おまいり
親分の姐さんが神社に行くと言うので車を出した。
フィナンシェであっても博徒由来のヤクザなので折りに触れて参詣する。
南雪が供になりがちなのは組の中で人相がましだからだろう。
手を合わせる姐さんの横顔は今日も美しい。
普段仏壇で死者に向き合う時よりも強い念を感じた。
思い返せば、祈る女をよく見ている。
カヌレは修道院で、バクラヴァはモスクで。皆願いがあるのだ。
社務所に分厚い袱紗を納めて、「御守買ってあげようか?」その手に持った良縁成就ではなく商売繁盛か立身出世にしてくれと慌てて頼む。
「ナンちゃんだから言うけど」
帰りの茶屋で煙管を傾け、着物の女は火種を打ち明ける。
「お医者様の話ではうちの人、もう長くないんだ」
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