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社獣ハンター インチキ宗教の闇 孤児魔教を暴け!
社獣ハンター インチキ宗教の闇 孤児魔教を暴け!
登場人物
堀部映理(ほりべ えり)
社獣ハンターのメンバーで格闘技の天才。『必殺飛燕真空回し蹴り』で数多くの悪人を沈めてきた。オフィスでは筋トレを欠かさず、常に身体を鍛えている。
五十嵐いづみ(いがらし いづみ)
社獣ハンターのスタッフ。女優・山岸あや花似の美女。身長175cm、痩身でメガネをかけた知的な雰囲気を持つ。セクハラを行う社獣を罠にはめるのが得意。
藤堂葵奈(とうどう あいな)
社獣ハンターのアシスタント。一見クールだが、小心者。強くありたいと努力するものの、恐怖や極度の緊張に襲われると嘔吐してしまう体質。
AI先生
社獣ハンターに確実な情報を伝えるモニター上のクリーンなインターフェース。
チャプンド
情報工学の専門家。盗聴や盗撮を駆使して堀部映理たちを援護。デスクはモニターと機材で埋め尽くされ、最新の情報を解析する。
孤児魔孤児男(こじま こじお)
天の真理を掴む会(通称孤児魔教)教祖
【会社のパワハラに悩んだ男】
男は迷っていた。
踏切の前に立ち、行き交う電車の轟音を耳にしながら、逡巡していた。目の前の線路を一歩踏み出せば、この世の苦しみから解放されるのかもしれない。しかし、その足は重く、一向に動かなかった。
新藤寅太(しんどう とらた)、30代。かつては一流企業のサラリーマンとして働いていた。しかし、会社では日々続くパワハラと理不尽な命令に耐え切れず、ついには退職を余儀なくされた。新しい仕事を見つける気力も湧かず、社会から取り残されたような気分だった。
家賃の支払いも滞り、貯金はみるみるうちに減っていく。何をやっても無駄、何をしても認められない。そんな焦燥感が募り、最後の選択肢として「死ぬこと」を考えるようになった。
だが、実際に電車が迫ると足がすくんでしまう。心の奥では、まだ何かを求めているのかもしれない。だが、その「何か」がわからない。
ふと、線路の向こう側でチラシを配っている人々が目に入った。
「生きるのがつらい方へ――救いがあります」
チラシに書かれた言葉に引かれるように、寅太はそちらへ歩き出した。それが、彼の運命を大きく変えることになるとも知らずに。
【孤児魔教】
孤児魔孤児男(こじま こじお)は長身で背筋が通り、堂々とした態度で人を萎縮させる風格があった。
本当は孤児魔は猫背で、ガニ股、そして歯は入れ歯である。顔のシミはレーザーで焼き綺麗に見せかけ、高靴で身長を15cm大きく見せていた。
孤児魔は宗教教団の教祖だ。
孤児魔教を一言でいうと仏教だが、キリスト教の要素を多く含んだ宗教であった。
この宗教教団の一番の特徴はお布施を一切要求しないことだった。
その点が非常に喜ばれた。また、社会からも批判されなかった。
ただし、出家して共同生活をしなくてはならない。
出家後は家族とは一切会えない。
なぜか、年寄りの信者はいなかった。
孤児魔教の信者は、一度入信すると完全に世間との接触を絶たれる。
家族や友人との連絡は禁止され、すべての財産は教団の管理下に置かれる。
表向きはお布施を求めない清貧の団体として知られるが、実際には信者を労働力として酷使し、労働報酬はすべて教団が管理していた。
福島県に神の里を作ると言い、土地を購入し、自分たちで建物を作り、神の里として構えていた。信者は約1000人といわれている。
しかし、どう見てもそれほどいるように見えない。
それはいろいろなところでわかる、例えば食料は1000人分調達していない。
しかし、信者の家族はお金を要求しない孤児魔教を怪しいとは思わず、むしろ信頼していた。
信者は毎日決められた作業をこなし、教祖の説法を聞く時間以外は自由がほとんどなかった。
特に健康管理には異常なほど厳しく、毎月の定期検査が義務付けられていた。
高血圧や糖尿病のリスクが高い者は特別な部屋に隔離され、病院へと送られていく。
そこに行った者は、決して戻ってこなかった。
新藤寅太もこの教団で共同生活をしていた。
寅太は大喜びだった。私有財産はできないが、三度の食事は欠かさず食べられる。衣服も教団服をあてがわれ、損傷すれば新しいものを支給された。
特に厳しい修行があるわけではない。
だが、やがて彼は気づく。
なぜ、健康管理がこれほどまでに徹底されているのか。
なぜ、病気になった信者は誰一人戻ってこないのか。
ある日、寅太の友人が病院へ送られることになった。
「また会えるよな?」
彼は不安げに尋ねた。
だが、その友人は笑うこともなく、ただ「きっとな」とだけ答えた。
その数日後、彼の姿を見た者はいなかった。
そして、寅太はこの教団の真実をまだ知らなかった。
【孤児魔教の勧め】
あの日、寅太の異常に気づいた孤児魔教団の信者が、静かに彼に近づいた。
「体調が悪そうですよ。心の疲れも癒せる場所があるんです」
信者の声は優しく、まるで古くからの友人のようだった。寅太は抵抗する気力もなく、言われるがまま福島へと向かった。そこには、孤児魔教が築いた「神の里」と呼ばれる広大な施設が広がっていた。
静寂に包まれたその地は、まるで別世界のようだった。畑や温泉、整然と並ぶ宿舎、祈りの場としての大きなホール。信者たちは規則正しく生活し、まるで家族のように振る舞っていた。しかし、寅太の心には拭いきれない疑問が残った。
「お布施も取らずに、この教団はどうやって運営しているのだろう?」
寅太は信者に尋ねた。しかし、誰もが「神の恵み」「教祖の慈悲」と言葉を濁し、それ以上のことは語ろうとしなかった。疑念は日に日に募るばかりだった。
そして、ある夜。
寅太はこっそりと施設内を歩き回ってみることにした。すると、深夜にもかかわらず、黒衣をまとった数人の信者が、担架に横たえられた信者を運んでいるのを目撃した。顔色は青ざめ、ほとんど意識がないように見えた。
彼は直感的に危険を感じた。
「これはただの病人ではない……何かがおかしい」
彼はそれを追いかけようとしたが、見張りの信者たちが厳重に配置されており、近づくことはできなかった。
寅太はこの教団の真実をまだ知らなかった。
実はこの教団の秘密は……
信者を病気として診断し、関連病院へ入院させることで、密かに臓器を摘出していたのだった。
臓器のない死体はすべて冷凍保存され、中国本土へと運ばれ、秘密裏に火葬されていた。
孤児魔は国際的な臓器密売ルートと繋がっていたのだ。
【信者の家族が詰め寄る】
ある日、一人の老婆が孤児魔教団の施設を訪れ、信者に会わせてほしいと懇願していた。彼女の目は涙で潤み、震える声で何度も訴えた。
「どうか、息子に会わせてください……。一目だけでも……!」
しかし、教団の門番たちは冷酷だった。彼らは何の感情も見せず、老婆を門前払いした。
「信仰の道を選んだ者は、俗世とは縁を切るべきです。お帰りください。」
老婆は涙をこぼしながらも、その場を離れるしかなかった。しかし、彼女は諦めなかった。
その日のうちに、彼女は社獣ハンターのオフィスを訪れた。
社獣ハンター オフィス -
社獣ハンターのリーダー、堀部映理は老婆の話を静かに聞いていた。
「信者になった息子さんとは、もう何年も連絡が取れないんですね?」
「ええ……。手紙を出しても返事はなく、生きているのかさえ分からないんです……。」
老婆の訴えに、映理は考え込んだ。そして、AI先生に孤児魔教団についての情報を照会した。
モニターに浮かび上がるのは、未だに詳細が不明な謎の教団。
「情報がほとんどない……。それだけ徹底的に隠されているということね。」
映理は決意した。
「いづみ、葵奈。私たちでこの教団の実態を暴くわよ。」
美貌と知性を兼ね備えた五十嵐いづみ、そして努力家の藤堂葵奈。
二人の女性が、孤児魔教の闇に足を踏み入れることになる——。
【潜入開始】
いづみと葵奈は、それぞれ孤児魔教の新人信者として教団に潜り込んだ。若く、世間に疲れた女性を装うことで、簡単に受け入れられた。
「あなたたちは今日から新しい人生を歩むのです。」
信者の一人が彼女たちにそう告げ、入信の儀式を行った。教団のルールは厳しく、外部との連絡は禁止。生活は共同作業が基本で、日々の労働と祈りに明け暮れる。しかし、彼女たちは慎重に振る舞いながら、教団の内情を探ることにした。
寮に割り当てられた部屋では、病に伏した信者が隔離されていることを知った。
「体調の悪い人はどこへ運ばれるんですか?」
葵奈がさりげなく尋ねると、古参の信者は微笑んで答えた。
「神の恵みを受ける場所へ行くのです。そこで本当の癒しを得るのですよ。」
言葉の奥に潜む不気味な真実を感じ取りながら、二人はさらに調査を進めることを決意する。
【寅太の危機】
そんな中、教団の幹部がある名前を口にするのをいづみが聞いた。
「新藤寅太の状態はどうだ?」
寅太——! それは、老婆が探していた息子の名前だった。
いづみはその場を離れ、葵奈に報告した。
「まずいわ……寅太が何かのターゲットになってる。」
その夜、いづみと葵奈はこっそりと教団の医療施設へ忍び込んだ。そこでは、寅太がベッドに固定され、何かの処置を受ける準備が進められていた。
「血液検査の結果、適合する臓器が見つかった。計画通り、病院へ運べ。」
医師らしき男が指示を出すのを聞いた瞬間、いづみの心臓が高鳴った。
「葵奈、急がなきゃ……!」
【病院への追跡】
翌朝、寅太は意識を失ったまま、密かに病院へと運ばれていった。
いづみと葵奈は後を追い、病院の場所を突き止めた。そこは表向きは普通の医療施設だったが、内部では違法な臓器売買が行われている可能性があった。
二人は変装し、病院の内部へ潜入。手術室の前で、医師たちが準備を進めているのを目撃した。
「摘出の準備は整ったか?」
「はい、麻酔の効果が確認でき次第、始めます。」
寅太の意識はない。今にもメスが入れられようとしていた。
「今よ、葵奈!」
いづみと葵奈は手術室に突入。制止しようとする医師やスタッフをかわし、寅太を救出しようと動き出した。
「この人を手術させるわけにはいかない!」
劇的な救出劇が、今始まろうとしていた——。
【決戦の幕開け】
社獣ハンターの調査により、孤児魔教の恐るべき実態が明らかになった。教団は信者を秘密裏に病院へと送り込み、臓器摘出を行い、それを闇市場で売買していた。いづみと葵奈は、手術が行われる病院の情報を掴み、ついに決行の時を迎えた。
二人は病院へと潜入するため、それぞれ医療スタッフになりすますことにした。葵奈は看護師、いづみは医療機器の点検員として変装し、手術室に忍び込んだ。
【手術室の攻防】
手術室では、すでに寅太が手術台に拘束され、麻酔が施されようとしていた。外科医の格好をした男がメスを手に取り、手術を始めようとしていた。
「やめなさい!」
いづみが叫びながら飛び込み、男の手首を掴んだ。葵奈も素早く行動し、周囲の医療スタッフを次々と制圧する。
「何者だ!?」
外科医が怒鳴ったが、いづみの目は鋭く光った。
「社獣ハンターよ。あんたたちの悪事は、すべて暴かれるわ!」
「くそっ……!」
医師は必死に抵抗しようとしたが、その瞬間、手術室のドアが勢いよく開いた。
「そこまでよ!」
低く鋭い声が響き、次の瞬間、外科医の体が宙を舞った。
堀部映理が放った『必殺飛燕真空回し蹴り』が、見事に医師の顔面を直撃したのだ。
医師は呻き声を上げながら壁に叩きつけられ、そのまま意識を失った。
「遅れてごめん。でも、いいところでしょ?」
映理は微笑みながらいづみと葵奈を見た。
「映理さん!」
二人は安心したように微笑んだ。
【脱出と決着】
混乱の中、三人は寅太を手術台から解放し、急いで病院から脱出しようとした。しかし、教団側の追手がすでに病院の廊下を封鎖し、逃走を阻もうとしていた。
「ここは私に任せて!」
映理が前に出て、戦闘の構えを取った。
「悪を裁くのは、社獣ハンターの使命よ!」
彼女は素早く飛び込み、次々と敵を蹴り倒していった。圧倒的な戦闘力で追手を一掃した。
一方、いづみと葵奈は寅太を抱えながら、裏口へと急いだ。
数分後、映理は見事に追手を撃退し、三人は病院の外へと逃げ出すことに成功した。
【SNS炎上】
同じ頃、社獣ハンターの情報解析担当・チャプンドは、独自に掴んだ証拠をネット上に拡散していた。
「孤児魔教の闇を暴く。信者を利用した臓器売買の証拠を公開する」
そのツイートと共に、教団と病院のやり取りを記録した音声データ、密輸された臓器リスト、内部監視カメラの映像が添付された。
SNSは瞬く間に騒然となった。
「こんな恐ろしいことが……」「本当に信じられない」「これは許されない犯罪だ!」
コメント欄には怒りの声が溢れ、拡散の勢いは止まらなかった。瞬く間に各メディアがこの情報を取り上げ、テレビニュースでも速報が流れた。
「現在、警察が調査を開始した模様です」
報道機関のカメラが孤児魔教の施設前に集まり、信者たちは混乱の中にあった。教団の幹部は声明を出すこともできず、情報は完全にコントロール不能となっていた。
映理たちは、安全な場所からこの事態を見守っていた。
「チャプンド、さすがね」
映理がスマホを見ながら呟く。
「情報は力ですからね。連中を世間の目に晒せば、もう隠し通すことはできません」
チャプンドは自信満々にキーボードを叩いた。
その瞬間、孤児魔教の崩壊は決定的なものとなった――。
【孤児魔逮捕】
SNSでの炎上と証拠の拡散により、警察は速やかに動いた。教団の本部へ突入し、幹部たちを次々と逮捕。その中で、ついに孤児魔教の教祖・孤児魔孤児男が拘束された。
しかし、警察官たちは驚愕した。
「こいつが教祖……? 今までの姿と全然違うじゃないか!」
孤児魔孤児男は、以前の堂々とした風貌とは程遠く、痩せ細り、猫背の男だった。シワだらけの顔に、入れ歯がガタつき、髪の毛もかつらだった。高靴も履いておらず、明らかに威厳を作り上げていたことがバレてしまったのだ。
「……ただの詐欺師だったわけか。」
警察官は呆れたように呟いた。
【新たな決意】
数日後、寅太は母親と再会した。
「お母さん……。」
老婆は涙を浮かべ、寅太を抱きしめた。
「よく戻ってきたね……! もう二度と離れないでおくれ……!」
寅太も母の背中を抱きしめ、静かに頷いた。
その後、彼は社獣ハンターのもとを訪れ、映理に向かって言った。
「これからやり直します。臓器を取られることを考えたら、なんでもできます!」
映理、いづみ、葵奈は微笑み、手を振って彼を見送った。
「頑張ってね、寅太さん。」
風が吹き抜け、物語は新たな未来へと続いていく——。