スナック忘れな草~アジアの純真・2024キーンランドC~
トップ画像引用:JRAホームページ
■ 福永祐一調教師
2024年8月18日(日)午後4時40分
-東京都某区 スナック忘れな草-
今週も競馬がすべて終了した。土曜朝の高揚感と、日曜夕方の達成感、あるいは虚無感。全国の競馬ファンの中にある悲喜こもごもを、ギュッと凝縮したような雰囲気が店内に満ちていた。
「福永祐一の重賞初勝利だったか・・」
タコ社長が声を絞り出した。ギョニ子が続く。
「鞍上は幸英明・・・もう一人の武豊はシャフリヤールで裏の札幌記念。なんで気づかなかったのかしら・・・」
しばし、店内を沈黙が支配した。
ギョニ子が言っているのは、中京競馬場イベント、実使用ゼッケン抽選会のことだ。インティ、シャフリヤール、ヨカヨカの3頭。
ヨカヨカの幸英明がシャフリヤール福永祐一の管理馬、ドロップオブライトに騎乗し優勝。そして、インティの武豊は札幌記念でシャフリヤールの背中にいたのだ。
「こうなってみると・・」
マスターが言った。
「シャフリヤールが松山弘平騎手の騎乗停止により、武豊に乗り替わりというのも、なんだか既定路線だったように思えてきますね」
みんながうんうんと頷いた。真一郎が言った。
「福永祐一調教師は、重賞挑戦8戦目にして初勝利。JRAFUNのメイクデビュー紹介ポストで、8番ゼッケンの3頭が選ばれたのはこの数字を示唆だったんでしょうか?」
みんながなるほどと頷いた。
ナリタブライアン、テイエムオペラオー、そしてオルフェーヴル。いずれも8番ゼッケンでデビューした名馬だ。しかし、そこから重賞8戦目の福永祐一というのは飛躍が過ぎる。やはり、実使用ゼッケン抽選会からのアプローチでたどり着くべきだった。
「あ!」
真一郎が声を挙げた。
「23日は金曜日。うちの病院は25日が土日祝の場合、給料は前倒しなので給料日です!」
「なにかと思ったら給料日の心配してたのか・・・大丈夫なのか?」
タコ社長がカウンターの反対側から心配そうに声を掛けた。ギョニ子がチッチッと人差し指を左右に振る。
「財布の紐はあたしがガッチリ握ってるから心配しないで。しんちゃんなんかに任せてたら、うちはあっという間に火の車だわ」
真一郎が参ったなあと頭をかき、店内がどっと沸いた。
■ トレセン見学ツアーの謎
「それにしてもこの見学ツアー、日程が謎なのよねえ」
ギョニ子がスマホを凝視しながら言った。今日JRAサイトにアップされた、美浦トレーニング・センター見学ツアーのことである。
「なんとなく気になって、過去のトレセン見学ツアーを調べてみたの。JRAサイトに今残っているのは、中学生が対象の栗東トレセン見学ツアーが二回と、美浦トレセンに新坂路が誕生したときの見学ツアー。過去3回は全部祝日の日程だったの」
<トレセン見学ツアー 2023~>
2023/9/16(土)【11月23日・祝日・木】
<中学生対象>
トレセン職場見学ツアー【栗東トレーニング・センター】
2024年3月23日(土)【5月3日・祝日・金】
<中学生対象>
トレセン職場見学ツアー【栗東トレーニング・センター】
2023年10月12日(木)【11月23日・祝日・木】
美浦トレーニング・センター「新坂路コース見学ツアー」
2024年8月18日(日)【9月11日・水】
美浦トレーニング・センター見学ツアー
「ね? 今回告知された見学ツアーだけ、平日の水曜日なのよ」
みんながなるほどと声を挙げた。麗子ママが言った。
「調べてみたら六曜は仏滅。しかも9.11といったら同時多発テロ事件の日でしょ? ほかの日にする選択肢はなかったのかしら?」
マスターが頷いて続く。
「この日付になにか意味があるのかもしれませんね」
■ アジャパー
その後、9.11の意味について議論が交わされたが、特にこれといったサインは出てこなかった。今日はお開きにしようか、そんな雰囲気になったころ、入ってくる長身の男、いや、ママがいた。立ち飲み処UEGOMORIのキャロラインママだ。
「あらあら、日曜日から熱心に検討会かしら?」
真一郎が、今検討していた内容を簡単に説明した。
どれどれと自分のスマホで情報をチェックしたキャロラインママは、両足で床を交互に蹴り、椅子の上で回転を始めた。思考回路を極限までに酷使する秘儀、キャロライントルネードだ。
数十秒後、回転がとまった椅子の上には、満面の笑みを浮かべたキャロラインママがいた。
「これはとんでもない予告サインかもしれないわよ」
そう言い残し、ドアのほうへと向かう。ヒントもくれないのかとみんなが訝しがったその瞬間、振り返ったキャロラインママが言った。
「アジャパー・・・・・これが来週のキーワードかもね?」
バッサバッサという鳥の羽ばたきのようなウインクを数回し、キャロラインママは今度こそ店外へと消えていった。
■ ARC
「アジャパー? 伴淳三郎がキーワードってさっぱりわからねえぞ?」
タコ社長が渋面を作って言った。腕を組んで天井を見上げる。
「いや、社長さん。アジャパーではなく、アジアパーと言ったように聞こえましたよ」
マスターが言った。
「アジアがキーワードなのかもしれません。それを、伴淳のアジャパーに引っかけて言った・・・」
マスターがパソコンを操作し始めた。みんなもスマホで検索を始める。ギョニ子が言った。
「来週ではなく再来週の土曜日だけど、札幌競馬の10レースにアジア競馬連盟トロフィーというのがあるわね・・・このことかしら?」
「今日子ちゃん、それですよ!」
マスターがキーボードを叩く手を止めて言った。
「来週はワールドオールスタージョッキーズがありますが、今年は冠名としてARC開催記念がついています。ARC・・・アジア競馬会議のことです!」
<8/24~9/1 札幌競馬 特別戦>
●8/24(土)
札幌9R
ルスツ特別
札幌10R
ARC開催記念
2024 WASJ第1戦
札幌11R
ARC開催記念
2024 WASJ第2戦
札幌12R
ニセコ特別
●8/25(日)
札幌9R
小樽特別
札幌10R
ARC開催記念
2024 WASJ第3戦
札幌11R
サマースプリントシリーズ
第19回 キーンランドカップ(GⅢ)
札幌12R
ARC開催記念
2024 WASJ第3戦
●8/31(土)
札幌9R
インディアトロフィー
札幌10R
アジア競馬連盟トロフィー
札幌11R
第59回 農林水産省賞典
札幌2歳ステークス(GⅢ)
札幌12R
マレーシアカップ
●9/1(日)
札幌9R
シンガポールターフクラブ賞
札幌10R
フィリピントロフィー
札幌11R
タイランドカップ
「今年で区切りの第40回となるアジア競馬会議。開催も札幌ということで、この番組になったのでしょう」
マスターの説明に、真一郎が質問をした。
「日本での開催は初めてになるんでしょうか?」
「しんちゃん、そこですよポイントは。前回日本で開催されたのは、16年前の2008年」
「アジア競馬会議は11月9日から11月14日にかけて、23年ぶりに東京で開催されました。11月9日・・・この数字にピントきませんか?」
みんなが首をひねる中、ギョニ子がはいはいと手を挙げた。まるで、参観日にお母さんの前でいい恰好をしたい小学生のようだ。
「美浦トレセン見学ツアーの9.11 ! それをひっくり返せば11.9だわ!」
みんながおおという声を挙げた。
「今日子ちゃん、95点!」
マスターがおどけた様子で言った。
「えええ? 100点じゃないの?」
「残りの5点はこれです。見学ツアーの上にあるニュース」
ギョニ子が首を傾げながら言った。
「第14回ジョッキーベイビーズ・・・ごめんなさい、チンプンカンプンだわ」
「いいですか、今日子ちゃん。見学ツアーの日付9.11をひっくり返したものが、前回の日本開催アジア競馬会議が始まった11.9・・・第14回ジョッキーベイビーズの『14』も反転させる。ただし、数字そのものを反転させ『41』とするのではなく、発音の『じゅう・よん』を反転させるのです!」
「じゅう・・よん・・・よん・・じゅう・・・40・・・・ああああ! 今年のアジア競馬会議は第40回ってさっき言ってたわよね?」
ご名答ですと、マスターは深く頷いた。みんながおおという感嘆の声を挙げる。
何気なく日曜日にリリースされたふたつのニュース。ふたつの数字14と9.11を、それぞれ反転させると第40回アジア競馬会議があぶりだしのように浮かび上がる仕組みだ。
「手の込んだことをしますね」
そう言って真一郎がニヤリと笑った。JRAに文句を言っているのではなく、むしろ望むところだ、解析してやるという心意気が顔ににじみ出ている。
マスターが言った。
「さあ、面白いのはここからです!」
■ スクリーンヒーロー
「前回東京が舞台だった日本でのアジア競馬会議。それを記念して当時の東京競馬では、『第32回アジア競馬会議東京大会記念』という特別戦が組まれています。当日施行された重賞、アルゼンチン共和国杯のひとつ前です」
2008/11/9(日)
東京10R
第32回 アジア競馬会議東京大会記念
1着:2-03 ロールオブザダイス(O.ペリエ)
2着:6-12(外)ドリーミーペガサス(蛯名正義)
3着:1-02 コロナグラフ(松岡正海)
東京11R
第46回 アルゼンチン共和国杯
1着:2-04 スクリーン(ヒーロー)(蛯名正義)
2着:7-14 ジャガーメイル(石橋脩)
3着:5-10 アルナスライン(内田博幸)
みんながなるほどと頷いた。ただ、問題はここから来週の重賞にどうつなげるかだ。マスターはすでに答えを用意していた。
「アジア競馬会議東京大会記念が、フランス人騎手のオリビエ・ペリエ。そして、アルゼンチン共和国杯がスクリーンヒーロー。HERO IS COMING.が今年もテーマですから、この馬を使ってくるはず・・・・となると、ぴったりの馬がキーンランドカップにいます!」
キーンランドC
モリノドリーム
(ルメール・父モーリス・父父スクリーンヒーロー)
みんながおおという声を挙げた。
「フランス人騎手ルメールに、スクリーンヒーロー産駒モーリスが父のモリノドリーム! ぴったりの馬がいたわね!」
ギョニ子が手を叩きながら言った。
だが、モーリス示唆のサインはこれだけではなかった。
■ モーリシャス
10分間の休憩中、トイレにも立たずスマホを触っていた真一郎が、興奮した様子で口を開いた。再来週の番組表とアジア競馬連盟の加盟国を調べてみたら、仲間外れがひとつだけあるという。
「アジア競馬会議は、前回の第39回をみてみると、27の国と地域によって行われています。内訳は、加盟国が21、準加盟が1、アフィリエイトメンバーが5。これで27になります」
<2023 第39回 アジア競馬会議>
開催国:オーストラリア
日 程:2023年2月14〜19日
●加盟国:21ヵ国
オーストラリア、バーレーン、香港、インド、日本、韓国、マカオ、マレーシア、モーリシャス、ニュージーランド、オマーン、パキスタン、フィリピン、カタール、サウジアラビア、シンガポール、南アフリカ、タイ、トルコ、ベトナム、アラブ首長国連邦
●準加盟
モンゴル
●アフィリエイトメンバー
中国、インドネシア、イラン、クウェート、トルクメニスタン
「アフィリエイトメンバーというのは、調べたら賛助会員という意味みたいなので、会議には実際には参加してないが、入会金や賛助会費によって組織を支援している国という解釈でいいと思います」
みんながうんうんと頷いた。
「さあ問題は、21の加盟国です。開催国日本が除外されるのは当たり前として、日本以外で、再来週の番組表に名前が出てこない国がふたつあります。マカオとモーリシャスです!」
オーストラリア
バーレーン
香港
インド
(日本)★
大韓民国
(マカオ)★
マレーシア
(モーリシャス)★
ニュージーランド
オマーン
パキスタン
フィリピン
カタール
サウジアラビア
シンガポール
南アフリカ
タイ王国
トルコ
ベトナム
アラブ首長国連邦
★ 番組にない国
「27ヵ国のうち、使われなかったのが開催国である日本。そして、マカオとモーリシャスです。マカオがない理由は、今年の4月に競馬が廃止されたからです」
みんながうんうんと頷いた。
「となると、実質的な仲間外れはモーリシャスのみ! モーリシャスの中には、モーリスが入っています!」
キーンランドC
ダノンマッキンリー(父モーリス)
モリノドリーム (父モーリス・ルメール)
みんながおおという声を挙げた。
モーリス産駒が一頭だけではないのが惜しいところだが、2008年のアジア競馬会議東京大会記念がフランス出身のオリビエ・ペリエ勝利という点を加味すると、ダノンマッキンリーとの比較ではモリノドリームに軍配が上がる。
しかも、モリノドリームは函館と札幌で6戦5勝と、洋芝を大の得意にしている。満場一致で、キーンランドカップの本命馬が決まった。
スナック忘れな草
キーンランドC 本命馬
モリノドリーム