僕の私の住宅宗派 リスク回避的?楽観的?

約4,700字のまとめnoteです。約10分で読むことができます(※2021年1月時点の記事です)。

まずは記事作成の経緯から。

新年、浦和の星「ゆーすけ@浦和住みリーマン」氏がつぶやいて話題となった「僕の私の住宅宗派」に便乗して参加させてもらいました。

当然ですが、人によって合理性やリスク許容度が異なるため、様々な回答が寄せられていたのが興味深く、このnoteを書こうと考えました。


この記事を読むにあたっての注意点を書いておきます。

望ましい住宅は人によって異なるからこそ、不動産マーケットにおいて様々な住宅が価格付けされて取引されることになります。

宗派(=価値観)が違うと「なぜこの家がこの条件で売れるのだろう?」「一体誰が買うのだろう?」と感じることもがあるのですが、多様な価値観を持った市場参加者から構成されるマーケットには広がりや厚みがあり、健全な市場の証拠なのです。

ゆえに、この記事では個別項目を掘り下げてみていきますが、これが正解というものではなく、「ファイたまはこう考えている」という参考程度にみるべき内容です。

それでは前置きはここまでとして、ゆーすけ氏の「僕の私の住宅宗派」の中で、リスク許容度、つまり「リスク選好的なタイプ」の人と「リスク回避的なタイプ」の人によって回答にバラツキがみられた項目について、掘り下げて考えてみたいと思います。

1. 固定金利 vs 変動金利

2. 単独ローン vs ペアローン

3. どの程度借り入れるか:返済負担率、年収倍率

4. リセールバリュー:将来売るときにいくらで売れそうか

5. ハザードマップ:水害、地震災害


1. 固定金利 vs 変動金利

個人的な見解ですが、現在は歴史的な低金利であり、今後も当面は日銀の政策が継続される限り低金利が続きます。ただし、金利低下余地は限定的です。将来的な金利動向は、日銀の金融政策の出口戦略次第ですが、日銀がうまく対応できれば金利は緩やかな上昇、一方、日銀が失敗して財政ファイナンスの問題が顕在化した場合は金利急騰というリスクを孕んでいます。

金利上昇の時期は予想できないため、結果的に低金利が35年間継続して「変動金利の勝ち」というシナリオも十分にあり得ます。

今後の金利上昇幅は、通常の正常化シナリオでは緩和政策前の水準である、現水準から1%程度の上昇、日本のソブリンリスク顕在化というリスクシナリオでは、極端ですが欧州債務危機時におけるギリシャ国債の30~40%という水準も考えられます。

私は、ヒストリカルに見ても将来を見ても、現在は大局的には低金利の水準にある可能性が高く、すなわちローン金利を固定するのに申し分無い経済環境が揃っていて、将来的な金利上昇による支払増加リスクを排除するために固定金利を選択しました。

そもそも低金利だからこそ月々の支払いが抑えられ、高めの不動産に手が届いちゃうんですよね?それを変動金利のままリスクを取るっていう発想が私にはありませんでした。

将来金利上昇しても一括して返済できる潤沢な純資産を有している場合には変動金利を選択しますが、そうでなければ固定するべきだと思います。変動も固定もいいとこ取りしたいという方はミックス型や当初○年固定という選択肢もあります。


(金融的な背景の補足)

変動金利はメガバンクの短期プライムレート(=1.475%)、固定金利(フラット35)は新発の長期国債(10年)(≒0.0%)が参照されます。

それらの金利を基準とし、優遇や銀行間の競争による金利の引き下げや、お金を貸す銀行のコストや団信保証料が上乗せされた結果、現在住宅ローンを借りると変動金利は0.5%、固定金利(フラット35)は1.2%程度の水準となっています。

変動・固定ともに参照金利が低く安定している背景には、日銀が2%の物価上昇目標を達成するという目標のもと、年間数十兆円単位で国債を買い入れている異次元の金融緩和政策があります。金融緩和政策はよく麻薬やモルヒネと揶揄され、1度手を付けるとなかなか抜け出すことができません。事実米国のFedもEUのECBも緩和政策からの脱却を試みましたがいずれも失敗しています。

日銀のこれまでの金融政策により、確かに10年金利はゼロ近辺まで低下し、株価は上昇し、為替は大幅円高は阻止される(アベノミクス初期は大幅な円安)など一定の効果はありましたが、未だに2%の物価上昇の目標は達成されず、むしろ逆に低金利が金融機関の収益を圧迫させるという、金融政策の副作用や弊害が語られることが多くなりました。この点は日銀も十分に承知しており、慎重なオペレーションがなされています。

日銀の国債保有残高は500兆円を超え、実に財務省が発行している国債の発行残高の50%近くを日銀が保有していることになります。これは一部では既に財政ファイナスと呼ばれ、中央銀行の信認に関わる問題も指摘されています。


1つ目から長いな笑。サクサク行きます。


2. 単独ローン vs ペアローン

そもそもファイたま家は専業主婦世帯なので、単独ローン一択だったのですが、仮に共働きだったとしても、単独ローンを選んでいたと思います。

家購入という人生でも幸せな意思決定の段階において、不幸なことはあまり考えたくないものですが、大きな買い物や投資の前にはあらゆるリスクを想定しておく必要があります。ペアローンのリスクとしては、離婚リスク、育児休業・病気・けが・失業よる所得減少リスクなどが挙げられます。

ペアローンでダブルの与信枠を活かして高めの住宅を購入していたところに所得減少リスクが生じ、収入増で対応できない場合はローン破綻し家を売却することになります。離婚となった場合は、夫婦ともに所有権があるのでどちらが住むのか、売るのかどうか等権利関係で話がややこしくなります。

夫婦円満なDINKSで健康に余程の自信が有るのなら、余裕を持たせたペアローンならアリだと思います。


3. どの程度借り入れるか:返済負担率、年収倍率

上で書いた病気・けが・失業よる所得減少リスクは当然単独ローンでも抱えていますので、万が一に備え、団信や保険でカバーしつつ、ゆとりある借入の範囲に抑えておくべきだと考えます。

スプレッドシートを作成してみたので参考までに載せておきます。拡大して見てください。

画像9

(シミュレーションの前提は35年固定1.2%)

画像2

画像3

画像4

個人的感覚ですが、

年収倍率(いわゆる界王拳○倍)は5~6倍
 返済負担比率①(年間返済額÷額面年収)は20%程度
返済負担比率②(年間返済額÷手取り年収)は25~30%程度

に収めておくと、比較的ゆとりのある返済計画になると感じています(画像の黒太字のレンジ)。

※返済負担率①で、年収によって30-40%以上は銀行審査の基準によって借入れ出来ません。


見栄で背伸びをして家を買ってしまい、その後節約を強いられるのでは、何のための家なのか分からなくなります。家族にって望ましいライフスタイルの実現や余暇を楽しむためにも、ゆとりのあるローン金額に抑えることは大切です。

万が一が生じても余剰キャッシュで対応できるお金持ちの人なら、低金利で多く借り入れてレバレッジを有効活用する戦略は大いにアリですが、自分のような庶民がパンパンまで借り入れるのは自殺行為と言えるでしょう。


4. リセールバリュー:将来売るときにいくらで売れそうか

リセールバリューもこれまでの話と関係します。最後まで住むことを前提として購入する場合であっても、将来的な転勤、離婚、病気、親の介護、ローン破綻などで家の売却を強いられる可能性があります。

仮にリスクシナリオが生じてしまい、家を売らなければならなくなったケースを簡単なバランスシート(B/S)のイメージ図を使って考えてみます。

住宅購入前は、ほぼ無借金なので資産≒純資産です。クレジットカード利用額等少額かつ短期的な借金は無視します。

画像9


そこに住宅ローンを使って家を購入すると、資産サイドに住宅、負債サイドに住宅ローンが載ってきます。

画像5


n年経過したB/Sは、資産サイドの住宅価格は経年劣化による下落と不動産市況による変動が加味されます。負債サイドは、住宅ローンの元本を支払った分だけ残債が減っています。

画像6


この購入からn年後の段階で売却することを考えます。

住宅を売却した時に手に入る金額(=住宅価格の時価-仲介手数料)が残債を上回っていれば全く問題はありませんが、

画像7


逆に住宅価格が住宅ローン残高を割り込む「残債割れ」となっていると要注意です。

画像8

このケースでも純資産があって、家を売却するときに実現する損失分を払って対応できるのであれば良いですが、純資産で賄えない場合は、家を売却すると借金だけが残ってしまう実質的債務超過状態と言えます。

簿価で評価する含み損の時には問題は表面化しませんが、家を売らないといけないのに経済的な理由で家が売ることができない、ということになってしまいます。ローン破綻によって銀行に強制的に競売に出された場合は、銀行への残債が賄えず、借金が残ることになります。

したがって、たとえ終の棲家の前提であってもリセールバリューを念頭に置いたうえで家を購入する必要があります。

駅力の高い駅近マンションや駅徒歩圏内の戸建てを選ぶことでリスクを抑えられますが、バス便の郊外戸建て(そもそも価格が安いのでリスクが小さいとも言えますが)や、あるいは近年大幅に不動産価格が上昇しているエリアも不動産価格の下落余地の観点からリセールのリスクがあると言えます。


5. ハザードマップ:水害、地震災害

水害や地震災害は、損害保険でカバーすることができるので、それを念頭にリスクを取って安い不動産を選ぶのはアリだと思いますが、命に関わるリスクがあるので、個人的には軟弱な地盤の土地、海抜ゼロメートル地帯は避けます。

自然災害はいつ生じるか分からないので、非常時の家族との連絡方法や避難場所を確認しておく、非常食や非常グッズを備えておくことが大切だと思います。


リスク選好的な方からすると、「何をそんなにビビっているんだ?」と一笑に付されそうですが、私のリスク回避的な考え方の根底に共通してあるのは、「万が一のことが生じても生活が破綻しない」ということです。自分や家族のQOLを高めるための住宅購入のはずなのに、リスクが顕在化すると著しくQOLを下げてしまいますので。

今日は以上です。


参考

ゆーすけ氏による まとめnote


いいなと思ったら応援しよう!