ルースターズと福山雅治 楽曲の影に花田裕之さんの影響
福山さんの曲を、新しい視点で聴くシリーズ⑤
今回は福山さんが大ファンであるTHE ROOSTERSについて、メンバーと福山さんの関係性や、コラボレーション楽曲について書いてみようと思います。
THE ROOSTERSは80年代の九州を代表するロックバンド。大江慎也さん、花田裕之さん、井上富雄さん、池畑潤二さんの4人でデビューし、メンバーは後に入れ替りがあります。音楽スタイルとしてはローリングストーンズなどの流れを汲んでおり、初期の勢いあるめんたいビートや、中期のサイケデリック、後期はボーカルが変わり新たなスタイルとなり、ARB同様に幅広い音楽性が魅力です。福山さんは長崎にいた頃から大ファンで、過去にはオールナイトニッポンで『Good Dreams』をカバーしたり、現在でもラジオなどでルースターズの話題がよく出てきます。
ルースターズのメンバーで福山さんと縁が深いのは、ギターの花田裕之さんとベースの井上富雄さんです。まずは花田さんとのコラボレーションを紹介します。
1992年、福山さんの4thアルバム『BOOTS』のラストに収録された『みつめていたい』という曲。実はこの曲に花田さんはギターで参加しています。主にギターソロを担当したようですが、福山さんと二人でアコギを演奏した箇所もあるようです。ライブビデオ『START』では競演シーンも見れます。
その後、福山さんはラジオで『汽車はただ駅を過ぎる』をカバーしたり、雑誌で対談をしたり、交流は続きました。その際に花田さんが自身の楽曲『BONNET』をアコギで即興で作った話をされており、そのきっかけが先程書いた福山さんとのレコーディングでアコギを弾いたことだそうです。
続いてのコラボレーションは1997年、花田裕之さんのシングル『Stupid』です。この曲に福山さんはゲストボーカルで参加し、ジャケット写真も撮影しています。クールなイメージのある花田さんの満面の笑顔に喜びを感じたファンの方も多いのではないでしょうか。
続いては『Stupid』が収録されたアルバム『SONG FOR YOU』です。この作品も福山さんがジャケット写真を撮影しています。全体的に落ち着いた作風で、晴れた午後に散歩でもしながら聴くのにぴったりです。この作品に関わった次の年に福山さんは休止していた音楽活動を再開し、アルバム『SING A SONG』を発表します。ソングライターの原点に返ったこの作品には花田さんの影響は間違いなくあるはずです。花田さんの『SONG FOR YOU』での注目は『雨のバス』という曲。実は聴いたことがある方は多いのではないでしょうか?
2002年に発表された福山さんのカバーアルバム『The Golden Oldies』。6曲目に『雨のバス』のカバーが収録されています。この作品のラインナップを見ると、『青春の影』(チューリップ)、『ファイト!』(中島みゆき)、『飾りじゃないのよ涙は』(中森明菜/井上陽水)、『秋桜』(山口百恵/さだまさし)、『ルビーの指環』(寺尾聰)、『勝手にしやがれ』(沢田研二)など、日本を代表する大ヒットナンバーが収録されています。しかし『雨のバス』はシングルではないですし、大きな宣伝もされていませんでした。すごいのは『雨のバス』がこのラインナップに全く負けていないということです。数々の名曲たちに並んでも全く違和感なく、むしろ日本の音楽史を彩るバラードの名曲として輝きを見せています。福山さんバージョンでは1回目のサビに入るタイミングが早くなっており、これはカバーアルバム自体がオンエア時間が限られたテレビ番組の企画から始まった影響もあったのでしょうか。
『雨のバス』はメロディもキャッチーで美しく、とても親しみやすい楽曲だと感じます。花田さんのソングライティングの魅力が多くの方に広まった意味では『The Golden Oldies』は重要な作品と言えます。ちなみに、花田さんもカバーした『ケンとメリー~愛と風のように~』や、サンハウスの『ロックンロールの真最中』もカバーされており、めんたいロックファンにも面白い選曲となっています。
続いてのお二人の接点は、2005年に恵比寿リキッドルームで開催されたスペシャルライブです。雑誌SWITCHの20周年を記念したイベントは、「20th SWITCH Presents SWITCH ON LIVE 福山雅治×SION×東京」として福山さんとSIONさんのコラボライブという企画でした。そのアンコールに、なんと花田さんが参加したのです。二人で『Stupid』を演奏し、最後はSIONさんも一緒に『SORRY BABY』を歌いました。私はラジオで流れた音源しか知りませんが、実際に参加された方が羨ましいくらい素晴らしい演奏でした。福山さんもとても喜んでいましたし、またこんな企画があると良いですね。
福山さんはこの後はドラマや映画などでも忙しくなり、コラボの機会はなくなりましたが、今でもラジオで音楽ルーツを語る際にルースターズの話をしています。福山さんの初期の楽曲は、風や旅をイメージするフレーズがよく出てきました。花田さんのソロの楽曲にもそのようなイメージがあり、たとえば『ALL OR NOTHIN '』のような、風に吹かれたくなるような世界観を福山さんは目指していたのではないかと私は感じました。
続いては、ベース井上富雄さんとの接点を紹介します。
長崎時代の福山さんはルースターズのライブを見に行こうとしたそうですが、やむを得ない事情で中止になってしまったことがあったようです。その際に富雄さんがファンサービスをしに会場に来てくれたそうで、そこで出会ったエピソードが後に語られています。
その後、富雄さんはスタジオ作品では『家路』『無敵のキミ』『ON AND ON 09』などで参加し、ライブには2009年の武道館と道標ツアーに参加されています。元々大ファンだった福山さんはインタビューで「富雄さんとやるならルースターズの曲をやりたい」と語るほど嬉しかったようです。
ちなみにドラムの池畑さんとも間接的にセッションがあります。石橋凌さんのソロアルバム『表現者』のボーナスCDに収録された『AFTER'45』に福山さんがギターで参加しましたが、このテイクのドラムは池畑さんです。石橋さんに池畑さんに福山さんに藤井一彦さんも参加していますし、今思えばびっくりするくらい豪華な演奏陣です!
ルースターズと福山さんの共通点ですが、生粋のソングライターが作る楽曲という印象を感じました。大江さんの歌詞は自己告白とも言える壮大な世界観ですし、花田さんの楽曲のメロディラインからも、花田さんの人となりが見えてくる気がします。ルースターズは大江さんと花田さんが作詞作曲ボーカルをするイメージですが、実は井上富雄さんもBlue Tonicというバントでボーカルを担当し、後にソロアルバムも出しています。ソロの作品を聴けば、メロディアスな楽曲に富雄さんのあまい歌声がマッチし、バンドのソロ活動でなく、表現者としてのシンガーソングライターのアルバムだと実感できるはずです。大江さんも近年一人で弾き語る動画をYouTubeにアップされていますし、花田さんも弾き語りでの活動も多いです。演奏者としてはもちろん、最強のシンガーソングライターが集結したのがルースターズだったのかもしれません。それを支える池畑さんの作曲する曲もとてもかっこ良いです。
そう考えると、福山さんはかつてバンドのギタリストとしてデビューしたかったそうですが、もしそうなっていたとしても最終的にはシンガーソングライターにたどり着いていた気がしました。いつかまたルースターズのカバーも楽しみにしたいです。
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