ、手を貸してくれ、風呂場に行こう」
「了解っす」
「わかったよ」
 俺(=ルーヴェント)はゆっくりと立ち上がり、二人と風呂場にむかう。さらには頼まれてもいない団員達まで一団となりついてくる。

 □

「あわあわっ!」
 真っ先に風呂場に突入した金庫番ユキが変な声をあげた。
 他の団員が、王女の裸をみたいという下心のみで駆けつけたのに対し、ユキだけが善意の行動であった。にもかかわらず、風呂場に先頭で乗り込んだ彼の人間性は実に素晴らしい。

 床にはずぶ濡れになった高級娼婦ヴィオラと、助けに入ったであろう二人の団員がうずくまっている。

(ヴィオラ一人にまかせたのがいけなかった、ベアトの野郎は徒手でもそれなりの強さがあるんだ)

 俺は自分の甘さを反省する。
「おいっ、誰かポーション(回復薬)を取って来い、すぐにだ」
「はっ!」
 早くここへ戻ってきたいのだろう、若い団員が全速力で薬を取りに行く。

「うおっ、美乳だ! ……って場合じゃないっすねぇ」
 続いて入った副官ディルトも叫んだあと、様子をうかがうように重心低く身構えた。

 風呂場では、体を洗われていたであろうベアトリーチェが、全裸で拳を構え立っていた。

 藍色の眼が美しく光り、亜麻色の長い髪は後ろに束ねられていた。足先まで白く美しい肢体であったが、胴のくびれの下には黒い茂みがまだ濡れていた。
 毒が完全に抜けてきたのだろうか、足指は風呂場の石の床をしっかりと掴んでおりふらついてはいない。

「傭兵団の者どもかっ」
 館中に響くであろう、強く通る美しいベアトリーチェの声だった。

 中腰でヴィオラを抱きかかえた俺と目が合う。今はベアトリーチェが見下ろす位置になっている。

(やはり、いい目をしているな)

「貴様が団長であろう。いま一度名乗ろう、エフタル王国王女ベアトリーチェ・ファンド・エフタルだ。私を捕え辱めた非礼は、実に許しがたい。
私は明日ここを発《た》つ、エフタル王都にもどり盗賊団をせん滅する。剣と着替えと、清潔な寝床を用意せよ! 従者は十名ほど準備しろ! それで非礼は許してやろうぞ」

「……マジかよ」
 団員の誰かが、絞り出すような声で小さくつぶやいた。
 誰もが気圧され、息を呑んでいる。

「あんた未だに状況を理解していねえな。ユキ、俺の後ろに下がってろ。団長、コイツはひとまず仕留めるしかないっす」
 怯む団員を尻目にディルトが、立ちすくむユキの腕を強引にひき、俺のほうへ投げてよこす。
 
俺は娼婦ヴィオラを右手で抱きかかえながら、左手でユキを受け止める。
「ディルト、厳しめに痛めつけてもかまわんぞ。滑るかもしれん、足元には注意しろ」
 ディルトに声をかけると、ヴィオラに団員がとってきた回復薬を飲ませる。風呂場にうずくまっていた団員も、他の者に介抱されているようだ。

 狭い五メートル四方の石壁のバスルーム。俺の片腕といえるディルトと、全裸の『麗騎ベアトリーチェ』が向かい合っている。

「はあっ!」
 ベアトリーチェが気迫のこもった声と共に、ディルトの鳩尾に拳を打ち込んでいた。当然ながらディルトは普段着のシャツであり、防具など身につけていない。

(コイツ、良い打ち込みを見せる……しかし)

 並みの男なら悶絶してしまうだろう、それほどに良い打ち込みだ。
 しかし、拳を受けたであろうディルトは微塵も動かない。

「あんた……いや、王女さまか、いい打ち込みだよ。でも正確に急所に打ち込まなきゃ、あと三センチ下。筋力も足りないが……仕方ないか。すまねえ!」
 ゴリッとも、ズンッとも聞こえる鈍い音がして、ベアトリーチェが両目を縦に大きく見開く。
「ああぁぅ……がっ、があぁ」

 ディルトが彼女の下腹の急所を突いていた。
 ベアトリーチェは顔を赤くする。表情を大きくゆがめると、何度も口を閉じたり開いたりした。倒れることも出来ずに立ったまま悶絶の声をあげる。
 やがて、静まり返った風呂場に、彼女の両脚の間から水の流れる音がきこえてくる。

(素っ裸でこれとは、在り得ない屈辱だろうな……)
 皆が口を開けて状況を見守るなかで、俺はひとりニヤニヤと笑う。

「き、貴様らぁ、許さんぞ……あああぁ」
 ベアトリーチェが屈辱をこらえて必死に声を絞り出す。両脚の内側を流れる暖かいものを感じているのだろう。
 彼女は体の芯から湧き上がる、憎悪と恥辱の中にいる。

 普段の団員なら大はしゃぎする状況だが、皆がベアトリーチェの放つオーラに押し包まれて身動きできずにいる。

「なあ王女様、そろそろ止めてもらえねえか? 分かってると思うが、ここは便所じゃねえんだ。まあ、いいもん見せてもらった。これで毒も完全に抜けていくだろう、良かったじゃないか」
俺はその場の団員全員に聞こえるよう声で、ベアトリーチェを見下すように言い放った。

ベアトリーチェは、ガクガクと膝を震えさせた。
 
「ディルト!」
 叫んだ。
 ディルトがホールにいた時と同じように素早く背後に回り、今度はより優しく両脇に腕を回し裸の王女をささえ取り押さえる。
 すぐにユキが、大きめのバスタオルを持ってきて王女の体の前面にかけ、王女の恥ずかしい部分を隠すと体を拭いた。

「俺の部屋に、連れて行け」
そう言って、その場を後にした。

第7話 ベアトを寝室でわからせる ♥


*暴力的行為、性的表現高めの回になります。苦手な方は閲覧をご遠慮ください。

  目の前で、ベアトリーチェが紺色の娼婦のドレスを着せられ、両足をベッドに縛られている。

 ディルトやユキといった他の団員は、ベアトを風呂場から運び込み縛りあげると、それぞれの部屋へ帰ってもらった。
 いま俺の個室にいるのは煙管を咥《くわ》えた高級娼婦ヴィオラ、そして縛られたベアトリーチェになった。

 ベアトリーチェの両手首は手錠で背後に固定してあり、縄で両足を広げた状態のままにした。その足を縛った縄もベッドの両隅につないである。
そのため、無理矢理に着せた娼婦用の青いドレスだが、白い太ももが露わになりギリギリまでスカートがめくれあがってしまっている。

「カシスの野郎に使ったプレイ用の手錠が、こんなところで役に立つとは思ってもいなかったよ」
「ふうん、カシスもすました顔して、コッチもなかなかやるのね……」

 高級娼婦で娼館長のヴィオラは、縛られ身動きが取れないベアトリーチェを蔑むように眺める。そのヴィオラの衣装は紫と黒を基調とした露出の多いドレスで、手にした煙管に火を入れふかしている。
 やがて煙管の煙が甘い匂いと共に、部屋を曇らせてゆく。

「んっ、ぐもももっ!」

 ベアトリーチェは何かとわめきたてるので、元々履いていた水色の下着を口に押し込み、静かにさせた。
 下着とはいえ王族の身に着けるものであり、シルクで作られたものだった。
『エフタルの麗騎ベアトリーチェ』が足をひろげ、自ら履いていたもので口封じされた姿は、被虐的であった。

「で、ルーヴェント。この娘どうするのよ?」 
「どうするって、それくらい分かってるんだろが」

 ヴィオラは腰に手を当て、ベアトリーチェを睨みつける。
「おまえ、奇麗に洗ってあげてたのに、殴りかかってくるなんてどういうつもりなのよ」
 そう言い、煙管から焼けた赤いものをベアトリーチェの白い内ももに落す。
「ぎ……ぁっ!……ぅぅぅむ」
 口に布を押し込まれているので大きな声をあげることができない。

「何て言ってるの? 謝ったら許してあげるけど」
「……ぅうう、がぁっ」
 謝るにも喋ることが出来ないベアトリーチェに、ヴィオラは続けて赤いものを落とす。甘い匂いが、ベアトリーチェの内ももに立ち込める。

「おいおい、コイツは俺が大金出して買ったんだ、傷跡はつけないでくれるか?」
「大丈夫よルーヴェント。コレね、跡は残らないの、蝋燭のロウみたいなもの。熱さと痛みは桁違いだからプレイには使えなくてね、あはははっ」
 狐のような顔をしてヴィオラは、苦しみに身をよじるベアトリーチェの反応を楽しんだ。

 俺は、涙目になりつつも、それでも気位の高さを見せる彼女に嗜虐心《しぎゃくしん》(=苦痛を与えることに喜びを感じる心)を抱く。

 見ず知らずの男達にひとり捕らわれ、このように縛り上げられても決して屈しない、そんなベアトリーチェの気位の高さに引き込まれそうになった。

 そして、その『中途半端な彼女の強さ』を、自分の手で叩き潰せると思うと体の底から昂《たかぶ》るものがある。

 無理矢理に顔の筋肉を動かし、意地が悪そうな表情を作って語りかける。
「なあベアト。お前は、白金貨二十枚で俺に買われた奴隷だ。これから、お前は俺の所有物だ」

 ベアトリーチェは、俺を睨み返すと首を左右に振る。現在のところ彼女に動かせるところは首から上しかない。
 意味が分からないという感じで首を振り、俺をにらみつけている。

「あと、俺の口からベアトリーチェ、お前にハッキリ言っておくことがある」

 そう言い、左手で亜麻色の髪を掴んだ。血と泥で汚れていた髪は、奇麗になり良い匂いを放っている。

「お前は、うちの団員と、親切で接してくれたヴィオラに暴行をはたらいた。ヴィオラは動けないでいるお前の体を奇麗に洗い、替えの服まで用意してくれたというのにだ。俺は、それを許すわけにはいかない」
 そう言い、平手でベアトリーチェの頬を打った。

 その痛みに、ベアトリーチェの目が大きく見開かれる。
 「王女であろうが関係ない。ヴィオラと団員に謝罪しろ! それが道理だ」
 続けて何度も、彼女の白い頬を平手で打ち続けた。

 気づくとヴィオラが俺の腕に抱きついて来て、制裁を止めようとしていた。
「や、やめてあげなルーヴェント。私は《《さっきの》》で気が済んでるんだから、もういいよ、ね? もうやめてあげて!」
「ふん」
 彼女を腕から振り払い、突き飛ばした。自分も散々に痛めつけておいて何を言っているのだろうか。

 ヴィオラも、結局のところは部下や抱えた娼婦達には甘いところがある。

「おいベアト、ヴィオラがこう言っているから、この件は許してやる」
 打たれた頬を赤くし、ベッドに縛られたベアトリーチェに告げる。左手は髪を掴んだままだ。

 俺が顔を思いきり近づけると、ベアトリーチェは首をひねり横を向く。涙を浮かべてはいるが、まだ一筋として流してはいない。
 その彼女に、子宮に響くような低く重い声で教えてやる。

「ゆっくりとでいい、今の自分の立場を理解しろ。お前は俺の所有物、つまり『奴隷』だ。……今からお前を抱く」

 腹の中に熱が渦巻く。その熱が、尖った牙をむいた獣のように暴れるのを感じる。

「ね、あたしはどうしてればいいのよ」
 ヴィオラが、腕を組み首をかしげて聞いてくる。

「まずコイツをやって、次があんただ。とりあえず、そこらで見物しててくれ」
「ふうっ、まあいいけど。つまらないもの見せないでね」
 ヴィオラは近くにあった木の椅子に腰をおろす。ふたたび、煙管の煙が甘い匂いを立て、部屋を曇らせてゆく。

 ベアトリーチェを見つめると口元だけで、わざとらしく笑いかけた。
 
 俺は、僅かな安堵感を得る。
 ベアトリーチェの体に『ほんの少しの恐怖』が走るのを見たからだ。
 
 気づいた時には、彼女の体を更に押しひらき、幾度も貫いていた。


第一章 王女は傭兵団長に奴隷として買われる 終了

■続編の投稿は12月半ばくらいと思います。
スキ・フォローなどいただければ嬉しく思います。

◆第一章 ストーリーまとめ・キャラ解説・第二章の展開◆


こんにちは、作者の天音朝陽です。
『エロシーンだけ読んで、他を飛ばし読みした人』『キャラクターを確認したい人』『次章は、どのような展開になるかネタバレなしで大まかに知りたい人』達のために本投稿を作成しました。
なお各章の終わりごとにこのようなまとめを置きます

 

1 ストーリーまとめ


 エフタル国の王女【ベアトリーチェ】は敵国ガシアス帝国に輿入れする。しかし、これは彼女の人気や才能を恐れた兄王による追放にすぎなかった。
 国境の森近くで、輿入れ行列は盗賊団の襲撃にあい壊滅。
 王女は死んだかと思われたが、いろいろあってその場にいた傭兵団長【ルーヴェント】と女副官【カシス】に救助され傭兵団の館へ連れていかれる。
 連れていかれた王女は、法的に傭兵団の所有物となるが傭兵団長ルーヴェントは『自身の奴隷』として団より購入。
 王女は自分が盗賊団にさらわれたと勘違いし、風呂場で暴れたりするが力づくで屈辱的に取り押さえられ、さらに寝室で自分の置かれた立場を、これまた力づくで分からせられる。

 

2 主要キャラのまとめ


 ・傭兵団長ルーヴェント 
 男性・二十代前半 身長185cm A型
 黒鷲傭兵団の団長。出身などは不明。屈強な体格と黒髪、鋭い目つきに通った鼻筋は精悍そのもの。彼が放つ獣の気配は、戦いに身を置く者のそれである。
 性欲を含めた支配欲は並々ならぬものがあり、更に冷静沈着で今のところ隙はない。
 ベアトリーチェを奴隷として購入した意図は現在のところ性処理用と思われるが、それ以上の真意は不明。

 ・エフタル国王女ベアトリーチェ 
 女性・十八歳 身長160cm B型
 亜麻色の長髪、紺色の瞳。グラマーというほどではないが、美しい体形。
 エフタル国の元・王女。五倍の兵力差をくつがえす戦いぶりは『エフタルの麗騎』と呼ばれた王国騎士団の総帥であった。ルーヴェントを唸らせるほどの、並々ならぬ気品と気迫を備えている。
 しかし、世間の現実を知らないお姫様の一面もあり、それだから簡単に兄王に嵌められて輿入れさせられたり、盗賊団襲撃への対応を誤ったりしたといえる。

 ・副官カシス
 女性・二十代前半 身長165cm AB型
 スレンダー体形。黒髪ショートヘアに白い肌。その整った顔つきは聡明さを物語っている。
 傭兵団を戦略面で支えるが、戦闘能力も高い(ベアトリーチェより強い)。
 傭兵団長ルーヴェントが好きで仕方がない。
 男娼を抱いたりしているが、それは団長への当てつけであるらしい。

 ・副官ディルト
 男性・二十歳 身長185cm O型
 逞しい体つき。ルーヴェントの戦闘面の片腕であり、格闘能力はルーヴェントに次ぐものがある。ルーヴェントの下位互換のようなキャラだが、彼より人当たりが良く、精神的に成熟した大人の男性である。

 ・金庫番ユキ
 男性・十八歳 身長162cm AB型
 傭兵団を実務・経営・規律と様々な面で支える丸眼鏡をかけた少女のような外見をもつ美少年。団のためなら団長相手にも言うべきことをいう。面倒見がよく、傭兵団がまとまっているのは彼の功績が大きい。
 *団員内部にも彼に想いをよせる男は多い。

 

3 今後、第二章の展開


 第二章では、当然のごとくベアトリーチェは脱走しますが、結局のところ傭兵団の館に戻ることになります。
 ベアトリーチェにとっては、つらい日々の始まりに見えますが、団員たちは彼女の魅力に取り込まれてゆき優しく接してくれます。
 一話を使ったエロ展開の回はありませんが、二回ほどそういうシーンはあります。

 さてさて、団長ルーヴェントとベアトリーチェの関係はどうなっていくのか? 気になるところです。

 今後は朝の7時前後に1話ずつ投稿していこうと思います。


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