スナック忘れな草~北の大地・2024函館記念注目馬~
トップ画像引用:昭和長屋の酒ともんじゃと昭和歌謡曲
■ 単複バトル惨敗
2024年7月7日(日)午後4時
-東京都某区 スナック忘れな草-
スナック忘れな草の店内は、どんよりとした重い雰囲気が漂っていた。
今日行われた3場メイン。五稜郭ステークスのキミノナハマリアこそ1着だったものの、プロキオンステークスのウェルカムニュースが10着、七夕賞のフェーングロッテンが13着と見せ場なく敗れた。その結果、くろたんとの単複バトルにおいては残高22,810円と、資金を大きく減らしてしまったのだ。
「フェーングロッテン、どうもすみませんでした・・」
真一郎がか細い声で謝罪した。自信を持ってプレゼンしたフェーングロッテンが、惨敗したことに対するものだ。
「まあいいってことよ。ナイスチャレンジだったぜ!」
タコ社長が重苦しい雰囲気を断ち切るような、明るい声で言った。
「なかなか来ねえから穴なんだ。毎週毎週当たるのなら、俺らはとっくに億万長者だぜ」
「社長さんの言う通りだわ」
麗子ママがみんなに春雨のサラダを配りながら言った。店からのサービスだという。
「固くいってたらキングズパレスやヤマニンウルス、スレイマンあたりを指名できたかもしれないけど、それ以上の期待値を求めて挑戦した結果だもの。期待値を積んでいけば、またどこかで爆発するわよ」
「期待値を積む・・・ですか」
下を向いていた真一郎が顔を上げた。
「そうですね!夏競馬は始まったばかり。来週も置きにいかず攻めていきましょう!」
ギョニ子がその意気よと真一郎の左肩を叩き、マスターも口元に笑みを浮かべながら大きく頷いた。
■ データ分析
2024年7月8日(月)午後7時
-東京都某区 スナック忘れな草-
みんなが揃ったのを確認すると、マスターがくろたんのポストを紹介した。
「土日好調だったくろたん。データ分析サインを公開してくれています」
みんながなるほどと声を挙げた。
「函館2歳ステークスは、唯一4番人気で勝ち上がったカルプスペルシュというわけですね?」
真一郎が言った。
「一頭だけ浮上するというのがいいですね!夏競馬のCMのすいかとも一致しますし」
みんながうんうんと頷いた。
くろたん 函館2歳S 注目馬
カルプスペルシュ
「こっちは函館記念を解析してみない? ちょっと違和感を覚えるデータがあるの」
そう提案したのは麗子ママだった。函館記念の、「GⅠ・GⅡにおける実績がポイント」というデータのところで、紹介している切り口が怪しいという。
「『前年以降のJRAの右回りコースかつ3000メートル未満のGⅠ・GⅡにおいて11着以内となった経験がある馬だった』・・・まあ、この手のデータ分析ってだいたいそうなんだけれど、見栄えがいいデータを作るために、条件が中途半端なものになるのよ」
「10着以内じゃなくて11着以内・・・この部分かしら? 10着以内にしちゃうとあまり綺麗なデータにならないとか?」
ギョニ子が言った。麗子ママが頷いて続ける。
「そんなところでしょうね。ところで、『3000メートル未満のGⅠ』というところと、『11着以内』というところ。ちょうどはみ出してしまう馬2頭が、50音順で並んでいるのよ」
函館記念 登録馬(50音順)
トップナイフ(前走:【芝3000・GⅠ】)
ハヤヤッコ (前走:【12着】)
みんながおおという声を挙げた。
トップナイフの前走菊花賞。『3000メートル未満のGⅠ』は3000メートルを含まないので、トップナイフのこのレースは対象外ということになる。
一方のハヤヤッコのほうも、前走の大阪杯12着は、『11着以内』からはみ出るため対象外のレースとなる。
「50音順で並んでいるというのが怪しいですね」
マスターが言った。
「どちらかが当たりなのかもしれません」
みんながうんうんと頷き、まずはトップナイフとハヤヤッコをマークすることにした。
■ 北の大地
10分間の休憩中、パソコンを操作し続けていたマスターが、みんなが揃ったところで口を開いた。
「函館記念のデータ分析コピー。これを過去のコピーと照合すると、さっき挙げた2頭からはトップナイフがよさそうですよ」
2024 函館記念
「北の大地にチャンピオン候補が集うサマー2000シリーズ第2戦」
<北の大地>
※2019~
2022 クイーンS
「秋の大舞台を目指す牝馬が北の大地に集結」
テルツェット
2023 札幌記念
「国内外の大舞台を目指す精鋭が北の大地で激突」
プログノーシス
2着:トップナイフ(昆貢)
<サマー2000シリーズ第2戦>
※2019~
2019 函館記念
「波乱が続くサマー2000シリーズ第2戦」
マイスタイル(昆貢)
みんながなるほどと頷いた。マスターが解説する。
「文言『北の大地』が過去に使用されたのは、2019年以降だと2例。いずれも札幌重賞で、函館重賞は該当なしでした。昨年の札幌記念の2着がトップナイフ」
みんなが頷く。
「そして、文言『サマー2000シリーズ第2戦』のほうは、2019年の函館記念と合致します。勝ち馬マイスタイルが、トップナイフと同じ昆貢厩舎でした」
2019 函館記念
マイスタイル(昆貢)
2023 札幌記念
2着 トップナイフ(昆貢)
2024 函館記念
トップナイフ(昆貢)
「トップナイフ・・・昨年の札幌記念は人気がなかったのよね・・・・・・」
ギョニ子がそう言うと、みんなが黙って頷いた。
昨年の札幌記念。札幌を舞台としたある猟奇的な殺人事件を、嫌でも思い出させるトップナイフの激走だったのだ-
■ 真珠婚
トップナイフの他にも、気になる馬がいると言ったのはタコ社長だった。エンパイアウエストの前走パールステークスが、なんとなく引っかかるという。
函館記念
エンパイアウエスト
(前走:パールS 1着)
「今年じゃなくて昨年なんだが、天皇皇后両陛下はご成婚30周年だったよな? つまりはパール婚、真珠婚ってわけだ」
みんながなるほどと頷いた。昨年の6月9日。天皇皇后両陛下はご成婚30周年を迎えられていた。
「netkeibaでパールステークスを調べてみたら、2020年の新潟以来の施行だったぜ」
「新潟?」
ギョニ子が口を挟んだ。
「パールステークスって、ずっと京都じゃなかったっけ?」
その質問には、マスターが答えを教えてくれた。
「そうですよ、今日子ちゃん。昔は東京や中京でも開催があるパールステークスですが、2010年以降はずっと京都開催でした。この2020年は、コロナ感染対策のために競走馬の移動が制限された関係で、新潟での開催に変更になっていたのです」
「へえー!そういうことだったのね・・・」
ギョニ子は自分でもスマホで調べているようだった。
「今年の京都パールステークスは、2019年以来の京都開催だったわけね・・・あら? 今年は距離2000メートルで施行されたようだけど、距離2000のパールステークスって初めてじゃないかしら?」
ギョニ子の質問にパソコンを素早く操作したマスターは、すぐにその指摘が合っていることを見つけてくれた。
「そのようですね、今日子ちゃん。函館記念と同じ距離に延伸された真珠婚を示唆するパールステークス。勝ち馬エンパイアウエストには、なんらかの役割があるかもしれませんね!」
みんながなるほどと頷いた。麗子ママが続ける。
「上皇陛下と上皇后陛下。平成から令和に移行した2019年の4月10日に、ご成婚60年、ダイヤモンド婚を迎えられているわ!」
「函館記念は、先週の七夕賞同様、区切りの第60回。人間でいえば還暦であり、夫婦でいえばダイヤモンド婚。真珠婚を示唆するパールステークスの勝ち馬エンパイアウエスト。ちょっと注目したいわね!」
みんながうんうんと頷き、函館記念の注目馬2頭が決まった。
スナック忘れな草
函館記念 注目馬
エンパイアウエスト
トップナイフ
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