平泉寺白山神社
平泉寺白山神社は越前は勝山にいます白山信仰のお宮です。名前の示す通りもともとは天台宗の平泉寺という寺院でした。明治の神仏分離によって神社として改まったのです。
白山は美濃、加賀、越前の3か国にまたがる標高2702 mの高山です。奈良時代に越の大徳として名高い泰澄大師が開いて以来、富士山、立山に並ぶ日本3霊山のひとつとして信仰を集めてきました。加賀、越前、美濃にはそれぞれ馬場と呼ばれる白山へ至る信仰の道があり、平泉寺は越前馬場の中心地でした。中世には周囲に数千坊の僧坊を擁し、3つの市に囲まれ、九頭竜川によって河口の三国湊とつながれ、大陸との交易も盛んな巨大宗教都市でした。天正2年(AD1574)に越前一向一揆に焼き討ちにされてからは寺域は著しく縮小し、かつての僧房の数々も道路もすべて土中に埋もれ、往時の法灯を偲ぶ術は潰えました。
寺であろうが神社であろうが白山の霊威にはいささかの違いも無いのだという感じがして参ります。ただ人間が不実であればそのうわべの形は滅びるのでしょう。平泉寺はいまはなく社殿が立ち並ぶのみですが山の気配は今も人々を出迎えてくれます。
平泉寺の境内には平泉と申し上げる清水が湧いております。伝説によればこの泉に白山の女神がご出現されました。2019年に平泉の浚渫作業が執り行われ、泥中の遺物の調査が行われました。土師器や須恵器の破片が多数見つかり、大体9-11世紀ごろのものと言われています。この地は縄文期からの聖地ではなく、まことに泰澄大師が感得されてからの信仰の土地なのかもしれません。少し離れたところにある大矢谷白山神社という巨岩の蔭からは縄文期の遺物が発見されており、古代の勝山のありかたについての調査が進むことに興味がつきません。
さても白山の霊威はかたじけなきことです。山からの雪解け水が手取川、九頭竜川、庄川、長良川となり、越前、加賀、美濃の生命を保つのはありがたきことです。平泉寺の豊かな苔は多くの方々の懸命の保存作業のためはあれど、お山の恵みの一端とも言えるでしょう。豪奢で権勢を誇ったかつての大伽藍よりも、あたたかな苔に包まれた今の静かな平泉寺のほうが、ずっとお山の美しさを顕している気がします。
平泉寺は駐車場がいくつかあり、お車が便利です。