ロサンゼルス生活152-153日目
日が少しずつ短くなってきている。ロサンゼルスも少しずつ秋に向かっているのかもしれない。
映画。『PERFECT DAYS』を観た。製作は2023年。日本とドイツの合作。監督はヴィム・ヴェンダース。主演は役所広司。カンヌやアカデミー賞などの世界の映画祭でも評価された作品。
主人公はトイレの清掃員。毎日のように渋谷区の公共トイレを清掃して回っている。居住地は浅草の近辺。東京の下町。年齢は60歳前後であろうか。
彼は彼のルーティンを毎日のようにこなす。朝起きて、歯を磨き、草花に水をやり、着替えて、コーヒーを買い、カセットでお気に入りの音楽を聴きながら、仕事に行く。
昼はいつも同じ場所でいつも同じサンドイッチを食べる。同じ場所で同じようなアングルの写真を撮る。
仕事から戻ると、自転車に乗って、銭湯に行き、いきつけの居酒屋で夕食をとる。夜は小説を読みながら眠気が来るのを待つ。そして眠る。
休日もルーティン化されている。コインランドリーに洗濯に行き、写真屋にフィルムを出す。そして現像写真を受け取る。自宅に戻ると写真を選別する。よく撮れているものは残し、そうでないものは捨てる。
夕方になると行きつけの店に行く。仕事のある日に行く店とは違う店。そこでいつもよりも少し多く飲む。そして自宅に戻り、本を読み、眠る。
彼の生活はこの繰り返しである。そしてほとんど一人で完結している。しかしその日常に時に変化が訪れる。他者の介入である。しかし彼にはそれすらもどこか楽しむ余裕がある。ほとんど完璧に一人で立っていることもできるが、他者からの影響もそれはそれで楽しむことができる。
物語が進むにつれて少しずつ彼の過去が明らかになっていく。しかし完璧には分からない。きっとこういうようなことがあったのであろうという示唆を観ているものに与えるだけである。
様々な変遷を経た後に今のような暮らしに辿り着いているのではないか、という推測を観ているものに与える。
ラストシーンは凄かった。役所広司は主人公の心の内を表情だけで表現した。あんな芝居、観たことない。
そもそもセリフのとても少ない映画である。しかし全然問題ない。全然観ていられる。演出の力なのだろうか。それとも芝居の力なのだろうか。きっとその両方なのだと思うが。
とても素晴らしい映画だった。またいつか思い出して観るだろう。そして私もいつかあの主人公のような生活を送りたいと思う。その心境に行き着くまでにはまだまだ時間がかかるとは思うけど。