風の診療所『調』"早く希う"
風の診療所『調』"早く希う"
頭の中をぐるぐると回る。この脳みその清掃係が僕にとっては書くことなのだ。書くことで僕の頭の中で散らかったままの思考を整理する。脳内をクリアにする。書くということの力は、整える事にある。僕は書くことの力を借りて、思いもよらなかった脳内の化学反応を起こす。それはやがて現実の世界の中で影響力を持ち始める。確かな体験として世界に現れるようになる。僕は今魔法を一つ覚えて、それを使いこなそうとして必死になっている。
世界中見渡してみれば、誰も関わろうとせずに放置されてしまっていることが山のようにある。それらは全て、奇跡への可能性である。この世界は奇跡への可能性で溢れているのだ。何で今までその事に気付かなかったんだろう。深刻になって、絶望するふりをする事で、そのことから目を逸らしていたんだ。馬鹿だよなあ。アホだよなあ。何カッコつけてるんだろうなあ。人生なんて、楽勝じゃないか。世界中が僕のことを求めているじゃないか。
自ら見つけ出すんだ。自ら探し出すんだ。自ら生み出すんだ。それくらい世界は可能性に溢れている。奇跡の種で溢れている。あそこにもここにも、あっちにもこっちにも、人生一回きりでは足りない程の、世界は奇跡の可能性で溢れているのだ。さっきから同じことをずっと書き続けている。バカのひとつ覚えも良いところだ。しかし今は、そのことを書かずにはいられないのだ。僕は今僕の中に芽生えた奇跡の目の萌芽に、これ以上ない程の興奮と喜びと幸せを感じている。世界が輝き始めている。ついに来た。真っ白な光の世界。
全ての始まりはやはり、東海道線の最終列車、僕はゲロを吐いたお兄さんにただ一人関わろうとするおじさんにひどく勇気づけられ、お兄さんの吐いたゲロをこの上なく愛おしい気持ちで、この上なく幸せな気持ちで掃除したんだ。あんな体験は生まれてはじめてのことだった。そしてその中に僕が生きてく上での全てと言っても良いものが詰まっていた。僕は今ギターを取り出し、ありふれた日常にあふれた奇跡を歌う。
あらゆる行動がそうだったとしたら、人生の全ての解釈もまた、ひっくり返ってくる。僕は僕が関わる事でしか起こすことのできない現実を様々に創作して来たんだ。NVCのワークショップの中で、2日目のワークに遅刻して行って、曲をつくって披露した。彼こそは実践者だ、と承認をその時は頂いたけれど、確かに僕はあの時、僕が関わろうとしなければ起こすことのできない奇跡を起こしていた。それは世界にとっても僕にとってもとてつもないことだったのだ。今もこうして記憶の中で僕に何かを語りかけてくる。風が何かを伝えたがっている。
どりさんというシンガーソングライターの人と、ピアノでその時にセッションした。癒しの共鳴が起きていた。その空間は音に包まれて、場の中心に渦ができて、音楽の真ん中で宇宙が呼吸していた。地球はそっと手を取りダンスを始めて、聴いたこともないようなメロディーで僕の嘘と君の本当を木っ端微塵にして打ち砕き、ただありのままの僕と、ありのままの君を世界に言葉で表していた。
チャンスは、日常の至る所にありふれている。そして、僕はこれまでの人生でもそのチャンスをいくつも掴み続けて来たんだ。そのことは忘れてはならない。そして最後には、忘れなければならない。ひとつひとつの記憶を辿ってみよう。ひとつひとつの記憶を、バラバラに散らかった記憶を片付ける旅に出かけよう。
横浜国立大学に入学した僕は、パラ・ハングライダー部に入部した。空を飛ぶ、シンプルなその競技に、心惹かれた。受付の先輩の印象も素朴で、親近感が湧いて、ますます興味を持った。僕は空が好きだった。そして僕は、空を飛びたかったのだ。
新入生歓迎会で、多摩川あたりの河川敷で、体験会に参加した時の風景がなぜか頭の中を掠めていく。僕はあの時、何を見ていたのか。空を見ていたのか。それとも、僕の隣を吹き抜けてゆく、この風の匂いにそっと耳をすませていたのだろうか。それとも、いつか君とみたあの流星を思い浮かべて、もう一度君と手を繋いで歩きたいと、1人どうしようもなく恋焦がれるような気持ちになっていたのだろうか。
僕は体験会の中で空を飛んだ。ほんの少し、数メートルも浮かんではいなかったし、数十秒も飛んではいなかったが、その僅かな時の中で、僕は聴いたこともない音楽を雲の放つ水蒸気の中に水の歌を聴いて、いつまでもいつまでも眠りそうになりながら、風の隣で宇宙のダンスを踊り続けていた。
中学生の頃、剣道部に所属したのに、練習に行くのが嫌で、サボってひとりマンションの影で、ひたすらにDSでゲームをしていた。あの時間はいったい何だったのだろうか。僕はあの時、いったい何を体験していたのだろうか。僕はあの時、いったい何を見て過ごしていたのだろうか。
DSのその奥に広がる宇宙、コンピュータサイエンス、技術の結晶、情熱の塊にこれでもかというほどに心を奪われてた。これでもかというほどに惹きつけられていた。素直にその気持ちに従っていただけなんだ。僕は罪悪感を感じる必要なんてこれっぽっちもなかった。自分で選んでいたんだ。自分が選ばなければ、関わらなければ開くことのできない扉をあの時たしかに僕は開いていたんだ。ただそれだけのことだったし、ただそれだけのことがどれほど尊いことなのか、僕はもう少し良く見てみる必要がある。意味のないことなど世界にはないのだ。そして、意味のあることもまた世界にはないのだ。全ては、自分が生み出した虚構であり、全ては自らの創作した物語なのだから。
剣道だって大して強くなれなかった。それでも、崇善小学校の体育館に、毎週月木の夜に通った日々は、どうしようもなく僕の宝物だ。高梨先生は真剣に僕に稽古をつけてくれていた。剣道だけに留まることのない、人生の稽古であり、人と人とが、年齢や立場を超えて、真剣に向かい合う瞬間だった。僕はそんな愛を受け取ってきたんだ。そして僕自身もまた、高梨先生に真剣に向き合った。お互いの息が合ってはじめて生まれる奇跡があるんだ。そして最後の最後の大会で僕は、平塚市3位の入賞をおさめた。これはとてつもない出来事だった。僕は嬉しくて、天にも登りそうな気持ちだったんだ。
剣と剣が触れ合う瞬間。その時に生まれる緊張、時間、空間、流れ、時代、人生、歴史、記憶、苦しみ、悲しみ、喜び、幸せ、声、色、音、静寂。あらゆるものがその場所に立ち現れて、あらゆるものがその瞬間を通り過ぎ、あらゆるものが人生を彩ってゆく。世界は不思議で溢れている。世界は僕を愛で包み込んでゆく。
上下も優劣も失敗も成功も戦争も平和も答えも明日も明後日も明明後日も昨日も嘘も本当も誤魔化しも疑いも躊躇いも音楽も記憶も歌も劣等感も人生も言葉も間違いも正しいも楽しいも嬉しいも電車も窓も人間も靴も服も男も女もバックもスマホも駅もアナウスも動物もアメリカもアフリカも日本も東京も電気もガスも水道も後悔も罪悪感も罪も罰も自動販売機も中学生も高校生も大学生も大人も子どももロックンロールもジャズもブルースも民謡も野菜も米もお金も時間も恋愛も木も風も鳥も虫も土も空も家も白も黒も電柱もおじいちゃんもおばあちゃんも髪の毛も弟もいとこもおじさんもおばさんも人種も国も県も市も国境も仕事も遊びも家族も父さんも母さんも愛も温もりも優しさも苦しみも悲しみも嫉妬も劣等感も傷付けたことも空の青も工場も田んぼも畑も大学も受験も数学も国語も物理も化学も歴史も世界史も日本史も現代文も太宰治も坂本龍一も坂本龍馬も坂口恭平も携帯電話も孫正義もリクルートも経営者も社長もお金持ちも貧乏人もストリートチルドレンもインドもカースト制度もカンジーも距離も速さも芝生も金木犀も土星も木星も水星も天童説も地動説も宇宙も地球も電球も無理やり手を繋いだことも相模原も映画もドキュメンタリーも君も僕も車も温泉も旅もインスタもピアノもアルバムも約束も行動もハッタリも友達も親友も橋本も体育祭も文化祭もマナビスもビニールハウスも種もほうれん草も白菜も小松菜も水菜も野球もサッカーもブラジルもチリもサンフランシスコも本も読書もレコードもCDも歯医者も焼肉もハンバーグもライブハウスもコカコーラもペプシもジンジャエールも神社もお寺も高知県もマグロックフェスも写真家もオンラインサロンもニュージーランドもオーストラリアもプロデューサーもミックスエンジニアもタンバリンも優先席も新宿もデザートもデートもクリスマスもプレゼントもお正月もお盆も死ぬことも生きることも病気も癌も給食もコンポストもメガネも教育もオランダもイエナプランスクールも骨も肉も仕組みも枠組みも社会も自然も孔雀の羽も薪風呂もスキー場のリフトもバイトも警備員もリズムも太鼓も先住民も薬も高速道路も工事車両もブルドーザーもサンエス警備も林業も占いもニーヨル食堂も山形も水源地もあらえびすも三宅洋平さんもプロポーズも横浜駅も失恋もポートランドも逗子の海もシェアハウスも葉山ファクトリーも結婚もゆうき食堂もロサンゼルスもドラマーもプロもアマチュアも葬儀屋もネクタイもスーツも飛行機もバスも船もヒッチハイクもキスもサックスもダーウィンもマーケットもバグもドライブも国立民族学博物館も太陽の塔も岡本太郎も万博もオリンピックもアスリートもアスレチックもヒップホップもパンクロックも有機農業も自然農法も幼稚園も保育園も赤ちゃんもやまびこもマンションも虫取り網もカメラも写真集も星野道夫さんもアラスカも熊もオレゴン州もウーバーイーツも吉野家も自転車も世界一周も路上ライブもワンマンライブもオリジナルソングも宮沢賢治も劇団唐組も宗教も殺人も詐欺も闇バイトも裏切りもナポレオンもレオナルドダヴィンチもピカソもモナリザも河合隼雄も調布も昼も夜も朝も太陽も月も星も雨も雪も長野も優勝も準優勝もキャプテンも仮装責任者も囲碁部も吉祥寺も国分寺も武蔵境も日本刀も足ツボも東洋医学も西洋医学も哲学も台所もトラクターも雑草も麻薬も注射器も玄米もヤマト運輸もスクールバスもサンダルも下駄もワックスも心臓も肝臓も肺も血管もメスも血もバイタルもセッションも地層も地下鉄も銀河鉄道もお皿も別荘も小海町も君の名はも新海誠もスパークルもRADWIMPSも小説も文学も医療も科学も技術もバレエもスピーカーもスポーツも漫画も古本も遺伝子組み換えもアニメもジブリも風の谷のナウシカも大統領も総理大臣も戦闘機も核爆弾も原子力発電所もアコムもセコムも山崎パンも浅野屋もリゾバもマッチングアプリもアムウェイも安室奈美恵も積み重ねも積み減らしもダブルスもシングルスもテニスもバドミントンも水泳もバスケも汗も涙も。
全て意味なし。空っぽなんだ。
早く希う
早く希う
乱立する建物は色がある
早く希う
君の名前には色がある
早く希う
記憶の底には色がある
早く希う
明日の隣には色がある
早く希う
笑いを引き込む色がある
早く希う
空の形には色がある
早く希う
土の量には色がある
早く希う
人生のコミットには色がある
早く希う
受け取りました色がある
早く希う
相手の気持ちを色がある
早く希う
相手の言葉を色がある
早く希う
受け取りました色がある
早く希う
後10分で色がある
早く希う
焦っている人色がある
早く希う
色山君元気かな色がある
早く希う
キャンバスは真っ白色がある
早く希う
人生は真っ黒色がある
早く希う
ロックンロール色がある
早く希う
12月よりはマシ色がある
早く希う
風に立つライオン色がある
早く希う
泣き出したくなる色がある
早く希う
あなたなしじゃ成り立たない色がある
早く希う
俺はこの道を突き進んでいこう色がある
早く希う
祈りの讃美歌色がある
早く希う
何もいらない色がある
早く希う
君の幸せ色がある
早く希う
君の出す声色がある
早く希う
君の存在色がある
早く希う
君の名前色がある
早く希う
君の言葉色がある
早く希う
君の中色がある
早く希う
情けなさの中色がある
早く希う
人間てなんだろ色がある
早く希う
捨てる心色がある
早く希う
サヨナラcoler色がある
早く希う
諦めること色がある
早く希う
エンロールのエンドロール色がある
早く希う
風に眠る色がある
早く希う
光と闇を色がある
早く希う
執着生存色がある
早く希う
何も伝えられず色がある
早く希う
生きてるだろうか色がある
早く希う
音楽だろうか色がある
早く希う
共有する色がある
早く希う
起こることのコンテクスト色がある
早く希う
詩を書けば幸せ色がある
早く希う
やり直せるなら色がある
早く希う
天然パーマ色がある
早く希う
深く浅く色がある
早く希う
呼吸する色がある
早く希う
このトキメキを色がある
早く希う
ずっと前から色がある
早く希う
必ず行きます色がある
早く希う
涙のブランコ色がある