能「切兼曽我」梗概
河津三郎亡きあと、その遺児の一万・箱王兄弟は母の再婚相手である曽我太郎祐信に養育されていた。やがて兄弟の祖父にあたる伊東祐親が頼朝に誅せられたのち、その孫の兄弟がまだ存命と聞いて、後難を恐れた頼朝は、梶原源太景季に兄弟を誅するよう命じる(ここまで開幕前)。景季(ワキ)が祐信(シテ)のもとに赴き上意を伝えると、祐信夫婦は悲嘆にくれる。同情を禁じ得ない景季だが、時刻が過ぎてはならぬと、なおも取りすがる母(ツレ)をなだめつつ、祐信ともども兄弟(子方二人)を連行していく。
やがて景季一行(従者・輿舁き、ともにワキツレ)が由比ヶ浜に着くと、祐信は自分の手で兄弟を斬りたいというので、景季も諾う。そこで祐信は太刀を受け取るが、神妙に観念する兄弟を見て斬るに斬れず、ついに泣き伏してしまう。一同もらい泣きするところへ使者(ワキツレ)が駆けつけ、畠山重忠の取りなしで兄弟の助命が決まったという。かくて喜びの宴となり、景季の所望で祐信は一さし舞い、兄弟を連れて帰ってゆく。