能「太施太子」梗概
天竺波羅奈国の太施太子は、国土に貧民が多いことを憂え、梵天に祈ると、龍宮の宝である如意宝珠を賜り、数々の宝を得た。そこで各地に高札を掲げ、大臣(ワキ)が民に宝を賜るよう触れる。大勢集まった中に混じっていた女(前シテ)が宝を賜らないので大臣が不審がると、宝物の如意宝珠を拝みたいという。そこで蔵の戸を開けて見せると、女はたちまち様子が変わり、我こそ龍女なりと名乗り宝珠を奪い取って立ち去る。下官(アイ狂言)の触れがあって、太子の命をうけた大臣と廷臣たち(ワキツレ)が祈祷すると、帝釈天(ツレ)と四天王(同前)が龍宮を攻め、海水を汲み上げるので龍神はみな逃げ去り、龍女(後シテ)だけが抵抗するが、帝釈天に責められついに宝珠を差し出す。帝釈天は宝珠を宮殿に戻して帰り、龍女も、のちに釈尊に転生することが定まっている太子を拝して龍宮に帰っていく。