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【NXT(ネクストラッカー):2024年第3四半期決算発表】売上高20億ドル突破、受注残は過去最高水準へ、太陽光発電市場の成長を捉える

Nextracker(以下「NXT」)が発表した2025年度第3四半期決算の主要な内容をまとめました。


1. 決算概要

  • 売上高(Revenue)

    • 第3四半期(Q3):6億7,900万ドル(前四半期比+7%)。

    • 2025年度通期の累計(9か月間)では20億ドルに到達し、前年同期比+15%の成長。

  • 調整後EBITDA

    • Q3は1億8,600万ドル(前年同期比+11%)、マージン27%(前年から4ポイント上昇)。

    • 通期(9か月)の調整後EBITDAは前年同期比+48%と大幅に拡大。

  • フリーキャッシュフロー(FCF)

    • Q3の調整後FCFは1億3,500万ドルで、前年同期(6,200万ドル)の2倍超。

    • 9か月累計では3億9,500万ドル(前年同期+26%)。

  • バックログ(受注残)

    • 四半期ベースで過去最高を更新し、45億ドルを大きく上回る水準。

    • 80%以上がリピート顧客による案件で、今後数四半期の業績予見性を高める要因。

  • 通期見通し(2025年度)

    • 売上高:28億~29億ドル

    • 調整後EBITDA:7億~7億4,000万ドル

    • 調整後1株当たり利益(EPS):3.75~3.95ドル

    • 構造的な粗利益率は低30%台を維持見込み

    • 地域別売上構成は米国が約3分の2、海外が3分の1を想定


2. 事業・市場動向

2-1. 太陽光発電市場の拡大

  • 世界的に需要が増大

    • 米国では第三四半期(カレンダー上の2024年Q3)の新規発電容量の64%を太陽光が占めるなど、主要国で太陽光発電が新規電源の主役に。

    • 多国籍エネルギー企業や政府系事業者などが大規模案件を積極推進しており、NXTへの受注も増加。

  • 大容量蓄電池の普及

    • バッテリーコストの大幅低下により、ソーラー+ストレージによる安定供給が普及。

    • 早朝・夕方ピークに対応できる発電ソリューションとして太陽光がさらに拡大。

2-2. 地域別の状況とNXTの戦略

  • 米国(売上全体の約6~7割)

    • インフレ抑制法(IRA)のボーナスITC(投資税額控除)で恩恵を受ける案件が増加。

    • トラッカー部材の国内調達ニーズが高まり、NXTは「100%米国製造のトラッカー」を出荷済み。

    • 新基準でトラッカーの国内調達比率がさらに重視され、NXTのサプライチェーンが競合優位に。

  • 中南米、欧州、豪州、アジア・中東・アフリカ(売上全体の約3~4割)

    • Q3の受注は13カ国から獲得。各国政府の脱炭素目標や企業の再エネ導入加速で大型案件が増加。

    • ブラジル、チリ、オーストラリア、インド、サウジアラビアなどで100~750MW級のメガプロジェクト15件を受注。

    • 低コストかつ信頼性の高い製造拠点を現地に整備し、地域ごとのソリューション最適化。


3. 製品・技術アップデート

  • Hail Pro-75トラッカー&ソフトウェア

    • 大規模雹(ひょう)対策機能を備え、米国南部や中南米など雹被害リスクが高い地域で導入進む。

    • 自動検知とステー機能の組合せでパネル損傷リスクを低減し、保険料低下やLCOE(均等化発電コスト)の改善に寄与。

  • TrueCaptureソフトウェア

    • 発電所ごとの気象・地形データをリアルタイムに解析し、稼働角度などを自動最適化。

    • Q3の売上成長に寄与し、ソフトウェア関連は今後も収益の2%程度を占める見通し。

  • NX Horizonトラッカー + 基礎工事(Foundations)

    • 地盤条件の多様化に合わせた基礎工法も併せて提供することで、顧客の導入コストを削減。

    • 米国内における大規模工場との連携で、納期短縮・柔軟な出荷対応を実現。

  • R&D投資拡大

    • 米国、ブラジル、インドの3地域で研究開発拠点を強化。

    • UCバークレー校との共同研究拠点「CAL-NEXTセンター」に6.5百万ドルを投資。


4. 財務と資本政策

  • バランスシートの強化

    • 期末時点の現金保有6億9,400万ドル、負債1億4,500万ドル。主要な債務返済期限は2028年度まで到来せず。

    • 流動性総額(キャッシュ+コミットメント枠)は16億ドルに拡大。

    • 「業界トップクラスの財務柔軟性」を強調。

  • 資本配分方針

    • 成長投資(R&D、サプライチェーン強化、M&Aなど)を最優先。

    • 自社株買いなど株主還元策も今後検討していく方針。2025年末以降に詳細発表の可能性。


5. 経営陣コメント

  • Dan Shugar(CEO & Founder)

    • 「世界中で太陽光需要が拡大し、NXTの革新的製品と強固なグローバルサプライチェーンが競争力を高めている。2025年の残り期間も力強い成長を見込む。」

    • 「R&D投資と国内外の生産能力向上で、引き続き業界リーダーとしての地位を強固にしつつ、顧客に高付加価値を提供する。」

  • Howard Wenger(President)

    • 「Q3は米国・海外ともに過去最高の受注実績。80%超のリピート顧客比率がNXTの信頼度とサービス品質を証明している。」

    • 「国内製造比率100%対応のトラッカーや、極地・雹対策など特殊要件への対応力が差別化に大きく寄与。」

  • Charles Boynton(CFO)

    • 「売上・利益ともに堅調に伸び、フリーキャッシュフローも前年同期比で大きく拡大。財務体質の強化が継続的投資を可能にしている。」

    • 「製品ミックスと国別案件の組合せで粗利益率は安定的に推移しつつあり、次年度以降も新興・成熟市場でバランスよく成長を図る。」


6. 今後の注目点

  1. 米国トラッカーの100%国内調達ニーズの拡大

    • IRA(インフレ抑制法)施行後、トラッカーにかかる国内部材要件が再整理・上方修正。NXTの国内生産体制がどこまで競争優位を確保できるか。

  2. 海外市場の大規模案件拡大

    • エネルギー転換を進める新興国を含め、複数の1GW級プロジェクトの入札進行。

    • 単価競争・資金調達リスクが残る中、NXTのサプライチェーン・技術力でどこまで対応するか。

  3. 新製品・新技術への投資回収

    • Hail Pro-75、XTR、TrueCapture、基礎工事統合ソリューションなどの付加価値をどこまで価格反映できるか。

    • ソフトウェア収益の拡大余地(現状売上の2%程度)。

  4. 資本政策・M&A

    • 財務改善によりM&Aや自社株買い余地が拡大。具体策が今後どのように展開されるか注視。


まとめ

Nextrackerは2025年度第3四半期において、売上・利益・キャッシュフローいずれも堅調に推移し、バックログ(受注残)45億ドル超という過去最高水準を更新しました。国内外での大規模太陽光案件の増勢を背景に、トラッカーの差別化技術(Hail Pro-75、XTR、TrueCapture等)や米国内の強力な製造拠点を強みにシェア拡大を狙う構えです。

今後は**「ソーラー発電が世界の主要な新規電源として定着」**する趨勢が続く中、同社がR&D投資やグローバル供給網のさらなる拡充を通じて成長と収益性をいかに両立させるかが焦点となります。欧米のみならずアジア、中東、南米など世界各地での受注動向と、新技術への付加価値を上手く収益に転換できるかが、2026年以降のさらなる飛躍を左右しそうです。

以上が本決算発表の概要です。

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