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ラブリーデイ~競馬小説カフェ・ド・イーグル・2025中山記念・仁川S~

トップ画像引用:阪神競馬場リニューアルオープン特設サイト


■ シックスセンス

2025年2月27日(木)午前6時半
-岩手県某市早起村 カフェ・ド・イーグル-

早起村の朝は早い。カフェ・ド・イーグルには今日もイカ社長の姿があった。

「モーニングBセット・・・おっと!サービスのやつね」

「わざわざ言わなくても大丈夫ですよ」

ミスターが苦笑する。先週、フェブラリーステークスの見解を披露した際、もし予想が外れたら、一ヶ月間モーニングをサービスするという約束をしたのだった。

結果、ミスターが推したエンペラーワケアは馬券に絡むことができず、イカ社長、ケチャ子、貫一郎の3名は、一ヶ月モーニングサービスの恩恵を受けることとなった。

「いやいや、万が一、金田一ということがあるからよう」

イカ社長がニヤリと笑った。

「サービスするかわりに、何が入ってるかわからないわよ」

聖子ママがイカ社長の前にコーヒーを置きながらいった。

「よせやい! うちにはまだまだローンが残ってるんでい!」

イカ社長の悲壮感漂う物言いに、店内が笑いに包まれた。

「ところでよう・・」

モーニングをあらかた食べ終わったイカ社長が、スマホを操作しながらいった。

「中山記念に登録のシックスペンス。去年もなにかのレースでこの馬を話題にしたと思うんだがなんだったかなあ・・」

「そうですねえ・・」

ミスターが腕を組んで考える。

「ディープインパクト世代のシックスセンス。そんな話をしましたよね・・・」

つかめそうでつかめない糸を手繰り寄せるような、そんなもどかしい時間が続いた。

「おっと! わけえもんからメールだ。今日はちょいとばかり忙しいんだ」

イカ社長はありがとよと手を挙げて店を出ていった。

■ リニューアルオープン

その日の夜。バータイムのカフェ・ド・イーグルにはいつもの常連客が揃っていた。

「うーん・・」

スマホを見ながらうなっているのは貫一郎だった。右手で握られた生ビールのジョッキは、5分ほど動いていない。

「貫ちゃん、生ビールから湯気が出てるぜ!」

カウンターの反対からイカ社長が茶化す。

「ええとですねえ、土曜阪神10Rの阪神競馬場リニューアルオープン記念。なんでメインじゃなくて10レースなのかなと思って・・・」

「10レースじゃだめなの?」

左隣のケチャ子がいった。

「どうして11レースにこだわるんですか! 10レースじゃだめなんですか!」

ジェスチャーを交えて熱っぽく語る様子は、モノマネとしては似ていないが、ある政治家の「事業仕分け」でのセリフを思い出させた。ケチャ子も当然、それを意識している。

「いや、でもですね!」

貫一郎のセリフも芝居がかっていた。

「だって2023年の4月22日、京都競馬場グランドオープン記念はメインレースだったんですよ! リニューアルオープン記念だってメインでいいじゃないですか!」

まあまあおふたりさんと、聖子ママが笑いながら止めに入った。ケチャ子と貫一郎が本気でやりあっているのではなく、ふさげているのは承知の上だ。

「あえて10レースにしたってことは、それに意味があるからじゃない? ねえミスター」

■ 10R施行のGⅠ

聖子ママから水を向けられたミスターは、なるほどと頷いてパソコンを操作しだした。

「10R施行のJRAGⅠ。1986年以降だと障害GⅠも含めて211のレースがヒットします」

「けっこうあるものなのね・・」

ケチャ子がいった。ミスターが続ける。

「そうですね、これだと多すぎるので平地GⅠ、かつ重複勝利馬に絞ってみましょうか」

みんながミスターに注目する。

「10レース施行の平地GⅠを2勝以上しているのは、最近だとオルフェーヴル、ブエナビスタ、ドリームジャーニー、ウオッカ、そしてディープインパクト・・」

ディープインパクトか!」

イカ社長が口を挟んだ。朝、ミスターとのシックスペンスの話題に、ディープインパクトが登場していたのを思い出したからだ。

■ ディープインパクト

イカ社長から朝の話題についてきかされた常連客は、それぞれスマホやパソコンを操作しだした。数分後、あっと声を挙げたのはケチャ子だった。

「シックスセンス・・・中山記念に出るシックスペンスじゃなくて、皐月賞でディープインパクトの2着だったシックスセンスのほうね」

みんながケチャ子の次の言葉を待った。

「意外にも重賞1勝しかしてないの。というか、生涯で勝ったのが未勝利とその重賞だけなんだけれどね・・・開催回数の99が今週の中山記念と一致するのよ!」

2006(第99回京都記念 10頭
1-01 シックスセンス正1・正11
※シックスセンス 最後の勝利・ラストラン・唯一の重賞勝利

3/2(日)
第99回)中山記念(GⅡ)
シックスペンス

99回馬名の一致! これは面白いですね!」

ミスターがポンと手を叩いていった。

「きっと何かサインがあるはずです。シックスペンス自身か、正1番、正11番・・・あるいはほかのなにかか・・」

みんながうんうんと頷いた。ミスターが続ける。

「京都記念と中山記念は、同じ競馬場タイトル重賞の古馬GⅡだけでなく、昔は春秋開催だったという点でもペアレースといえます」

このミスターの気づきが、のちにとんでもない爆弾サインを発見するきっかけとなるが、それは土曜夜まで待たなければならない。

■ インティライミ

「ディープ三冠の2着馬といえば・・」

イカ社長が腕を組んでいった。

「皐月賞がさっきでてきたシックスセンス、ダービーがインティライミ、そんで菊花賞がなんだったかなあ・・」

その声にかぶせるように、聖子ママがあっと声を挙げた。カウンターの常連客だけでなく、テーブル席の客までもが振り返る大きな声だった。

「社長さんナイスヒント! 貫ちゃん、阪神競馬場リニューアルオープンが、なんでメインじゃなく10レースなのかわかったかも!」

聖子ママはそういうと、休憩室がある店の二階へと階段を昇っていった。

数分後、膝上20センチはあろうかという超ミニのスカート姿に着替えた聖子ママは、店の中央に立つと右手と左手を交互に挙げる動作をし始めた。伝説の「パンチラシンキング」が今春初の発動だ。

説明しよう。「パンチラシンキング」とは、パンチラをあえて見せつけることで、店内の男性客からの熱い視線と声援でボルテージを最高潮に高め、究極の思考回路を作り出す聖子ママの奥義なのであーる。

※ 1分18秒 

「フェブラリーステークスにインティライミがいたわ!」

意味がわからないみんなが、聖子ママの説明を待った。

「これを見てみて」

フェブラリーS
5-(09)コスタノヴァ
※2005ディープインパクトの神戸新聞杯馬番

6-12 サンライズ(ジパング)2着 ★インティライミの隣
※アドマイヤ(ジャパン)(ディープ三冠菊花賞2着馬)

(7-13)ジャス(ティンミラ)ノ=2024皐月賞馬
ティンミラ)≒(インティライミ)(ディープ三冠ダービー2着馬)

7-14 ミッキーファイト 3着 ★インティライミの隣
※2005ディープインパクトの皐月賞馬番

ディープインパクトを使ったフェブラリーS
神戸新聞杯ゲート      1着
アドマイヤ(ジャパン)(菊花賞)2着
インティライミ(ダービー)の両隣 2.3着

<ディープインパクト 三冠ロード>
皐月賞
ダービー
神戸新聞杯★
菊花賞

「ゆっくり説明するわね。まず勝ったコスタノヴァの9番は、ディープインパクトの神戸新聞杯の馬番だったの。神戸新聞杯は、ディープインパクトのダービーと菊花賞の間のレースね。皐月賞から菊花賞の中で、唯一GⅠじゃなかったレース」

みんながうんうんと頷いた。

「2着サンライズジパングは、ジパングジャパンの意味だから、馬名が菊花賞2着馬のアドマイヤジャパン。ここまではいいわね?」

みんなが頷く。

「インティライミの使い方はかなり捻ってたわね・・・社長さんがおっしゃったように、インティライミの名前は昨年のダービーでシックスペンスを狙ったときに、話題に出たんだったわ・・・ジャスティンミラノという馬名の中に、そっくりインティライミが入ってるって」

「ああ! なんか思いだした気がします!」

貫一郎が叫んだ。聖子ママがうなずいて続ける。

「そうなの。馬名にインティライミを含むジャスティンミラノは、昨年の皐月賞を13番で勝った。だから12番サンライズジパングと14番ミッキーファイトは、ある意味インティライミの隣同士ってわけ」

ミスターが大きく顎を引いてあとを続ける。

「そしてミッキーファイトの14番は、ディープインパクトの皐月賞ゲートだったと?」

聖子ママがにっこりと笑ってうなずく。

「さあここから締めに入るわよ」

みんなが再度聖子ママに注目する。

「阪神競馬場リニューアルオープンを、メインではなく10レースに組んだことで、ディープインパクトが出てきたわよね? 10レース施行のGⅠを2勝しているから」

<ディープインパクト 10R施行GⅠ勝利 2勝>

2005 東京10R 
東京優駿(日本ダービー)

2006 東京10R 
ジャパンカップ

「そして、阪神競馬場リニューアルオープンのレース条件は『阪神芝3000』・・・この条件で施行されたレアなGⅠがあるわよね?」

「菊花賞だ! 最近だと2021、2022の阪神代替菊花賞だな?」

「ご名答よ、社長さん。2021年がタイトルホルダー、2022年がアスクビクターモア・・・この2頭の共通点は・・・」

「たあーー!」

ミスターが大声を出した。おでこをぺシャリと叩いて天を仰ぐ。沈着冷静なミスターにしては珍しい行動だ。

弥生賞ディープ記念! タイトルホルダーもアスクビクターモアも、ディープ記念を勝ってたんですよ!」

<報知杯弥生賞ディープインパクト記念>

2021 タイトルホルダー
※同年「阪神代替」菊花賞制覇

2022 アスクビクターモア
※同年「阪神代替」菊花賞制覇

3/1(土)阪神10R 
阪神競馬場リニューアルオープン記念
阪神芝3000」=2021-2022 阪神代替菊花賞
→ 阪神代替菊花賞馬2頭が勝ったディープ記念を示唆

3/1(土)
阪神競馬場リニューアルオープン記念
ディープ記念を示唆

3/9(日)
報知杯弥生賞ディープインパクト記念

「番組表的にも合ってるわね。ディープ記念を示唆する阪神競馬場リニューアルオープン記念でシン阪神競馬場がオープンし、その翌週にディープ記念がある」

みんながなるほどと頷いた。

■ シックスペンス

「そうなると・・」

ケチャ子がいった。

「ディープインパクト三冠の要素をたっぷり使った翌週である今週。来週にはディープ記念がある・・・中山記念のシックスペンスにはどうしたって注目しなきゃね」

「でしょうね」

ミスターが大きく頷いた。

「おそらく1番人気でしょうが、対抗以下にはおとせないでしょう。さあ、ちょっと遅くなってしまいましたから、続きは明日にしましょう」

ミスターのその言葉で、その日はお開きとなった。

カフェ・ド・イーグル
中山記念 注目馬 
シックスペンス

■ ダノンキングリー

2025年2月28日(金)午後7時半
-岩手県某市早起村 カフェ・ド・イーグル-

仕事で遅くなったケチャ子の到着を、もっとも心待ちにしていたのは貫一郎だった。生ビールは2杯目に突入している。

「ごめんごめん、遅くなっちゃったわ」

「景子ちゃん、お疲れ様でした」

聖子ママからおしぼりをもらったケチャ子は、スツールに腰をおろし丁寧に手をぬぐった。まだ息があがっている。

ケチャ子が生ビールを半分ほど飲み、人心地ついたところで貫一郎が口を開いた。

「先週のフェブラリーステークスは天皇誕生日の施行、令和になってから二度目のことでした」

みんながうんうんと頷き、貫一郎に注目する。

「前回天皇誕生日フェブラリーがあった2020年。その翌週の中山記念を見て驚きました!」

2020/2/23(祝・日)天皇誕生日
フェブラリーS
(外)モズアスコット

翌週 3/1(日)中山記念
ダノン(キング)リー【横山典弘≒天皇陛下

~~~

2025/2/23(祝・日)天皇誕生日
フェブラリーS
コスタノヴァ(キング

翌週 3/2(日)中山記念 ?

みんながおおという声を挙げた。

「貫ちゃん、なるほどだぜ!」

イカ社長がいった。

「前回天皇誕生日フェブラリーだった2020年、中山金杯でキング馬名のダノンキングリーが勝った。そして今年、二度目の天皇誕生日フェブラリーでキング騎手のコスタノヴァが勝った。そういうこったな?」

貫一郎が大きく顎を引く。

「そういうことです。ならば2020年のフェブラリーステークスが、今年の中山記念を教えると思うんです」

<天皇誕生日フェブラリー 2020・2025>

2020 中山記念   → 2025 フェブラリー
2020 フェブラリー → 2025 中山記念?

2020/2/23(祝・日)天皇誕生日
フェブラリーS
6-12(外)モズアスコット

2025 中山記念
6-12)ボッケリーニ

「単純に12番のボッケリーニでしょうか?」

ミスターが尋ねると、貫一郎はニヤリと笑ってかぶりを振った。

「いえ、となりの11番グランディアです。モズアスコットのモズは漢字で『百舌鳥』。『』が入っています。今年の中山記念は第99回・・・12番が100なら、ひとつ前の11番が99です!」

2020/2/23(祝・日)天皇誕生日
フェブラリーS
6-12(外)モズアスコット(百舌鳥=100

2025 【第99回】中山記念
6-11 グランディア(99
6-12 ボッケリーニ(100

みんながおおという声を挙げ、貫一郎に賛辞を贈った。

「貫ちゃん、やるときはやるじゃない!」

ケチャ子が貫一郎の頬にキスの雨を降らし、店内がどっと沸いた。

一気に本命候補として浮上した11番グランディアだが、とどめのサイン発見は明日土曜日の考察で出るのであった・・・(明日の小説で発表)

カフェ・ド・イーグル
中山記念 注目馬
11番 グランディア
〇1番 シックスペンス

■ 仁川ステークス

10分間の休憩後、土曜のレースを検討しようということになった。面白い発見をしたのはケチャ子だった。

「阪神競馬場がリニューアルオープン・・・特設サイトに何かヒントがあると思うの」

みんながスマホやパソコンでそのサイトを開いた。

「昨日、ディープインパクトの話題が出たでしょ? ディープインパクトって主要4場の中で、阪神施行のGⅠだけ未勝利だったのよ」

みんながおおという声を挙げた。

阪神ではデビュー戦を含め3戦3勝と負けがないディープインパクトであるが、宝塚記念は京都開催だったために阪神GⅠは未勝利であった。

「いいところに気が付きましたね」

ミスターがいった。

「昨年、ブローザホーンが勝った京都代替宝塚記念。ディープインパクトが勝った2006年以来、18年ぶりの京都開催でした」

2006 京都代替 宝塚記念
ディープインパクト

2024 京都代替 宝塚記念
ブローザホーン
京都開催は18年ぶり

ケチャ子が続ける。

「んでね。特設サイトにファンからの声が載ってるんだけど、ディープインパクトを思わせるコメントがあるの」


阪神競馬場リニューアルオープン 特設サイト

「ね? 『インパクト強すぎ阪神競馬場といえばそのレースを思い出します。リニューアル楽しみにしています♪』 インパクト強すぎ、阪神、リニューアル・・・怪しくない?」

みんながなるほどと頷いた。

「・・ってことでコメントにある2015年の宝塚記念がこれ!」

2015【第56回】宝塚記念
1着:8-16 ラブリーデイ(素晴らしいお天気の一日)
2着:3-06 デニムアンドルビー
3着:1-01 ショウナンパンドラ

ケチャ子が続ける。

第56回・・・枠の色なら黄色・・・CMソングの緑黄色社会よね?」

みんながなるほどと頷いた。

「ラブリーデイは『素晴らしいお天気の一日』・・・阪神競馬場リニューアルオープンの日の、メインレースにふさわしい名前だわ」

3/1(土)阪神11R 仁川S(L)
リニューアルオープン最初のメインレース

3-05 ダイシンピスケス(2024仁川S 1着
3-06 シゲルショウグン
4-07 ウェルカムニュース(2024仁川S 2着

8-16 カズペトシーン

「ラブリーデイの宝塚記念をズバリなら、6番シゲルショウグンと16番カズペトシーン。6番シゲルショウグンは、昨年の仁川ステークスの1.2着馬にサンドされてるの」

みんながなるほどと頷いた。

5分後、16番カズペトシーンの推し材料を見つけたのはイカ社長だった。

「競馬ラボってサイトがあるだろ?」

みんなが頷く。

「10レースに阪神競馬場リニューアルオープン記念。『10R・リニューアル』でレース検索をしたら、一昨年の東京競馬がヒットしたぜ!」

2023/11/5(日)東京【10R】 
馬事公苑【リニューアルオープン記念
1着:8-13(外)アナンシエーション
2着:6-10(地)カズプレスト(吉田和美
3着:4-05 ジョディーズマロン

2025/3/1(土)阪神【10R】 
阪神競馬場【リニューアルオープン記念

同日メイン 仁川S(L)
8)-16(カズ)ペトシーン(吉田和美

「馬事公苑のほうは1着8枠、2着吉田和美。8枠カズペトシーンは1.2着馬の合体パターンね」

みんながなるほどと頷き、カフェ・ド・イーグルの勝負馬券が決まった。

カフェ・ド・イーグル
仁川S 勝負馬券
◎6番 シゲルショウグン
〇16番 カズペトシーン
単勝:6番、16番
枠連:3-8
馬連・ワイド:6-16

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