母の名は。 第12回・ワセシロとトヨシロ
何回目までいくんだ「母の名は。」
今日は
「ワセシロ」と「トヨシロ」
ふたりのシロ
について知ってみよう。
なじみがない名前?
知らずに食べたことあるかもよ?
伯爵
まずは「ワセシロ」
画像提供:日本いも類研究会
母:「根系7号」
父:「北海39号」(「オオジロ」×「96-56」)
まあ、あんまりぴんと来ないと思うんですが
系譜図を見ると
両親ともに「農林1号」の血を受け継いでいる。
「農林1号」については別途取り上げたいのだが、
男爵のお子さんです。
父方祖母のオオジロなんかは、男爵×男爵の子「農林1号」から生まれているので、罪深いわね(芋にそんな概念はない)
なので、ワセシロも男爵の遺伝子が25%ほど。
1974年北海道の優良品種として採用、登録
熟期が早いから【早生(わせ)】⇒ワセ
早稲田の早稲みたいなね、はやく収穫できる作物を「早生」という。
いもが白いことから【白】⇒シロ
よって「ワセシロ」と命名された。
別名として「伯爵」と呼ばれることがある。
これは、
「男爵薯」より肌が白く、多収、つまり男爵よりすごーいという意味から、
育成者が出した品種名の候補だった。
が、農林省で行われた品種名の審査の際に
「いまさら爵位をくれる必要もあるまい、それに男爵と伯爵とどちらが偉いか、今の人にはピンと来ないだろう」という意見があり、
「ワセシロ」に落ち着いたとのことだ。
伯爵は男爵よりも2階級高い。
うん、別にピンと来ないね。
ワセシロを使ったじゃがいも焼酎は「伯爵」の名前で販売されているし、
ふるさと納税の返礼品にもなっている。
「ネオ男爵」とか「キング伯爵」とかなんとかこうすごい感じを出したそうな呼び名もあるようだ。
登場後たちまち人気品種となったが、現在北海道では作付面積は減少傾向。むしろ、北海道外の方が多いらしい。
ジャガイモシストセンチュウには感受性だからね……。
新じゃがといえばニシユタカなんですよ!
という話をしたが
「北海道産の新じゃが」といえば、
このワセシロのことらしい。
新じゃがを売りにした商品の原料となっている。
原料って
具体的には?
油との相性が非常に良いので、
ポテトチップやフライドポテトですね!
シロといいながら、お花は濃い青紫色で咲く。
中身だけでなく皮も白っぽい。
表面はなめらかで、目はやや深めですが数が多くないので、皮むきは楽。
お料理については、
シネマ芋先輩が
芋研ゼミマガジンで記事を書いているぞ。
煮てみてもうまみはさほど感じずあっさりしているのだが、
その分味付けの濃い料理の邪魔はしないし、
油を使うと途端にホクホクと甘くなり、風味が出て美味しくなる不思議。
ワセシロは揚げていこう!
続きまして、
カルビーポテト
「トヨシロ」
画像提供:日本いも類研究会
母:低でんぷんの多収系統「北海19号」
父:塊茎腐敗に強いでんぷん原料用品種「エニワ」
先ほどのワセシロさんとは
血縁関係はございません!名前似てるのにね。
両親の性質的に、でんぷんを弱くしたいのか強くしたいのかどっちやねん!
と思ったが、
エニワ父さんはでんぷん用だけど還元糖含有率が低いため一部はポテトチップ原料としても利用されていたらしい。
ふむ?ふむふむ。
加工試験や貯蔵中の還元糖調査の結果、油加工に好適なことが判明!
1976年に加工原料を主とする食用品種として登録
たくさん収穫できる「豊」の【とよ】
調理しても肉の色が変わらず白いので【しろ】
で「トヨシロ」と命名、同年に北海道および福島県で奨励品種となった。
日本最初の食品加工用を主目的とする品種だ、おめでとう!
第9回で紹介したホッカイコガネの親でもある。
楕円形で、目の数がそれほど多くなく、深くもないので皮は剥きやすい。
ほくほくしつつ煮崩れしにくいので炒め物や煮物などにも使えるのだけど、
ワセシロに引き続き
この芋も
油じゃ油!
油で揚げたときに黒くならない、色が悪くならないというのは
ポテトチップスにはかなりの強みですね~。
ということで
じゃがいもスナック菓子の原料として
大手メーカー・カルビー
トヨシロめちゃめちゃ使ってますのよ。
ポテトチップスもじゃがりこもじゃがポックルもジャガビーも
主力商品はトヨシロですわよ。
カルビーが出しているジャガイモ専門誌『ポテカル』の見出しが
「トヨシロ信仰からの脱却」
とかになるくらい
頼っておりますのよ。
ジャガイモシストセンチュウ抵抗性はないんだけどねーーー
えええええええー
……いや、まあカルビーそんな危険な依存してんのと心配になった方のために
弁護しておくと
トヨシロ一本というわけではない
外国から「スノーデン」導入してるし
「きたひめ」「オホーツクチップ」「スノーマーチ(第2回で紹介)」もポテトチップスに使ってるし
自社で「ぽろしり」「ゆきふたば」「なつがすみ」の開発・育成もしている。
ロングセラーのポテトスナックでも、
使われる品種は変わりゆくのだね。