スナック忘れな草~世界まるごとHOWマッチ・2023セントウルS~
■ オシリズブレイン
2023年9月9日(土)午後8時
-東京都某区 スナック忘れな草-
「なんだよ、中山1Rのオシリズブレインがサインだったってわけかい?」
タコ社長がはたと膝を叩きながら言った。スナック忘れな草にはいつものメンバーが揃っている。
「オシリズブレイン?1Rの障害を勝った馬がなんだっていうの?」
ギョニ子が魚肉ソーセージにかぶりつきながら訊いた。ギョニ子というあだ名は「魚肉ソーセージ好きの今日子」が由来だ。
今週さんざん話題になった「僕のソーセージを食え」発言だが、誰もそのネタに絡めて下ネタを言う者はいなかった。ギョニ子が来店するやいなや、ソーセージ絡みの下ネタを言った者は誰であろうと、そいつの“ソーセージ”を嚙みちぎる罰を与えると宣言したためである。
「1Rがオシリでメインの紫苑ステークスが『穴』と『ヒップ』だったってわけさ」
タコ社長はそう説明し、残っていた眞露の水割りを飲み干してからグラスを振り、カラカラと氷の音を立てた。
9/9(土)
中山1R
1着:(オシリ)ズブレイン
紫苑S
1着:1-02 モリ(アーナ)
2着:2-03(ヒップ)ホップソウル
3着:7-13(シランケド)
「お尻にヒップに穴。そして知らんけど。ふーん。例のジャニーズの会見サインってわけね?」
ギョニ子は渋々といった感じで頷いた。「ソーセージ」とは直接言っていないが、今週のこのタイミングでお尻に穴とくれば「ソーセージ」をも示唆している。
「まあまあ、今日子ちゃん。今週はあのネタを無視することはできないでしょうね。テレビがこぞって生中継したくらいですし、世間の注目度は高いですよ」
マスターがギョニ子の心中を察して声を掛けた。
「じゃあマスターは明日の重賞もジャニーズネタが使われると思ってるの?」
「その可能性は高いと思っています。やるなら紫苑SがGⅡに昇格となったことで、同じGⅡのセントウルSではないでしょうか」
■ 「夏の覇者」と「秋の王者」
マスターは説明を続けた。
「セントウルSのデータ分析コピーが違和感を覚えるものでした」
データ分析コピー
「夏の覇者を決め秋の王者を占うスプリント重賞」
「うーん、データ分析コピーは普段あまり見ていないから、どこがおかしいのかわからないなあ」
真一郎が首をひねりながら言った。
「冒頭の『夏の覇者を決め』というところです。サマースプリントシリーズのことを言っていますが、シリーズの経過をあまり気にしていない競馬ファンは、このセントウルSでチャンピオンが決まると勘違いするでしょうね」
「そうじゃないってことかしら?」
みんなに配る総菜の準備をしていた麗子ママが、手を止めて訊いた。
「そうなんです。セントウルSの結果に関わらず、サマースプリントシリーズのチャンピオンはジャスパークローネに決定しています」
<サマースプリントシリーズ 暫定順位>
1位:ジャスパークローネ(21 P)
2位:キミワクイーン (11 P)
3位:オールアットワンス(10 P)
3位:ナムラクレア (10 P)
5位:トウシンマカオ (8 P)
6位:サンキューユウガ (6 P)
6位:ジュビリーヘッド (6 P)
8位:シナモンスティック(5 P)
8位:トキメキ (5 P)
8位:ママコチャ (5 P)
8位:ロードベイリーフ (5 P)
※馬名のあとの( )内は累計ポイント
「セントウルSの1着に与えられるポイントは12点。逆転可能だったのは2位のキミワクイーン、3位のオールアットワンス、同じく3位のナムラクレアまで。ところがこの3頭はセントウルSに出走しませんから、すでにジャスパークローネがチャンピオンであることは確定しています」
「なるほどなあ」
タコ社長が頷きながら言った。
「するってえと、わざわざ『夏の覇者』という文言を入れたのは、何か理由があるってわけだ?」
「夏と秋をセットで使いたかったのでしょう。秋競馬の開幕週には、毎年サマーシリーズのスプリント戦最終戦とマイル戦最終戦がひとつずつ組まれています。秋の最初でもありますが、夏の最後でもあるというわけです」
「AでもありBでもある・・・か」
真一郎が言った。
「それってまさにセントウルのことですよね?別名ケンタウロス。人でもあり、馬でもある」
「しんちゃん、ビンゴです。そこにヒントがあると思っています」
マスターがにっこりとほほ笑みながら言った。
■ 半人半獣
「へえー。データ分析コピーには深い意味が隠されていることがあるのね!人でもあり馬でもある・・・か。関係ないけど『となりのトトロ』を思い出しちゃったわ。ねこバスが出てくるでしょ?猫でもありバスでもある。なんてね」
ギョニ子はそう言ったあと、ペロリと舌を出した。
「セントウルからねこバスを思い出すなんて、頭が柔らかいですね」
マスターが感心したように言った。
その時、CCBの『Romanticが止まらない』を口ずさみながら、店内に入って来た者がいた。
■ 北村宏司の2週連続重賞V
店内に入ってきたのはくろたんだった。髪をピンクに染め上げ、大きな丸い縁のメガネをかけている。ドラムを叩いている真似をしていることから、CCBの笠浩二のコスプレなのだろう。
「ああ!くろたん、また私たちの会話をドアの外で聞いてたのね?ちょうど今、ジブリ映画の話をしてたところよ」
「はりつめたー 弓のー ふるえるつーるよーー♪・・・って誰が米良美一やねん!」
「ええ!?米良美一じゃなかったの?」
「CCBのリュウこと笠浩二ですよ。それはさておき、セントウルSの本命馬は決まりましたか?まさか1番人気のビッグソーセージ、いや、ビッグシーザーじゃないでしょうね?ハハハ!」
今にもくろたんに掴みかかろうとするギョニ子を、真一郎が制した。
「まあまあ。くろたんさんは下ネタ禁止のことは知らないんだから」
「・・・ったくしょうがないわねえ」
「先週の結果を踏まえると、スマートクラージュ・・・いや、岩田望来騎手の2週連続Vがあるかもしれませんよ」
くろたんが説明を続けた。先々週と先週、2週続けて北村宏司騎手が重賞を制覇したことがトリガーとなり、先週重賞を制した岩田望来騎手も、2週連続重賞勝利をおさめる可能性があるという。
「まずは2000年に、2週連続重賞勝利をおさめた北村宏司騎手をみてください」
2000.8/27 新潟記念 北村宏1着(ダイワテキサス)
2000.9/3 新潟3歳S(現2歳) 北村宏1着(ダイワルージュ)
「これに呼応するかのように、福永祐一騎手も2週連続重賞勝利をおさめているのです」
2000.9/3 小倉3歳S(現2歳) 福永祐一 1着(リキセレナード)
2000.9/10 セントウルS 福永祐一 1着(ビハインドザマスク)
「なるほどなあ。北村宏司が8月27日と9月3日に2週連続V。福永祐一のほうは一週ずれるかたちで、9月3日と9月10日に2週連続Vってわけかい」
タコ社長が深く頷きながら言った。
「そういうことです、社長さん。そして今年、同じことが起ころうとしています」
2023.8/27 新潟2歳S 北村宏1着(アスコリピチェーノ)
2023.9/3 新潟記念 北村宏1着(ノッキングポイント)
2023.9/3 小倉2歳S 岩田望来 1着(アスクワンタイム)
2023.9/10 セントウルS 岩田望来 1着?(スマートクラージュ)
「よくこんなの見つけましたね」
マスターも感心して言った。
「もうひとつプラス材料があります」
くろたんが続けた。
2000.8/27 新潟記念 北村宏1着(ダイワ)テキサス
2000.9/3 新潟3歳S(現2歳) 北村宏1着(ダイワ)ルージュ
2023.8/27 新潟2歳S 北村宏1着(アスコリピチェーノ・【サンデー】)
2023.9/3 新潟記念 北村宏1着(ノッキングポイント・【サンデー】)
「トリガーとなる北村宏司の連勝。2000年も今年も、同馬主という隠し味があります」
「スマートクラージュが激熱ってわけね?」
ギョニ子が封の開いていない魚肉ソーセージをくろたんに手渡しながら言った。ギョニ子が人に魚肉ソーセージをあげるときは、心を許したあかしだ。
「そういうことです。なにしろ23年振りの激レアサインですからね。しっかりとやってもらわないと困りますよ」
そう言ってくろたんはドアのほうに歩いて行った。
「私はこれで失礼します。みなさんはこれから検討会があるでしょうからね」
「ちょっと待って!」
呼び止めたのはギョニ子だった。
「世界まるごとHOWマッチ、いつも見てたわ!」
「ユタのこと馬鹿にしないでよ~~・・・って誰がケントデリカットやねん!」
掛けていた眼鏡のつるの部分を両手で持ち、眼鏡を前後に動かしながらくろたんが言った。
「ありがとう突っ込んでくれて」
ギョニ子がお礼を言うとくろたんはニヤリと笑い店を出て行った。
■ ウマ娘
「さあ、再開しましょうか。先ほどの話が途中でしたね」
マスターが説明を再開した。
「AでもありBでもある。半人半獣のセントウルを示唆したかのようなデータ分析コピー。ぴったりの馬主がいますね」
マスターのヒントにはみな首をひねるばかりだった。
「最近話題になっている、人でもあり馬でもあるもの・・・」
「ああそうか!」
真一郎がパチンと手を叩きながら言った。
「人でもあり馬でもある。ウマ娘ですね?」
「その通りです、しんちゃん」
マスターが頷いた。
「ええっと、なんだっけ、ウマ娘といえば藤田なんちゃらよね?ジャングロの?」
ギョニ子も気づいたようだ。
「そうです。ウマ娘といえばサイバーエージェント。代表取締役がジャングロのオーナーでもある藤田晋氏です」
「夏と秋をあえて混在させたデータ分析コピー。それがウマ娘の藤田晋さんを示唆しているってことね?」
麗子ママが確認した。
「おそらくそうだと思っています。そして、ここが大事なのですが、ジャングロという馬はジャスパークローネの影武者だと思っています。オーナーこそ違うものの、外国産馬であることと、森秀行厩舎というのが一致します」
■ 裸の王様
マスターが説明を続けた。
「くろたんにCCBのコスプレを頼んだのは私なんです。ジャスパークローネはサマースプリントシリーズを2勝しています。CBC賞と北九州記念」
CBC賞
7-10(外)ジャスパークローネ(森秀行)
「一連のジャニーズの話題。突破口を開いたのは日本のメディアではなく、英国BBCでした。同じBとCからなるCBC賞。海外を示唆する外国産馬。そして厩舎名の森は、この前ゲストにも来ていた元ジャニーズの森且行を表しています」
「ジャニーズを脱退した人が、次々と過去のことを語りだしたものなあ。なるほどよくできてるぜ」
「アンデルセンの童話に『裸の王様』がありますね。大人たちは忖度し、誰も王様は裸だと言えない。一方、直接的な利害関係が薄い子供は、はっきりと『王様は裸』と言えたわけです」
「裸の王様がジャニーズ。大人が日本のマスコミ。子供が英国BBCというわけね?」
ギョニ子が確認した。
「そういうことです。ジャスパークローネもジャングロも、ジャニーズの『ジャ』と『黒』を馬名に持っています。『ユー、あなたは真っ黒ですよ』そう言いたのでしょう」
(外)ジャスパークローネ(森秀行)
(外)ジャングロ (森秀行)
「するってえと、ジャングロの単勝勝負かな?」
「いいでしょうね」
タコ社長の問いかけにマスターが言った。
「萩野公介の動画、黒岩悠騎手とのインタビューで、トウケイヘイローとキタサンブラックが出てきます。いずれも武豊騎手で勝ったレースの画像を使って。また、動画冒頭で麻雀の話になり、黒岩悠騎手は麻雀をやる頻度を『週5』と答えています」
3-(5)(ジャン=雀)グロ(武豊)
マスターの説明を聞き、軸はジャングロでいいだろうということになった。
■ 世界まるごとHOWマッチ
10分間の休憩時間となり、おのおのトイレに行ったりスマホをいじったりして過ごした。先に戻ってきた麗子ママとギョニ子は、くろたんがいるときに出た世界まるごとHOWマッチの話をしだした。
「あたしはチャックウィルソンが好きだったわ。意外とマッチョ好きなのかも」
麗子ママがそう言うと、ギョニ子は驚いた表情を見せた。
「ええ?チャックウィルソン?スレンダーなマスターとは似ても似つかないわね」
「うふふ。マスターとは真逆だからなおさら気になるのかも」
「なんだいおふたりさん。世界まるごとHOWマッチの話かい?俺は外人の中だったら、ケントはケントでもケントギルバートのほうが好きだったなあ」
タコ社長が話題に入ってきた。
「僕はタレントがどうのこうのというより、世界のいろんな通貨が知れるのが面白かったですね。ドルやポンドは一般的としても、ペソとかクルゼーロとか言葉の響きが珍しくて」
真一郎がそう言うと、ギョニ子が頷いて言った。
「そうそう、マーブルとかバーツとかもあったわよね・・それと」
「クローネ!」
珍しくギョニ子をさえぎって、大きな声を出したのはマスターだった。
「ジャスパークローネのクローネも確か通貨だったはずです」
マスターはそう言うと、素早くスマホをチェックして大きく頷いた。
「やっぱりそうですね。ノルウェーやフィンランドがある北欧がクローネを使っています」
「それがどうかしたのかい?」
タコ社長にはまだピンと来ていなかった。他の者も首を傾げている。
「3枠を見てください」
セントウルS
3-04(ドル)チェモア
3-05(外)ジャングロ(森秀行)
「ジャングロのことを同じ森秀行厩舎であることから、ジャスパークローネの影武者と言いました。クローネという通貨に対し、ドルを持つドルチェモアを配置したのでしょう」
みんながうんうんと頷いた。真一郎を除いて。真一郎はスマホを凝視している。
「5番ジャングロが軸になるなら、5番6番7番のコロナ馬券は押さえた方がいいかもしれません」
「しんちゃん、何か見つけたのね?」
ギョニ子が真一郎の顔を覗き込みながら訊いた。
「うん。クローネについて調べてたんだ。クローネとは王冠のことで、英語ならクラウン。そして、イタリア語では『コロナ』というんだって。マスター、ドルチェモアってもしかして・・」
「ビンゴです、しんちゃん。ドルチェはイタリア語。つまり3枠はこうなります」
セントウルS
3-04(ドル)チェモア(ドル=通貨+イタリア語ドルチェ)
3-05(外)ジャングロ(森秀行≒ジャスパークローネ≒通貨)
「イタリア語」で「クローネ」→「コロナ(5.6.7)」
「おいおい、これってもしかしたら3連複1点サインかい?」
タコ社長が興奮して言った。
「3連複を1点で仕留めるのは至難の業ですが、30倍つくのであれば、勝負する価値はありますね」
マスターがそう言うと、みんながうんうんと頷いた。
スナック忘れな草 勝負馬券
セントウルS
3連複:5-6-7(本線)
3連複:5-6-12.14(押さえ)
12番ブトンドール選択の根拠
3-04 (ドル)チェモア(池添謙一)
3-05 (森秀行)
7-11 ブトン(ドール)池添学
7-12 (森秀行)
3枠7枠の「ドル・池添・森秀行」
14番スマートクラージュはくろたんのネタ、岩田望来騎手の2週連続重賞勝利より
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