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クオンツアナリストが、なぜデータ分析会社へ?金融×エンジニアリングで切り拓くキャリア

こんにちは。Finatextホールディングス 広報担当、ミヤカワです。

Finatextグループのメンバーを紹介していく社員インタビュー。クオンツアナリストだった前職を経て、現在は株式会社ナウキャストでデータエンジニア/データサイエンティストとして活躍する宮崎文吾さんにお話をうかがいました!

宮崎文吾 - 株会社ナウキャスト データエンジニア/サイエンティスト
東京大学大学院工学系研究科にて、株式市場における注文データの統計的分析や、そのモデル化について研究。新卒で日本最大級の資産運用会社に入社し、クオンツアナリストとして機械学習を用いた投資手法や運用支援システムの研究開発等に従事。2020年8月にナウキャストに入社し、クレジットカード決済データをはじめとするオルタナティブデータの分析とプロダクト開発を担当。

機械学習技術を駆使するクオンツアナリストへの転身

– 本日はよろしくお願いします!前職は大手資産運用会社にいたとのことですが、入社の経緯やこれまでのキャリアをお伺いしてもよいでしょうか。

私が学生時代に所属していた研究室に、社会人博士でファンドマネージャーをされている方がいまして、その方がきっかけでファンドマネージャーという仕事に興味を持ちました。当時はクオンツではなくジャッジメンタル運用の志望でした。

資産運用会社に入社して、最初はアドバイザリー運用部という部署の配属となり、外部委託運用を行う投資信託の運用オペレーションやディスクロージャー作成などを担当しました。2年が経ち、ジョブローテーションで公共法人営業部に異動となり、1年間、公的年金基金に対する営業を行いました。

– 運用と営業を経験されているんですね。そこからどのようにしてクオンツアナリストに?

入社2年目の時、機械学習などの技術を運用業務に活用するための研究組織が社内に設立されたのです。学生時代、機械学習を研究に採り入れていたこともあり、設立の話を聞いて機械学習技術への熱が再燃しまして。社内公募制度を利用して異動を願い出た結果、入社4年目からそのラボでクオンツアナリストとして働くことになったのです。そこでは主に、機械学習の運用業務への応用に関する研究・開発をしていました。

– 機械学習の応用というのは具体的にどんなものなのか、差し支えない範囲で教えていただけますでしょうか。

プロジェクトの一つとして、日本株の運用モデルの作成がありました。投資に活用するファクターというのは色々ありまして、従来のクオンツではその選定や調整を人間がやっていましたが、機械学習技術を使い、有効そうなファクターを自動的に計算して導き出すモデルを作っていました。既存のクオンツ手法では数個のファクターを扱う程度でしたが、こうしたモデルを活用すれば、より多くのファクターから非線形の効果を発見し、どの銘柄が良いかをスコア化することができます。

– なるほど。作成したモデルを使って実際に運用をするのですか?それとも基礎研究的な性格が強いのでしょうか。

両方ありましたね。運用への活用は意識せずに学会発表を目標とした研究業務もありましたし、自分で分析してモデルを作り、バックテストでモデルの有効性が確認できたら、運用部に提案して活用してもらうといったものもありました。

経験を活かしつつ、クオンツではできないことをやる

– クオンツとして活躍されていた宮崎さんが、転職を考えたきっかけは何だったんですか?

クオンツとしてマーケットデータを分析しアルファを追求したりファンドマネージャーのサポートをすることにもやりがいを感じていましたが、それ以上に様々なデータソースからデータを抽出し、複雑な処理を行った上で求められるアウトプットを生成するような仕組みづくり自体に、より興味を持つようになりました。当時は、自分で書いたものを自分で使って完結していたので、とりあえず動けばそれでよかったのです。正直、月に1度しか動かさないようなものは、手で動かしていましたし、それが周りでも当然として扱われていたように思います。そうではなくて、より効率的に綺麗に動くものを作りたい、作れるだけの力を持ったエンジニアを目指したいと思うようになり、転職を考えました。

– 前職の環境ではその目標を追いかけるのは難しかったのですね。

そうですね。クオンツアナリストとして優秀な人はいっぱいいましたが、エンジニアリングは専門外という方がほとんどでしたので、私が目指したい姿、力を付けていきたい分野とは異なっていました。エンジニアリングの知見を豊富に持っている人たちと働き、レビューなども経ながら力をつけていきたいという思いが強くなってきました。

– 実際の転職活動についてお聞きしますが、元々ナウキャストは知っていましたか?

学生時代、担当教授がよく名前を口にしていましたので、ナウキャストや「日経CPINow(※)」のことは以前から知っていました。といっても当時は「大学の先生がやっているプロジェクト」くらいの認識で、どういう会社かまでは把握していなかったです。

※「日経CPINow
ナウキャストが提供している、日経POSデータを原データとする日次物価指数。ナウキャスト創業者で現・技術顧問の東京大学 渡辺努教授の研究室が開発した「東大日次物価指数」が前身。

– そうなんですね。転職先として考えるようになったきっかけは何だったのでしょうか?

転職時に重視していた軸が2つありました。今までの経験を活かして貢献できることと、今まで経験してこなかったような成長領域があること。前者が金融分野、後者がエンジニアリング領域だったので、「金融×エンジニアリング」のポジションを探していたら、ナウキャストという社名に出くわしたのです。そこで、「ああそういえば!」と。

改めて会社のことを調べていくうちに、ナウキャストの顧客属性に私の前職のような資産運用会社も含まれていることを知りました。特にクオンツファンドがどんなデータを気にするかは十分に理解しているつもりでしたので、そうした顧客視点を開発に活かして貢献ができるのではと。また、インタビュー記事などを通して、データパイプライン構築などの具体的な業務内容やコンペでの実績を知り、自分が力をつけたい分野にマッチしていると感じました。

– 運命的なものを感じますね。ちなみに、同じ軸に合致した会社は他にもあったんでしょうか。

実はもう一社、金融×AIのベンチャー企業があり、そちらも受けていました。ただ、そちらの会社は機械学習のバックグラウンドがある人を探しており、どちらかというと前職の業務に近いことをするような印象があったのです。エンジニアリングという意味でも、より力を磨けそうだと感じたのはナウキャストのほうでした。

そして最後に背中を押してくれたのは、代表の林さんです。とてもエネルギーに満ちあふれていて、話しているとこちらも明るい気持ちになるような方でした。転職活動時の私にとって、大企業からベンチャーに行くことに全く不安がなかったかと言えば嘘になります。ですが、「君は若いし優秀だから、入社してもしうちが合わなかったとしても、いくらでも他の会社に行けると思う。だからとりあえず来てみたら?」と言ってもらえて、踏ん切りがつきました。

データを常に疑ってかかる姿勢、都合よく扱わない意識

– ナウキャストでの宮崎さんの業務内容を教えてください。

機関投資家向けに、クレジットカードの決済データの分析をしています。生のデータを分析し、データのクオリティを改善するために必要な処理を特定した後、その処理を自動化し、顧客に安定的に届けられるようなデータパイプラインを構築するまでが主な仕事です。

– データのクオリティを改善するというのは、具体的にはどういうことを指すのでしょうか?

元となるクレジットカードの決済データそれ自体は、投資活用を目的として作られているものではありません。ですので、たとえば過去の一定期間のデータが欠損している場合は、活用時に支障を来たさないための処理が必要となります。しかも、欠損はあらかじめ分かっていないことが多いので、まずそこから見つけないといけません。けっこう泥臭い作業です。あとは、データにバイアスがかかっている可能性もあるので、そこにも注意が必要ですね。

– データのバイアスとは、例えばどんなものですか?具体的に教えてください。

お客様にもよくご説明している例なのですが、たとえば、路面店とオンラインショップで商品を販売しているアパレルブランドがあるとします。路面店での支払いは現金もしくはカードですが、オンラインでの決済はほぼカードが中心。その結果、路面店とオンラインショップの売上比率が9:1だったとしても、カード売上だけで見ると8:2くらいになります。その上で、コロナ禍のような外的要因により路面店利用が減ってオンライン利用が増えたとすると、カード売上の成長率は不当に高く見えることになってしまうのです。それを踏まえた上で、適切に補正しなくては信頼できるデータとは言えません。これは分かりやすい例ですが、実際にはもっと分かりにくいバイアスが潜んでいることもあります。

– なるほど。バイアスにとらわれないためにはどうすればよいのでしょうか。

私が普段から意識しているのは、人からもらったデータを信用しないことです。データ提供元の会社に対しても、途中で別のチームが介在して一次加工したデータに対しても、データに対しては常に疑ってかかることが重要だと思っています。それは決してネガティブな意味ではなく、データを扱う仕事をする立場には求められるべき素養です。ただ、少々難しいところもありまして、データの精度を上げれば上げるほどよいかと言われると、そうとも言い切れない部分もあります。

– え、そうなんですね。それはどういった理由からですか?

クレジットカードの例で言えば、私たちが加工したデータの予測精度を計るために、企業が開示している値の成長率などと比較することがあります。ご存知の通り、クレジットカードにも色々な種類があって、なぜか特定のユーザー属性のデータを除くと予測精度が高まる、といったことが起きるのです。ただ、そのユーザー属性を除く理由をきちんと説明できない限り、精度が上がるからといって、恣意的にデータをいじることは過去データへのオーバーフィッティングとなり許されません。あくまで合理的な手法で、精度を上げる必要があるのです。

これはクオンツアナリストの仕事にも共通していて、予測モデルを作る際、あくまで当時利用可能だったデータのみで行わないといけません。当時知り得ないはずのデータをモデルに組み込んで予測精度が高まったとしても、それは再現性のないものであり、データを先読みしてしまうカンニング行為と同じです。クオンツアナリストは、自分で作ったモデルを自分でバックテストし、そのモデルが過去にどういうパフォーマンスになるかをチェックします。本当にその時点で利用可能だったのかというのを常に気にするため、自然とデータの先読みやカンニングに対する感覚・意識が鋭くなります。ここに関しては、クオンツならではの知見というか、まさに前職での経験が活きるところだと感じています。

エンジニアリングで広がった世界とナウキャストの魅力

– 入社の軸として挙げていた新しいことへのチャレンジは、できていますか?

入社時点で経験はないに等しかったのですが、Web開発を色々とやらせてもらっています。

主担当の業務をきちんと遂行することは大前提なのですが、一方で社内にはさまざまな課題があって、それを解決するために必要なら、未経験でも色々なことに積極的に挑戦できます。たとえば、全社で共通して利用しているデータの伝送システムには、どの顧客に何を伝送しているのか分かりづらいという課題がありました。そこで手を挙げ、伝送設定の簡単な検索システムを他のエンジニアと一緒に作ることになり、フロントエンド開発をスクラッチで行いました。

最近の話だと、「AlternaData」という当社独自の投資分析プラットフォームがありまして、これは我々が顧客にデータを提供する手段の一つで、BIツールのように直感的かつ高い自由度でデータを扱うためのサービスなのですが、そのバックエンド開発に挑戦しています。

– 次々と挑戦されていますね!がっつりとエンジニアリングに触れてみた感想をお伺いしたいです。

自分がやりたかったモノづくりに近づけている感覚があります。自分で調べればだいたいできると思えるようになってきたというか、これまで触ったことのないものや見たことのないようなものでも、作れるだろうという自信がついてきました。もちろんFinatextグループにいる専門的なエンジニアたちにはまだまだ及ばないところはありますが。

– 凄まじいスピードで成長されていますね。さらに質問ですが、前職時代と比べて、エンジニアリングスキル以外で変化したと感じるものはありますか?

仕事をする上で関係部署の利害調整が大変だ、という話は大企業あるあるだと思うのですが、前職時代の私はそういう時に簡単に諦めることが多かったように思います。先日、前職の同僚たちと飲んだのですが、相変わらず大変だという話を聞きながら、「今の環境であれば、自分だったら積極的に前に出て推進するだろうな」と思っている自分に気づきました。きっとナウキャストで働くうちに変わったのだと思います。ナウキャストでのこの2年間、「これを誰に根回ししておかないと」なんて考えたことがなく、自分が最善と考えることを皆で前向きに議論して進めることが当たり前だったので。

– スキル面でもそれ以外でも、これまでにない経験を積んでいるということですね。ありがとうございます。最後にプライベートの話なのですが、最近料理にはまっているとか。

そうですね。昨年の結婚を機に、料理をすることが増えたのです。結婚記念に大学の同級生からホットプレートをもらいまして。それを使ってチャーハンをよく作っています。ホットプレートを使うと、洗い物が少なくなる点がよいですね。

– イメージ的には、料理にもすごくこだわってそうですね。

いや、仕事は丁寧にやるんですが、料理は雑だったりします。調味料の量とか適当な感じで。でも強いて言うなら、チャーハンの作り方は改良しているかもしれません。以前は卵をボウルで解いてから入れていたのですが、ホットプレートに直接割り入れ、炒めながら混ぜればいいと最近気づきました。そうすれば、ボウルも洗わなくてよくなるので。

– 少し合理的なところは、宮崎さんらしいですね(笑)。改めてお時間ありがとうございました。

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