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風の診療所『調』"My Dragon Train"

 焦ってしまって、もがいてしまって、どうしようもない時、すがりつくものが他には何もないときに、生まれでるパワーというものがやはりあるのではないかと思う。とんでない恥をかいた時に、とんでもない失態をやらかした時に、何が生まれるのか。それをパワーに変えることができるのか。この辺がやはり、今問われていることなのではないかと思う。

 僕の中で何かが崩れ落ちて行くのを感じる。もっともっと壊れろ。そんなことを叫んでいる自分がいる。破壊の衝動。でもそれは外の世界へ向かう出もなく、内の世界に向かう出もなく、自ら自らを閉じ込めた、概念という檻へ向かうものだ。だからこれは、極めて正常に働いているものだと僕には思えるのである。見てきたことや聞いたこと今まで覚えた全部デタラメだったら面白いそんな気持ちわかるでしょ。

 どうしようもなく歌い出したくなる夜。僕にはまだ貪欲さというやつへの関わり方が中途半端なようだ。誰も相手にしてくれないなんて可哀想なやつだ。僕に力を。本当の道を突き進むための勇気を。のらりくらりと逃げ続けているだけではなにも得ることはできない。帽子を遠くに投げるんだ。そして走り出せ。動きながら考えるんだ。

 僕がしんどい時には、君を歌うよ。君がしんどい時には僕を歌うよ。今日は約束を守れなかったから、せめて今だけ後悔の歌を目一杯歌わせておくれよ。

 トンネルを潜り抜ける時、真っ暗になって何も見えなくなってしまうのなら。君に会えた時、何も分からなくなってしまうのなら。そうだそうだったんだ。僕が本当に求めていたのはこれだった。このひりつくような緊張感。どうしようもない生の煌めき。星に届きそうなくらいの歓喜と慟哭。一番ヤバイと思う選択肢をとること。

 僕がいのちを落としたとしても 
 いのちが僕を落とすことはないだろう

 書かずにはいられない。発狂してどうにかなってしまいそうだ。そういえばあの時間、一人で文章を書き続けていたあの時間、僕は一人でその事に挑んでいたというのか。なんておろかな。なんて惨めな。なんて情けない。なんてせこいことを。

 しかしそれができるのが実は僕の強さだ。このおろかさが、惨めさが、情けなさが、僕の強さだ。生命線だ。這いつくばってでも、離したくはない世界なんだ。

 どこにたどり着こうとしているのかも分からない。なにがしたかったのかのかも分からない。どうにもこうにも動けない。チキンカレーを二つ。春の風の匂いはシャツにまだ残ってる。

 僕にだけは見える。僕は今這いつくばって生きているのが。今だけじゃない。これまでの人生、ずっと、ずっとだ。その事に意味があったのかどうかは分からない。全て個人テスト、ストーリーだとしたら、意味なし空っぽだとしたら、結局何がしたかったのかと始めの問に帰る。そう、はじめの問に還るということ、これこそ僕の求めていたことなのかもしれない。絶望の真っ只中で、希望を掘り出すということ。

 あーあ、またどうでも良いや、なんて思ってしまってる自分がいる。これじゃダメだ。これじゃ何も変わってない。あのときのような切迫感で、あの時のような真剣さで。あの時のような本物さで。

 紛い物に本物であること。それが唯一の新しい可能性の領域を生み出す。

 簡単なことじゃないか。シンプルなことじゃないか。

 本当は苦しくて、本当は寂しいんだ。

 本当は辛くて、本当はつまんないんだ。

 ああ、どこに行けば本物に出会える?

 紛い物に本物であること。

 だんだんだだんだんだんだだん
 だんだんだだんだんだんだだん
 だんだんだだんだんだんだだん
 だんだんだだんだんだんだだん

 僕は僕の言葉なんだ。

 大人は泣かないと思っていた
 昨日聞いた俺の声
 どこいっちまった俺のままで
 知りてえのはお前の声
 死にてえのはなにもお前だけじゃねえ

 やり直せるそんな言葉じゃ
 おれのすさんだ心には届かねえ
 やりなおせねえいっそききてえ
 正直で残酷な現実の言葉を

 夢なんてもう何十年も見てねえ
 クソみたいなリアル吐き捨てて威張る
 虚勢はり強制さけ去勢されず今日を精一杯生きる
 正直言えばもう限界地べた這いずり回り生きる

 清志郎もブルーハーツももう俺の心には届かねえ
 俺は俺が紡ぎ出す言葉で俺を救う
 誰かに頼るなんてかっこよすぎて俺にはできねえ
 自立するダサすぎてこんな俺にはお似合いだぜ

 いつまでもひとりぼっちで馬鹿な言葉を叫び続ける
 誰も聴いてねえそれが唯一の俺にとってのアイデンティティ

 山の向こうに突き刺さる青空の眩しさが痛え
 目を瞑るそしたらうかぶ懐かしい景色も痛え
 どこまでも何しても結局俺の目には地獄
 かすかに残る雪が俺にとっての最後の希望
 アイツがいるから俺は歌うアイツの分まで俺は歌う


 電車に乗り向かう銀河鉄道じゃねえ銀歯鉄道
 俺の歯じゃお前を噛めねえ柔らかすぎて拒否されちまう
 残された道はひとつ頑なな心に噛みつく
 これが俺の最後の足掻き背水の陣水を味方に付ける

 旅立ちサヨナラは俺の柄じゃない好きじゃない
 波うちサヨナラじゃ俺の殻は破れない変わらない

 新しい言葉をいつも探して動き回る
 俺の耳お前に託すだから聞いてくれ俺の話

 トレイン トレイン 登っていけ
 俺のドラゴン 浅間の山頂の煙に渦巻く
 510円でどこまで行ける

 トレイン トレイン 降っていけ
 俺のドラゴン 織座の谷底の星座に渦巻く
 510年でどこまで行ける

 510億年でどこまで行ける
 確かめてみようじゃねえか
 さあ乗らないか
 My Dragon Train

  富良野 富良野
 電車は間もなく富良野駅に到着します
 お降りの方はお荷物等
 お忘れもののないようにご注意願います

 2024年4月から、NPO法人C・C・C富良野自然塾で働かせて頂く予定になっています。僕はそこで何ができるのか、正直不安でいっぱいです。しかし一方で、とんでもなく期待しているところもあるのです。織座農園の畑に、今よりもっと深く、もっと奥の方まで繋がってゆくことができるような可能性を感じているのです。全ての道は織座農園へと繋がっています。織座農園よりも越えられるものが僕にはないのです。これ以上のものは。

 警備のバイトをしながら、ずっと歌のことを考えていました。いつも何かの音楽が頭の中で鳴り続けていました。それは全て織座農園の畑が奏でるメロディでした。ずっとずっとそれは鳴り続けていました。そして今も、ずっとずっと僕の頭の中で鳴り続けています。もうこの音楽をとめることは僕には出来そうにありません。すっかりこの旋律の虜になってしまっているのです。恋愛重傷です。本物の恋です。恋愛というやつです。幸せというやつです。

 這いつくばってでも離したくはない世界とは、僕の頭の中で鳴り続ける織座農園の畑の旋律のことだったのです。不滅の旋律です。鳴りやむということを知らない音楽です。知らないことすら知らない世界へと誘う言葉です。創造の泉です。泉の輝きです。完全に沼にはまりこんでいます。抜け出すのは難しいですし、抜け出す気もありません。

 今日は友人のともあき君の恋話を聞きました。非凡な恋です。素晴らしい彼女と出会いました。もうとめられません。愛し合うということを覚えてしまいました。

 電車は沼津駅を目指して走ります。僕はここらでタブレットを閉じて、さっき出れなかったあの子に折り返しの電話をかけてみることにします。何事もなければ良いな。そんな人生とはサヨナラをせざるを得なくなる。そんな予感に憂鬱な気分で言葉を綴る、2025年の1月1日なのでした。

 ps.君のパンクロックが聴きたい。




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