半透明のわたし。
気持ち〜ぃ。
大学受験用の小論文が入ったカバンを自転車のカゴに入れながら、そんな言葉が出るような空気になった。
この季節は意外と感慨深い。
去年の今頃、親が離婚して、新築のアパートに引っ越した。
引っ越してきて1年、母は、めちゃくちゃ元気になった。仕事、読書、勉強だの、zoomだの、よくわからないけど、すてきな友達ができたようで、元気すぎる…。
うるさいけど、母が元気だとちょっと嬉しい。
私は、母が仕事に燃えている間、部活もせず、バイトもせず、ただひたすら読書(小説多)、Netflixで映画、Disney plusで映画、時にはマンガ、という芸術鑑賞に時間を費やす。
彼氏はいらない。
私の時間を取られるから。
でも、よく告白される。
でも断る。
私の時間を取られるから。
私は母と違って、天真爛漫な人間ではない。
自分の中で決めた人にだけに心を開く。
友達は多くない。
そんな私にも親友のような男友達ができた。
中学から一緒だったし、高校違ってもよく連絡とってたし。
アイツは、アホすぎて、普段あまり笑わない私を
とことん笑わせてくれる。
アホなの。ほんとに。
「バスの乗り方わらかないから、
今から歩いて迎えに行くよ」とか平気で言う。
距離考えてよ。
潔癖症だから風呂に1日3回入るという。
お母さんに光熱費高いって怒られるから、
お母さんがいないうちに2回入るらしい。
いや、問題はそこじゃないだろ。
でも、彼は本気なのだ。
面白すぎる。
わたしのツボだ。
しょっちゅう連絡とってるし。
しょっちゅう会ってるし。
会う前は、ソワソワ?
いや、ドキドキするし…。
でも、この秋の少し前の夏、
やっぱりアイツは友達だよなって、私がなった。
好き?って何??って悩む。
だから、うちら友達だよねって伝えた。
ごめん。
同じ高校で彼女ができたらしい、アイツに。
私の事は吹っ切れてくれたのだろう。
良かったよーな、複雑な気持ちだけど。
アイツが元気で過ごしているならそれでいい。
きっと次会った時は、また一緒にバカ笑いできるはず。とにかくアイツには笑っていてほしい。
アイツの彼女が死んだ。
アイツの誕生日の前日に
交通事故で死んだ。
ニュースにもなった。
しばらくして、アイツから連絡が来た。
「会いたい」
わかってる。彼は壊れそうなのだ。
親友なんだから行くべきだ。
体が動く。
寒くないようにフードついた
ブカブカのパーカーを
着て家を出る。
午後7時。仕事中の母に
「友達とウォーキングする」とウソのLINEする。
「夜遅くなるなら家の前まで送ってもらいなさい。」とだけ返信がくる。
相手はアイツだとわかってくれている。
この1年で母とはたくさん話すようになった。
私と会っていても、アイツはいない彼女とのメールを見返しながら、会話する。
苦しいのはわかる。
でも私は何をしていいかわからない。
彼女の代わりもできない。
私も苦しい。
私にどうしろというのだ。
わからなくて不安で苛立つ。
でも、今、アイツを突き放したら、
今すぐ壊れてしまう。それもわかる。
だから、彼に寄り添うだけ。
それだけしか私にはできない。苦しい。
苦しい時は、
ただ受け入れる。
ありのまま受け入れる。
流れに逆らわずそのまま静かに受け入れる。
そんな時があってもいいらしい。
そうしたら、すぐではないけど、
ちゃんと見つかるらしい。
自分の行きたい方向が。
自分のやりたい事が。
「べき」ではなく「たい」が。
自分の心が突き動かされる時が来るらしい。
母が言うのだから
強ち、間違いではないだろう。
彼女も大概の事を受け入れてきたと
娘のわたしでもわかる。
だから、
わたしの未来はまだ今は半透明でもいいのだ。
ただ寄り添うだけ。
何もしない自分を受け入れよう。
灼熱から解放された気持ちいいこの季節に
またわたしの想いが蓄積された。
来年のこの空気は、
どうか澄み切っていますように。
大丈夫、きっと大丈夫。
#つくってみた
フィクションのようで実話のような半透明なお話。
#高校生へ
#思春期の子を持つパパとママへ