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大荒比古神社(新旭)

 大荒比古神社は近江の高島に坐す古社です。ご祭神は豊城入彦命、大荒田別命です。豊城入彦命は崇神天皇の子で、大荒田別命は豊城入彦命の4世孫だということです。
 近江国は延喜式内社の多い土地で、全国4位の数を誇ります。そのなかでもとくに式内社の多い土地が高島と長浜なのです。大荒田別命は上毛野氏の祖といわれ、いまの群馬県を治めた人々の祖先ということかなと思います。日本書記に豊城入彦命が東国へ派遣される話がありますが、そこから豊城入彦命の系譜は上野国を治めたのでしょうか。それではなぜ近江の高島に彼らの宮があるのでしょう。現在の高島の新旭界隈は彼らの故地だったのでしょうか。なお大荒田別は神功皇后の時代に新羅征討に派遣されています。神功皇后といいますと息長氏の人ですが、息長氏は琵琶湖の対岸、米原のあたりに山津照神社があり、そのあたりの氏族です。近江は激動の古代史の舞台だったのでしょうか。難しくてよくわかりませんが、興味深く感じます。


森厳とした参道

 さて複雑な古代の歴史とは別に、大荒比古神社はいまもなお地元に愛されながら静かに鎮座されています。七川祭というお祭りを毎年5月4日に行っており、奴振りといわれる舞や、流鏑馬などが奉納されます。きれいに整備された境内は地元の方々の崇敬を示すようです。人と神様の交流がある土地はとても素敵だと思います。

七川祭のポスター

 さて鳥居を越えますと両脇が田んぼのすがすがしい参道が続きます。このまっすぐな参道を流鏑馬が駆けると想像するだに胸がすくような思いがします。空は広く、鷺が舞い、風は涼しく、水は清らかです。

あたかも西洋の田園を錯覚するような美しい参道

 参道も越えますと大荒比古神社の社殿が見えてきます。歴史を感じさせる境内は椎の木が生え、照葉樹林の作り出す特有の黄色い光がもれる様は日本の山野の原風景を偲ばせます。照葉樹林の森がなんとなく落ち着くのは、私たち日本人の縄文期からの遠い記憶でしょうか。日本人のみならず、原始の森の美しいことは人間の根源的な美や善を元気づける気がします。

参道を超えると石段がある 石段の下は広いスペースがある
木々が繁る 杉の木やモミジの木、シイの木が植生を作る
境内 空が広い

 大荒比古神社はマキノの方にもあり、ともに延喜式内社論社です。いずれにせよ当地はたいへん歴史が深い土地であり、今後考古学の発展により高島からはいよいよさらなる事実が出てくるものでしょう。

大人塚 かつて若狭との交易路に跋扈した盗賊を誅戮した墓と伝わる 宮の境内に祀るということはその盗賊は地元にとっては有力で良い存在だったのだろうか あるいはもともと古い磐座だったのだろうか
本堂谷遺跡 宮のとなりにある 大宝寺のあとと言われ、織田信長軍に対抗するための佐々木氏の出城としての機能を有していたかもと看板にあり
本殿

 近江高島は水清く風の薫りのよい土地です。ぜひJR湖西線に乗ってお越しください。

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