もろびと
年が明けたら頂上作戦だ、本国から部隊が来る。
ライトアップされた賑わいの中、ダックワーズ警部は口元をホットワインで隠しながらそう言った。
「教えていいんですか」
フィナンシェヤクザはシュトーレンを吟味する背中で答えた。
「甥の友達に世間話をしただけだよ」
「警部は優しすぎますね」
「よく言われる」
「だから怪盗も苦労する」
「怪盗?」
「いいえなんでも。情報感謝します」
このタイミングで。
街の四課と違い、本国様は杓子定規に取り締まるのだろう。
目立つ頭を獲れば組織は壊滅すると思っている。
赤煉瓦の広場ではマフィアもギャングも探偵も異教徒さえ、分厚い上着を羽織ってマグカップに白い息を吐く。
主は来ませりと音楽が鳴り渡る。
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