母の名は。 第9回・ながさき黄金とホッカイコガネ
8回までで特に思い入れのある品種はだいたい語った気がするので、
ここからは実際に私が食べたことのあるじゃがいもを思いつくまま
2種ずつくらいで紹介していきたい。
記事も短くなるはず……さっくりさっくり(言い聞かせ)
今日はながさき黄金とホッカイコガネ
ふたりの「こがね」
なんとなく名前でわかる通り
ホッカイコガネは北海道
ながさき黄金は長崎
という、それぞれじゃがいもの2大生産地で育成された品種である。
長崎がじゃがいもの産地なんて知らなかったって?……すまねえ、そんなら後日語る。
名前にどちらも「こがね」が付くので、
どっちがどういうお芋だっけ?
と私自身が忘れたときのために、この記事を残しておく。
ながさき黄金
一言でいえば
ながさき黄金は
「病気に強いインカのめざめ」
である。
インカのめざめが好きな人にはお勧めの品種だ。
ほら「これについては「ながさき黄金」の回でも触れたい。」って書いてある。
(本人もそんなん書いたの忘れていたけれど)
インカのめざめは、高カロテンで味もすごく良い人気のじゃがいもだが、
収穫量があまり多くなくて
病害に弱いという欠点がある。
じゃあ、おいしさはそのままで、
病害に強くなったら最強じゃね?
その課題を克服したる!
と鳴り物入りで登場したのが「ながさき黄金」なのだ。
ちゃんと、血筋的にもインカだ。
母:西海35号
父:西海33号
……ちょっとそんな鉄人みたいに言われても、わかんないですね
めっちゃ雑に言うと
お母さんが「インカのめざめ」の孫
お父さんは「とうや」と「メイホウ」の子
つまり「インカのめざめ」のひ孫!
うーん、この説明大丈夫か
なんか2倍体とか4倍体とか小難しい話があるんだが私にもまだよくわからん
(とうやについてはまた今度)
2015年に暖地二期作用有望品種として登録された。
特長は、
皮と肉の黄色さも表す通り
カロテノイドの一種「ゼアキサンチン」「ルテイン」を多く含むこと。
カタカナは全然覚えられないが、白内障などの眼病予防への効果が期待される機能性成分らしい。目に効くのか!
病害虫に強く(ジャガイモシストセンチュウ、青枯病)、減農薬栽培も期待できる。
色と味はインカのめざめ並みに良い。
蒸しても煮てもGOOD
一般のじゃがいもよりデンプン含有量が多いため、焼酎の原料にも向いているそうだ。
諫早市民有志らが本格焼酎「Kogane」を商品化した。
日本酒の蔵元「杵の川」で仕込んだ「Kogane」は「ナッツのような香りがする」「優しい甘みで舌触りもなめらか」なんだって。
焼酎にしてもじゃがいもの特徴は残るのか~下戸なのでわからない。
去年は出資者にしかふるまわれていなかったが、そろそろ一般販売もするそうだ。
ラベルデザインが、アンデスの保存食「チューニョ」(凍み芋)をイメージしているという
先祖リスペクトな点が私的に好感ポイントでございます。
ホッカイコガネ
続いて、ホッカイコガネ
スーパーでは「北海こがね」という表記でよく見る。
そのほかにも
細長い形がメークインをイメージさせるのか
私は「黄金メーク」という名前で購入したこともある。
「北海黄金」、「コガネメーク」、「ゴールド」、「ゴールデンメイク」、「コスモメーク」あたりもこのお芋。
母:大手ポテトチップスで大活躍の「トヨシロ」
父:いもが長く還元糖含量が少ない(=揚げに向いてる)「北海51号」
(トヨシロについてもいずれまた……おい、記事を書く順番を間違えたんでないかい)
1981年に登録されたので、ながさき黄金よりだいぶだいぶ先輩ですな。
北海道で育成された初めての
黄肉のフレンチフライ用品種であることから、
地名の一部「ホッカイ」とフライ色の「コガネ」を組み合わせて
「ホッカイコガネ」と命名された。
そうフレンチフライ、つまりフライドポテト用のじゃがいもである。
マツコの知らない世界でもフライドポテトの回で紹介されてたよ。
ホッカイさんは、ここでちょっと苦労をしておりまして
ホッカイコガネが登場した当時、
日本でフレンチフライの原料として栽培されていた「ユキジロ」や
フレンチフライの原料品種として有名な外国から輸入品種「ラセットバーバンク」や「ビンチェ」は
肉が白色だった。
従来、フライドポテトは白が主流だったのだ。
そんな中
黄色い肉のホッカイコガネに対する
加工業界からの風当りはたいそう強かったそうだ。
みんな今までと違うものには抵抗感あるのよね。
黄色、今だったら「おいしそう!」ってなると思うのだけれど。
ウケはよくなかったが運はよかった。
折しも
ユキジロ先輩の種いもの生産力が落ちて作付が急速に減少したこともあり、
ホッカイコガネの作付は次第に広がっていったのだ。
今はカルビーのスナック菓子にもなっている。
本来はフレンチフライ用だが、品質や食味が良いので
生食用として一般家庭にも販売されている。
ヤオコーというスーパーでは「男爵とメークインのいいとこどり!」のような謳い文句だった。
メークインに似た長形で、目が浅くて、煮くずれしにくい。
ながさき黄金よりは、甘みが少なくてじゃがいもらしいじゃがいもなので、
「なんかインカっぽやつに黄金って名前付いていたな~」くらいのあいまい記憶だと
インカのめざめを期待してホッカイコガネを買ってしまい
両方見た目も黄色いお芋だけに、
食べてからこんなはずでは……としょんぼりする不幸な事故が起きるかもしれない。
それはお芋に失礼だから
インカは長崎
フライは北海
引火長すぎホッケフライ
(受験生的語呂暗記)
さらなるこがね
ちなみに
名前に「こがね」が付くじゃがいもはまだある
「十勝こがね」
と
その子供
「こがね丸」
ふたりはホッカイコガネにはなかったジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持っている。
特にこがね丸は
フライ加工適性のあるご両親
父:十勝こがね
母:ムサマル
のサラブレッドなのでフライドポテトにむちゃむちゃ向いている。
煮物もイケるみたいだし
ホッカイコガネは取って代わられちゃうかもなぁ。
そのくらいじゃがいも世界において
ジャガイモシストセンチュウ抵抗性があるかないかというのがデカイのである。
将来、抵抗性のない品種は種芋の配布が終了し、淘汰されゆく運命だ。
品種改良でどんどん強く美味しくなっていくとは言え、
今ある品種を食べるなら今のうちかもしれませんぞ。
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