母の名は。 第14回・農林1号
今日は「農林1号」を紹介します。
第4回の「紅丸」に引き続き、もうだいぶ栽培されなくなっている
昔の品種ではあるのですが
昔があっての今だなあと思わせてくれる子なので。
農林登録番号
画像提供:日本いも類研究会
母:男爵薯
父:デオダラ
はい、あの、超有名芋・男爵のお子さんでございます!
男爵のお子さんといえば、
「母の名は。」では第1回でキタアカリを紹介した(覚えてる?)
農林1号が誕生したのはあかりんよりも
40年以上前の1943年のこと、お姉さんだ。
品種名が「農林1号」
最近のひらがな品種名に比べるとだいぶお役所というか堅苦しい感がある。
なぜ農林1号か
ばれいしょとして、農林省に初めて登録されたじゃがいもだから!
農林水産省が農作物の登録品種に付した
認定番号がそのまま品種名になったのだ。
じゃがいもだけでなく、
水稲農林1号とかだいず農林1号もあるので
じゃがいもの場合は
「ばれいしょ農林〇号」
という登録になる。
みんなにとっては「ジャガイモ」でも
農林水産省的には「ばれいしょ」なのよ。
男爵やメークインは外国から導入された品種なのでこの番号は付与されない。
国内で育成された品種は
「キタアカリ」なら「ばれいしょ農林29号」だし
「インカのめざめ」なら「ばれいしょ農林44号」というように
「コナユタカ」こと「ばれいしょ農林66号」まで登録されている。
このあともどんどん進んで100号とかいくのかしら~と思っていたが
2015年に農林番号制度が見直された。
これまでは農林水産省の委託等で育成された品種のうち、広く普及が見込まれる品種に限定していたのだが、
近年の多様なニーズに合う生産や品種開発に対応できるようにするため、対象を広くしたのだ。
へぇー。
同じじゃがいもでも
選抜育成時に「~系〇号」「~育〇号」と付けられた名前や
種苗法登録の番号など
品種名以外にもいくつも名前を持っている。
農林1号だと旧系統名は「島系12号」
私はこの「~号」だと全然頭に入ってこないので
大声で呼びたくなるかわいい品種名をつけて市場に出回ってほしいですわ。
……ちょっと逸れましたね
農林1号ちゃん以外にも
認定番号が品種名になったのは
農林2号、農林3号
マルチプレーヤー
農林1号の特徴は
兼用品種である
というところだろう。
食用だけでなく
加工食品(ポテトチップ)
でん粉原料
にも使用された。
え、すごくない?
まだ当時
用途に応じた専用品種、とんがったやつらがいなかったとはいえ。
そして、
育成地の北海道だけでなく
全国で栽培できる広い適応性があった。
多くの都府県が奨励品種に採用したものだ。
さらにすごいのは
西南の春秋二作を可能にした最初の品種という点である。
今では当たり前に行われているけれど、
北海道と季節がずれる秋作ができれば
それは経済的に有利になる。
革命児じゃないの、すごーい!
1965年頃はめちゃめちゃ作られていたが、
各用途の専用品種が普及してくると
(ポテチなら「スノーデン」、でんぷんなら「紅丸」とか)
やはり餅は餅屋に任せた方が品質がいいと
作付けががくんと減少。
今はじゃがいも全体の0.1%ほどしか作られていない。
味は
イモくさい独特の香りが強く
男爵よりはおいしくないらしい。
調理すると色が変わっちゃいやすい。
原料として活躍したポテトチップスのほか、
粉質を活かしたマッシュポテトに向いている。
母なる農林1号
そんな感じで
「どうせ私おいしくないし、もうオワコンだし」
とネガティブなわりに
すごい頑張ってた農林1号ちゃんという
キャラが浮かんできたところで、
農林1号の功績は
決して消えたわけではなく
今も受け継がれていることを知る。
直接親になった
「オオジロ」「ウンゼン」「タチバナ」「ヨウラク」「ニセコ」「リシリ」「シマバラ」
だけでなく
系譜図をさかのぼると農林1号が関わっているという品種は多数ある。
第12回で紹介した「ワセシロ」とか。
その遺伝子は脈々と続いているのだ。
若い世代に活躍を譲っても、
頑張ったことはずっと消えないよ!
300字SS
では復習SSをどうぞ。
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