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「Finatext出身のエンジニアはみんな優秀」と言われるような会社にしたい - CTO/CISO田島インタビュー

2022年6月22日、Finatextホールディングスの取締役CTO/CISO(最高技術責任者/最高情報セキュリティ責任者)に田島悟史が就任しました。

田島さんは2019年の入社から現在に至るまで、Finatextグループのエンジニア組織を強くするための多種多様な取り組みを行ってきました。今回は、就任間もない田島さんにインタビューを実施。Finatextグループにジョインした経緯やこれまでやってきたこと、これから取り組んでいくことについて、たっぷり語っていただきました!

田島悟史(たじま さとし)
株式会社Finatextホールディングス 取締役CTO/CISO

新卒でVOYAGE GROUP(現 CARTA HOLDINGS)に入社し、システム本部にて全社のインフラを全般的に担当した後、セキュリティチームの立ち上げを経験。2019年2月にFinatextに入社し、プラットフォームチームのリードエンジニアとしてグループ全体のシステムおよびセキュリティ体制の構築・運用を牽引。2022年6月、Finatextホールディングスの取締役CTO/CISOに就任。CISSP/OSCP/OSWE保有。
Twitter:@s_tajima

マルチプロダクトの経験が活かせる、クラウドネイティブなフィンテック企業を指向

– これまでカンファレンスやエンジニア勉強会での登壇、パートナーからのインタビュー記事などでお話をうかがう機会は幾度となくありましたが、実は当社が田島さんにインタビューするのは今回が初めてです!改めて、田島さんのキャリアや現在までの取り組み、今後の目標などをうかがいたいです。まずはFinatextに転職した理由から教えてください。

前回の転職活動時に、企業選びにおいて重視していた要素がいくつかあります。1つ目は、フィンテック系の企業であること。正直これは「フィンテック系が面白そう」という直感に過ぎなかったのですが、転職エージェントから紹介されたいくつかの企業のうちの1つが、Finatextでした。

フィンテック系では単一のプロダクトのみを扱う企業が多いですが、Finatextはマルチプロダクトを扱う会社です。私は以前、同様にマルチプロダクトのVOYAGE GROUP(現 CARTA HOLDINGS)で働いていたのですが、その環境で得た知見やノウハウをFinatextでも活かせそうだと感じました。

また、Finatextは当時からコンテナやサーバーレスなどの技術を積極的に採用しており、すでにクラウドネイティブな環境の礎ができていました。この会社ならば、技術的なチャレンジもできると思いました。

もう1つは、業務で英語を使うことです。2019年当時の私は全く英語が話せなかったのですが、次の職場では業務を通して英語スキルを向上させたいという思いがありました。とはいえ、いきなり英語が公用語の企業に転職するのはハードルが高いです。

Finatextは海外にグループ会社があり、現地のチームとコミュニケーションをとる機会があるため、仕事のなかで“ほどよく”英語を使えるのが魅力的でした。加えて、Finatextは業務上必要があれば、無料かつ業務時間中にネイティブの教師から英会話レッスンを受けることができます。しかも、教師がテクノロジーに明るいため、実践的な英語を学べます。これらの要素が自分のキャリアにとってプラスになると感じ、入社を決めました。

– 田島さんが入社した頃のFinatextは、企業としてどのようなフェーズでしたか?

Finatextはもともと、投資教育やデモトレードなどのアプリをパートナー企業向けに開発している企業でした。当時は大手金融機関とのプロジェクトを次々と成功させ、信頼と実績を積み重ねていました。開発プロジェクトのバリエーションも徐々に広がり、金融の基幹システムと連携するアプリも手掛けるようになっていました。

具体的には、証券ビジネスプラットフォーム「BaaS(バース):Brokerage as a Service」がすでにできており、その上で動くコミュニティ型株取引アプリ「STREAM(ストリーム)」がローンチされていました。そして、「STREAM」の次のサービスを構想していたのに加えて、クレディセゾン社との共同プロジェクトである、つみたて投資サービスの「セゾンポケット」の開発にも着手していました。

チーム制を導入し、技術的な車輪の再発明を防ぐためにプラットフォームチームを立ち上げ

– 田島さんが過去に執筆した「Platform Teamとしての上場までの約3年を振り返る」というブログ記事では、「入社した当時、会社には明確な “部署やチーム” という概念が存在していなかった」と記載されていました。当時はなぜ、そのようなやり方をしていたのでしょうか?それで開発に影響はなかったのですか?

先ほどお話ししたように、今でこそFinatextは金融プラットフォームの開発が中心ですが、創業してしばらくは、システムの複雑度があまり高くない、プロジェクト規模の小さいアプリを作っていました。一時的なチームを作って、プロジェクトが終わると解散する方法でも問題が起きなかったんです。そのため、「部署やチームを適切に組成・運営しなければならない」という課題意識がありませんでした。

しかし、私が入社した頃には、金融の基幹システムと連携するアプリを作るようになっており、システムがそれなりに複雑化してプロジェクトの規模も大きくなっていくだろうと容易に想像できました。旧来のやり方のままだと、いずれ体制が破綻してしまいます。当時の私は強い危機感を抱き、チーム制の導入やプラットフォームチームの立ち上げについて他のエンジニアたちに提案しました。その頃の取り組みの詳細については、先ほど挙げたブログ記事の「Platform Teamとしての上場までの約3年を振り返る」に記述しています。

当時の開発体制で、印象に残っている出来事があります。チーム制を導入する前は、一日の終わりに全エンジニアが参加する夕会をやっていたんです。このミーティングでは各エンジニアがその日の作業内容を発表するのですが、仮に1人が数分だけ話すとしても、エンジニアが数十名になればミーティングの所要時間が1時間を超えてしまいます。

これでは、情報連携に時間がかかるわりに共有される情報の内容は浅くなり、開発の効率が悪くなってしまいます。開発組織が少人数のうちは問題がなかった制度であっても、人数が増えると問題が出てくるという例ですね。こういったさまざまな問題の解消のためにも、チーム制を導入することで作業効率の向上やコミュニケーションの活性化を図り、チーム内でのコラボレーションを促進したいと考えていました。

– もう一つの取り組みであるプラットフォームチームの立ち上げは、なぜ実施したのですか?

プラットフォームチームの役割は、複数のプロダクトやチームで共通して必要になる基盤を整備することです。チーム制の導入によって生じるマイナスの要素を軽減したいという思いから、プラットフォームチームを立ち上げました。

– チーム制の導入は、プラスの面だけではなくマイナスの面もあるということでしょうか?

チーム制を敷くと、チーム内でのコミュニケーションは密になるものの、チームをまたいだコミュニケーションの頻度は減ります。それにより、各チームが同じような機能を重複して開発するという、技術的な車輪の再発明が加速するだろうと予測しました。

その事態を防ぐには、各プロダクトやチームを横軸で見て、複数のプロジェクトで共通して必要になるシステムやツールを作るメンバーがいるほうがいい。その発想のもとに、プラットフォームチームを組成しました。

他の人の学びを自分の学びにできる環境を、実現し続けたい

– より良い開発組織を実現するための方法を、田島さんは常に考えてきたのですね!

そうですね。それに関連した話をすると、エンジニアが成長できる環境を構築することも考え続けてきました。現在、社会全体でエンジニアが不足しています。限られた数のエンジニアを、企業各社が奪い合っている状況です。この社会課題を根本的に解決するには、プロダクトを作るスキルを持ったエンジニアを増やさなければなりません。

この考えには、私の前職の環境が大きく影響しています。VOYAGE GROUPにはエンジニアが成長しやすい環境が整っており、その環境で働いたおかげで私は一定以上のスキルに到達できたと思っています。周囲に優秀なメンバーも多かったですし、そうしたエンジニアたちのアウトプットを目にしたり、技術的なディスカッションをしたりする機会も数多くありました。

– なるほど。そのような学びの機会を、ここFinatextでも創出していきたいと。具体的にどのような取り組みをしてきたのでしょうか?

エンジニアが成長するためには「他の人の学びを、自分の学びにすること」が大事です。例えば、他のエンジニアが書いたコードや試行錯誤した形跡、失敗した事例などをたくさん見ることで、成長のための知見を得ることができます。

その体制を実現するために、もともとは3つに分割されていたGitHubのOrganizationを1つに統合して、エンジニアが他のプロジェクトの情報を閲覧できるようにしたり、Slack上でエンジニアたちが情報交換できる雰囲気を醸成したりと、数々の取り組みをしてきました。前者の施策についてはブログ記事「3つのGitHub Orgを1つに統合した話」で解説しています。

私がFinatextに入社したばかりの頃と比べると、現在はすべてのメンバーが成長してくれて、頼りがいのある仲間になっていると感じています。今後どれほど会社が大きくなっていっても、全員が他の人から良い刺激を受けて、成長が促進される組織であり続けたいです。

セキュリティの堅牢さと生産性の高さを両立させる

– 他に、エンジニアが成長できる環境作りのために取り組んできたことはありますか?

一般的に、金融領域におけるプロダクト開発は、エンジニアの権限をガチガチに制限してセキュリティを担保するケースが多いです。しかし、この方法は開発の生産性を著しく下げますし、エンジニアの成長機会も奪ってしまいます。1か月に10回のリリースができる環境と、1か月に1回しかリリースできない環境とでは、学びの量に10倍の差がついてしまうので。

そのため私たちは基本方針として「IAMの権限を厳しくし、保有する人を極度に限定して安全性を高める」のではなく「権限は付与するが、本当にリスクの高い操作はできない、もしくはすぐにリスクに気づくことができ、ログを確実に追うことができる」状態を目指してきました。

これは、近年AWSが提唱している「ガードレール」の考え方を参考にしています。この方針により、堅牢なセキュリティを実現しつつ、一人ひとりのエンジニアがなるべく高い権限を持って開発に取り組める環境を構築してきました。その結果、開発生産性を下げることなくエンジニアの学びの機会を創出できていると思います。

この取り組みについては、ブログ記事の「FinatextにおけるAWSのガードレール戦略の紹介」でも解説しています。これは私見ですが、セキュリティエンジニアの腕の見せ所は、「いかにして高いセキュリティを保ちつつ、生産性が高く自由に仕事ができる環境を作れるか」だと考えています。

– セキュリティエンジニアの強力なバックアップがあるにせよ、高い権限を持つエンジニアには一定以上のセキュリティレベルが求められる気がしますが、Finatextのエンジニアがセキュリティの知識を身につけられるように実施していることはありますか?

Finatextは一般的なIT企業と比較して、脆弱性診断やペネトレーションテストに多額の投資をしています。いずれのプロダクトもリリース前にセキュリティチェックを実施するため、その経験を通じてFinatextのエンジニアはセキュリティについても専門性の高い知識を身につけることができます。

また、他の企業にはないFinatext特有の強みとして、私自身がOSCP(Offensive Security Certified Professional)やOSWE(Offensive Security Web Expert)などの、ペネトレーションテストを実施するための資格を持っていることが挙げられるかもしれません。システム内部の仕組みやビジネスコンテクストを理解した上で脆弱性診断を実施するため、エンジニアに対してより適切なフィードバックを返すことができます。

– それはとても頼もしいですね!他に、エンジニアの成長において重視していることはありますか?

Finatextでは、エンジニアが担当する領域を限定せず、フロントエンドからサーバーサイド、インフラまで幅広い領域を担うようにしています。さらに、開発から運用・サポートまで含めたサービスのライフサイクルのすべてを担うことを重視しています。これは一般的に、フルサイクルデベロップメントストリームアラインドチームと呼ばれる取り組みです。

もしも、エンジニアが特定領域の技術しか知らなければ、問題解決のための選択肢が非常に狭まってしまいます。例えばサービスのパフォーマンス改善をする場合に、サーバーサイドのことしかわからないエンジニアだと「CDNを導入すればいい」といった答えにはたどり着けません。複数のレイヤーの知識を備えることで、最適な問題解決の手段を選ぶことができます。そして、それがエンジニアのキャリアを豊かにすることにもつながると考えています。

「Finatextで働けば、エンジニアが圧倒的に成長できる」という会社にしたい

– これまでの取り組みについてうかがったので、いよいよ取締役CTO/CISO就任というテーマにも触れたいです。まず、CTOだけではなくCISOも兼務するのはどのような意図があるのでしょうか?

先ほどの話にも通じますが、セキュリティについての深い知見を持っていることは、私のスキルセットの大きな特徴です。このスキルセットを生かして実現してきた現在のセキュリティ体制を事業が拡大しても維持・強化していくために、CISOを兼務することにしました。加えて、Finatextは金融プラットフォームを扱っているからこそ全社的にセキュリティを重視しているということを、CISOという立場から積極的に対外発信していきたいと考えています。

– その方針のもと、今後もさらに良い開発組織を目指したいですね。エンジニア採用も加速していきますが、どのようなマインドの人がFinatextにはマッチすると思いますか?

Finatextのプリンシプル(我々が大切にしている価値観)には、Jibungoto(じぶんごと)というフレーズが含まれています。その言葉が示すとおり、Finatextには主体性を持って仕事をするメンバーがとても多いと感じています。また、自分の担当領域に固執することなく、事業全体を良くするために手を挙げる姿勢を持ったメンバーも多いです。そういった姿勢で仕事をする人には、きっとマッチする職場だと思います。

また、一般的な企業では、エンジニアは技術のことに興味はあるものの、ビジネスや経営のことにはあまり関心を抱かないケースが多いと思います。ですがFinatextではエンジニアがビジネスや経営にも積極的にコミットメントしており、経営方針を決める任意参加のミーティングにおいて、参加者の過半数がエンジニアということもよくあります。

実は、Finatextは2020年にプリンシプルのアップデートを行ったのですが、その内容を策定する際にも過半数をエンジニアとする体制でミーティングを実施し、数か月にわたる議論を経て決めていきました。
(参考記事「 Finatextがビジョン/ミッションからカルチャーをアップデートするまでの全容」)

– 技術だけではなくビジネスや経営にも携わりたい、そしてエンジニアとしても成長したい人にとって良い環境ですね。では最後に、今後の意気込みをお願いします!

「Finatext出身のエンジニアはどこの会社に行っても通用するし、どの企業もFinatext出身のエンジニアを奪い合う」という未来を実現したいと本気で思っています。他のどんなIT企業よりもエンジニアが成長できる環境を、私たちの力で構築していきますので、ぜひご期待ください!

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ライター: 中薗昴( @zono1009
編集  : 宮川歩( @ayumiya_live


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