見出し画像

【決算】エヌビディアの成長率、改めて見るとまるで新興企業のよう

 画像処理半導体(GPU)の世界最大手、エヌビディアの決算が先月末に発表された。売上高も利益も市場予想を上回ったものの、翌日は株価が大幅下落した。

 たしかにこれまで過大評価されていたきらいがあった。同時期に雇用統計の下方修正が重なったこともあり、先走り感の強かったエヌビディア株に大幅な下落圧がかかったのだろう。

 少しエヌビディアを見る目に冷静さが戻ってきたところだが、この数年の決算を振り返ると、やはりエヌビディアの成長率はえげつない。 

 以下がこの7年弱の業績だ。

 これほど巨大な企業の売上高が当たり前のように毎年2桁成長を遂げており、この1年は3桁成長。まるで駆け出しのスタートアップのような増収率だ。

 成長の原動力はやはりデータセンター用半導体。同売上高は2019年期第2Qが7億6000万㌦だったのに対し、直近の25年期第2Qは262億7200万㌦。この6年で34.5倍に膨れ上がっている。

 生成系AIが台頭して以来、企業のデータセンター投資が相次いでいるのが急成長の背景にある。加えて60%を超える高い営業利益率を実現しているのが、AI半導体における高い市場占有率だ。

 そのカギを握るのが、エヌビディアが独自に開発したプログラミング言語「CUDA」。GPUのプリケーションをコーディングするための言語だが、AIソフトウェアの開発では現在このCUDAが席巻している。

 過去にDVDや端子、メモリーカードなどで見られた規格争いに似た状況だが、もはやCUDAないしエヌビディア製GPU無くしてはAIソフトウェア開発が成り立たないほどまでの状況になっている。

 市場競争のない領域であるほど利益率は高くなる。他の領域でも高利益率を誇る企業はあるが、ほとんどが小さな市場を独占・寡占するニッチトップであり、エヌビディアほど大きな市場で独占状態を保っている企業は珍しい。

 今後、機械学習のニューラルネットワーク処理に特化したNPUの開発が予想され、GPUがかつてほどの地位を維持できない可能性も出てきたが、画像処理、シミュレーション、ビッグデータや暗号などの解析の面ではGPUに軍配が上がるとみられる。

 加えて、エヌビディアはAIスタートアップへの投資を加速させている。日本のAI開発会社・サカナAIへの出資もその一環だ。同社は生成系AIの次世代技術とされる進化的アルゴリズムを活用したAI開発を行う。これは既存の生成AIモデルを組み合わせて新たなモデルを作る技術で、計算処理負荷やコストを圧倒的に下げることができると期待されている。

 AIの領域でサカナAIのような世界中の有望株に唾を付けており、先行投資の面でも隙がない。GPUで先行者利益を堪能したエヌビディアだからこそ、AIの陣取り合戦がどれほど重要か身に染みているところだろう。

 足元では反トラスト法違反の疑いをかけられており、米司法省から調査を受けている。AI領域において盤石な体制を敷くエヌビディアの独走状態を、果たして米国政府が止められるのか。また、生成系AIがどこまで生活やビジネスに浸透し、AI半導体需要が膨れ上がるのか。

 順風満帆とは言い切れないものの、少なくともエヌビディアはAI覇権を握る企業の最有力候補に位置していることは言うまでもない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?