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92歳 三石巌のどうぞお先に 32

三石巌が1994年から産経新聞に掲載していた「92歳 三石巌のどうぞお先に」の記事を掲載させたいただきます。(全49回)


NK細胞の正体

ひっぱりだこのタンパク質

 NK(ナチュラルキラー)細胞について、ずいぶんとPRしてきた。ここまでくると、「自力でそれを増やすことができたらいい」とだれしも思うだろう。それについての情報をすこしばかり並べることにする。
 前に書いたことだが、キトサンがそれを増やすって話がある。セールストークかどうかわからんがね。
 もうひとつ、笑いがNK細胞を増やすって話もある。はなし家にきいたわけじゃないが、「笑うかどには福きたる」ってことわざが思いだされるじゃないか。キミはよく笑うほうかね。ボクはひとを笑わせたい人間だが、別にNK細胞をあたまにおいているわけじゃないよ。
 ボクの考えかたはいつもオーソドックスだ。だからまず、NK細胞の正体から出発することになる。それはどういうものか。
 細胞だから膜をもっているんで、そこに脂質のあるころはたしかだが、大部分はタンパク質だ。考えはそこからはじめなけりゃいかん。
もともと栄養物質ってヤツは、体じゅうひっぱりだこになっている。タンパク質がそうなんだ。口からはいったタンパク質は、血液になったり、ひふになったり、NK細胞になったりとひっぱりだこなんだ。
 そこで食いものの問題がでてくる。タンパク不足の食事をしていても、ほしいだけのNK細胞ができてくれるかって問題だ。タンパク質は血やひふをつくるほうにまわされて、NK細胞づくりのほうは手ぬきになっているんじゃないかって問題だ。笑ったりキトサンを食ったりしたら、タンパク質は血やひふにならずにNK細胞にまわされるかって問題だ。
 キミはどう思うか。血やひふや骨と比べたら、NK細胞はさほどだいじなものじゃない。それがなければ生きてゆけないなんていうものじゃない。タンパク質のつかわれかたに優先順位があるとすれば、NK細胞なんてものはビリにちかいんじゃないかな。
 それはつまり、タンパク質がたっぷりなかったらNK細胞にまではまわらないだろうってことだ。
 どっちにしても、NK細胞への期待が大きすぎるのは禁物だ。たとえば、肝臓がんの細胞はかたくなった組織のなかにいることがおおい。そんなところへNK細胞がたどりつけるか。考えたらわかるだろう。NK細胞もしめだしを食ったら、はたらけるわけがないんだ。

三石理論研究所


三石巌
1901年 東京都出身
東京大学理学部物理学科、同工学部大学院卒。
日大、慶大、武蔵大、津田塾大、清泉女子大の教授を歴任。
理科全般にわたる教科書や子供の科学読み物から専門書にいたる著作は300冊余。
1982年 81歳の時、自身の栄養学を実践するために起業を決意し、株式会社メグビーを設立。
1997年 95歳で亡くなるまで講演・執筆活動による啓発につとめ、
生涯現役を全うした。


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