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スナック忘れな草~2023宝塚記念“タイトルホルダー”の連覇 その2~※4話完結シリーズ

トップ画像はJRAサイトより
https://www.jra.go.jp/

■ 前回のあらすじ

スナック忘れな草のマスターが入院した。付き添うために麗子ママもいない。マスターが残したメモにあった「長澤まさみ+見上愛=佐々木蔵之介」と、「長澤まさみ=タイトルホルダー=JRAスーパープレミアム」という謎の数式ふたつ。

真一郎、ギョニ子、タコ社長の3人は、ディープボンド推しのネタを披露しに来店したくろたんが残したヒント「佐々木蔵之介=100」を頼りに、数式の解明に取り組んでいた。

その時、画像や動画の分析を依頼していた靴磨きの政やんから、YouTube動画のタマモクロスと夏競馬のCMがつながったとの一報が入った。

第1話はこちら
↓ ↓ ↓
https://note.com/finalize_keiba/n/n9cb2c2c86811

■ タマモクロス

2023年6月22日(木)午後6時15分
-東京都某区 シューリペア風間-

靴磨きの政やんこと風間政重は、シューリペア風間の事務室でタマモクロスの動画を確認していた。サイン競馬仲間のタコ社長から、ついさきほどメールで依頼されていたものだ。

JRAのYouTube公式チャンネルにアップされたタマモクロスの動画は、1987年鳴尾記念、1988年京都金杯、1988年阪神大賞典の3本。タマモクロスが制した6つ重賞のうち、GⅠ以外の3競走だ。

ふと、阪神大賞典の動画タイトルが目に留まった。

1988年 阪神大賞典(GⅡ) | タマモクロス・ダイナカーペンター | JRA公式
https://youtu.be/3vK_XYhW1Xk

ダイナカーペンター?なぜ2着馬の名前も記載してあるのだろうと、netkeibaのサイトで重賞の詳細を確認し腑に落ちた。ダイナカーペンターは2着馬ではなく1着馬。つまりこのレースはタマモクロスとダイナカーペンターが1着同着だったというわけだ。

重賞競走における同着を示唆であれば、このレースで間違いないだろう。政やんが次に開いたのは、昨年2022年のエリザベス女王杯。なぜならタマモクロスにはエリザベス女王杯を勝ったミヤマポピーという半妹がいるからだ。

2022/11/13(日)
第47回 エリザベス女王杯
1着:8-18 ジェラルディーナ
2着:7-13 ウインマリリン
2着:7-15 ライラック(同着

GⅠ競走における、史上初の2着同着。これが何かのサインなのだろうか。

【エリザベス女王杯】G1での2着同着は初の珍事 
賞金は2着+3着を2頭で割って4250万円ずつ
https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=213216

■ 邪魔者オルフェーヴル

政やんは次に、夏競馬CMの解析に取り掛かった。長澤まさみと見上愛がトランプで神経衰弱をしているという設定のものだ。

ハートのA (オルフェーヴル)
スペードのK(ゴールドシップ)
ダイヤの (ラッキーライラック)
クラブの (ワグネリアン)

<動画で紹介されるレース>

2017/8/20 
新潟05R メイクデビュー新潟
4-08 ラッキーライラック

2017/7/16 
中京05R メイクデビュー中京
7-08 ワグネリアン

HERO IS COMING.『HEROを当てろ!』篇 夏競馬
https://youtu.be/wKr6WWdPW-A

この4頭を宝塚記念優勝馬と非優勝馬にわけてみる。

●宝塚記念 優勝馬
オルフェーヴル A=1
ゴールドシップ K=13

●宝塚記念 非優勝馬
ラッキーライラック 
ワグネリアン    

「惜しいなあ」

政やんは思わずつぶやいた。タマモクロスの動画から出てきたエリザベス女王杯の2着同着。13番15番。もしオルフェーヴルがいなければ、宝塚記念優勝馬は「K=13」、宝塚記念非優勝馬は7+8で「15」。ぴったりエリザベス女王杯2着同着馬2頭の馬番と合致するところだったのだ。

「オルフェーヴルを無理やり消すとなると・・・」

政やんは腕を組んで考えた。2022年エリザベス女王杯の1着馬ジェラルディーナは大外18番。オルフェーヴルのA=1を「逆1番」と考えればなくはない。ただ、綺麗ではない。どうしたものか・・・

■ 分子と分母

その時、客の入店を知らせるチャイムが鳴った。急いでお迎えに上がると、4歳くらいの男を連れた若い主婦が紙袋を手に下げて立っていた。要件を伺うと靴磨きと撥水加工の依頼だった。

撥水加工は梅雨の時期に増える依頼だ。30分ほど時間がかかることを伝えると、主婦は店内で待っているという。仕上がり待ちの客がくつろげるように設けられたスペースへ案内し、コーヒーとオレンジジュースを出して待ってもらうことにした。

作業が終わりに近づいたころ、男の子の声が聞こえてきた。「ママがかわいそう」と言っているようだ。親子に何かあったのかと作業場から親子の様子をうかがってみたが、レジ横に置いてあったプリントを見ているだけだった。

レジ横に置いてあるプリントは、JRAサイトのトップ画像の一つ、「JRAスーパープレミアム」の画像を印刷したものだ。政やんのサイン競馬情報源は、自分が調べたもの、競馬ファンから仕入れるものが主だが、競馬をまったくやらない人からの情報もある。

JRAサイトより

GⅠポスターやJRAサイトに掲載されている画像を、競馬の知らない素人に見てもらうと、競馬ファンが考えもつかない意見をくれるときがある。裏を返せば、競馬ファンがポスターなり画像なりを見るときは、潜在的に買おうと思っている馬に思考が寄せられてしまうというデメリットがあるわけだ。

「ママがかわいそうとはどういうことでしょうか」

靴磨きと撥水加工が終わった靴を主婦に渡しながら政やんは聞いてみた。

「ああ、さっきこの子が言ったことですね?」

主婦は笑いながら説明してくれた。

「この子・・・陸翔(りくと)っていうんですけど、なぜか日本語の読み書きよりも数字に興味を持ってしまって。最近は分数がお気に入りみたい。陸翔はケーキとピザが好きなんですが、大きいものを家族で分けるときに何分の一ずつねってわけますよね。だから覚えちゃったのかしら」

「それで・・・ママがかわいそうというのは?」

「あ、そうそう。この7月1日のことを言ったみたい。漢字がまだ読めないから、日付じゃなくて分数だと思ったんでしょうね。7/1だから1分の7。分母よりも分子が大きいから、上に重いものが乗っていて、ママがかわいそうと言ったのかしらねぇ」

陸翔君はママにそう尋ねられて、大きな声でうん!と言った。

JRAサイトより

「へえ、そうなんですね。将来は数学者か何かになるのかな?」

「まさかあ。勉強に興味を持ってくれるのはうれしいんですけどね」

主婦と陸翔君は店を出ていった。子供連れの客にはいつも会計の際にキャンディーを2個渡しているのだが、今日は特別に5個渡してあげた。こんなにいいんですかと恐縮する主婦に、全然構いませんよと愛想を振りまいて。

営業中の札を裏返して準備中にした政やんは、すぐに事務室に戻ってパソコンを開いた。とんでもないヒントをくれたぞあの親子は。分母と分子。その手があったか。急いでメールにまとめると、タコ社長に送信した。

■ オルフェーヴルが消える

2023年6月22日(木)午後7時
-東京都某区 スナック忘れな草-

靴磨きの政やんからタコ社長がもらったメールには、こう書かれてあった。

JRAスーパープレミアム
7/1(土)=7月1日 土曜日

分数の「7/1」なら「1分の7=7
分子/分母=子/親

ラッキーライラック)/オルフェーヴル
7/1

ラッキーライラックとオルフェーヴルが親子であることがミソ。この親子を分数にすればオルフェーヴルの1は消えて、ゴールドシップの「13」と、ラッキーライラック&ワグネリアンの「15」が残る。

すなわち2022エリザベス女王杯の2着同着ゲートと一致する

●宝塚記念 優勝馬
ゴールドシップ K=13

●宝塚記念 非優勝馬
ラッキーライラック /(オルフェーヴル A=)=
ワグネリアン    
7+8=15

2022/11/13(日)
第47回 エリザベス女王杯
1着:8-18 ジェラルディーナ
2着:7-(13)ウインマリリン
2着:7-(15)ライラック(同着

よって、タマモクロスの動画と夏競馬CMの両方が、2022エリザベス女王杯の2着同着を示唆していると思われる。

なお、タマモクロスが勝った宝塚記念は1988年。昭和最後の宝塚記念。元号の切り替わりにも注意か。

■ 2019年のJRA競馬

2023年6月23日(金)午後1時
-東京都某区 真一郎が勤務する病院-

休憩時間を利用し、真一郎は言語訓練室でパソコンを開いていた。昼食休憩は原則12時半から13時半まで。昨日は政やんから大きな収穫があったものの、例の数式に関してはこれといった進展はなかった。

長澤まさみ+見上愛=佐々木蔵之介(100?

佐々木蔵之介を、くろたんが言うように仮に「100」とすると、長澤まさみと見上愛の合計も「100」ということになる。1と99や2と98など、100を構成する整数の組み合わせは多数あるが、おそらく10と90、20と80など、区切りのいい数字同士の組み合わせだろうというのが、真一郎を含めた3人の考えだった。

政やんが言っていた元号の移り変わり。ここに数式を解くヒントはないだろうか。タマモクロスが勝ったのが昭和最後の宝塚記念で1988年。イナリワンが勝った翌1989年の宝塚記念が、平成最初の宝塚記念だった。

直近の元号の切り替わりと言えば、まだ比較的記憶に新しいのが2019年だ。4月30日までが平成、5月1日からが令和。

真一郎が目を通していたのは「2019年の日本競馬」というWikipediaのまとめページだった。

Wikipedia 2019年の日本競馬
https://ja.wikipedia.org/wiki/2019年の日本競馬

丁寧に最初から読んでいく。

あ!すぐに区切りのいい数字が見つかった。中山記念につけられた「30」という数字だった。

2019/2/24(日)
天皇陛下御在位30年慶祝
第93回中山記念
1着:1-01 ウインブライト(松岡正海
2着:3-03 ラッキーライラック
3着:6-07 ステルヴィオ

勝ったウインブライトの鞍上は松岡正海。字は違うが長澤まさみと同じ「まさみ」だ。

長澤まさみ(30)+見上愛(70)=佐々木蔵之介(100

「天皇陛下御在位30年慶祝」の「30」が長澤まさみだとするなら、必然的に見上愛は「70」ということになる。そして、夏競馬のCMにも出てきたラッキーライラックが2着。何かがつながりそうだった。

■ 御成婚30周年

2023年6月23日(金)午後1時半
-東京都某区 ギョニ子の勤務する病院-

ギョニ子は、その日の受け持ち担当である病室のひとつにいた。80代の女性患者がいる個室だ。血圧や体温などのバイタルを測定し、体調に問題がないことを確認した。バイタル測定のあいだ、患者はテレビのニュースが気になるようだった。

「なにか面白いニュースがありましたか?」

ギョニ子が笑顔で尋ねると患者はうなずいた。

「面白いというか懐かしいというか・・・天皇皇后両陛下のインドネシア訪問のニュースを今やってるのよ。今年は結婚して30年だものねえ。表向きは公務ということなんでしょうけれど、フルムーンみたいなものかしら」

そう言って患者は笑った。患者の長男も天皇皇后両陛下と同じ1993年に結婚されたため、今年が結婚30周年にあたることを知っていたという。長男夫婦は真珠婚祝いの旅行で5月に北海道旅行を満喫し、写真をたくさん送ってくれたそうだ。

「へえー。パール婚ってやつですね」

患者にそう言いながら、ギョニ子は頭の中で考えていた。天皇皇后両陛下ご成婚30周年記念。確か宝塚記念のゲストは見上愛だから、あの数式の見上愛には「30」が該当するのではないか。

長澤まさみ(70)+見上愛(30)=佐々木蔵之介(100

見上愛が「30」なら、必然的に長澤まさみは「70」ということになる。よし、このお土産を持ってスナック忘れな草に行こう。

真一郎の仮説
長澤まさみ(30)+見上愛(70)=佐々木蔵之介(100

ギョニ子の仮説
長澤まさみ(70)+見上愛(30)=佐々木蔵之介(100

果たしてどちらが正しいのだろうか・・・

~2023宝塚記念“タイトルホルダー”の連覇 その2~
―完― ※4話完結シリーズ

第3話 予告

長澤まさみと見上愛。どちらが「70」なのか決着がついた。

長澤まさみ=タイトルホルダー=JRAスーパープレミアム

この数式の意味とは?

第3話はこちら
↓ ↓ ↓
https://note.com/finalize_keiba/n/n9e24955e8b1f

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