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競馬小説カフェ・ド・イーグル~終戦記念日・2025小倉牝馬S~

トップ画像引用:ヤフーニュース


■ 枠順確定

2025年1月24日(金)午後7時
-岩手県某市早起村 カフェ・ド・イーグル-

「なにはともあれ一安心だな」

イカ社長が何度も頷きながらいった。聖子ママがそうなのよと相槌を打つ。コロナ感染で入院していたミスターが今日の午前10時に退院し、今週いっぱいは念のため自宅で療養するのだという。

「貫ちゃんのバーテン姿も今週いっぱいで見納めね」

カウンターに両腕を乗せたケチャ子が、少し茶化すようにいった。

「このまま僕がカフェ・ド・イーグルのミスターになってもよかったんですがね・・・まあ、お呼びがかかればいつでもまた馳せ参じますよ」

えっへんと貫一郎が胸を張り、店内は明るい笑いに包まれた。

「それはそうと小倉牝馬ステークス。注目の5枠にはいい面子が入ったな」

イカ社長がそういうと、店内は一気に予想検討モードへ突入した。

2024 ホープフルS
5-09()リオー()スマ()ル →「アイン
5-10 アスク(シュタイン

5枠両頭で「アインシュタイン

小倉牝馬S
5-09 クイーンズウォーク
5-10 アスコルティアーモ

今年のテーマが「終戦80周年」と読んだカフェドイメンバー。京都牝馬ステークスが愛知杯を介し、小倉牝馬ステークスへと名称変更したことを受け、「原爆投下」がサブテーマだとの結論に達した。

なぜなら、京都は文化的価値が高いという理由で、小倉は原爆投下当日の悪天候により投下地が目視できないという理由で、それぞれ災難を免れていたからだ。

牝馬ステークスのグループから京都の名前が消滅したことは、京都が原爆投下候補地から除外されたことを暗示するし、小倉牝馬ステークス誕生は京都牝馬ステークス消滅があってこそだ。

また、ドイツから亡命したユダヤ人物理学者レオ・シラードが、同じ亡命ユダヤ人のアインシュタインの署名が入った手紙を当時のアメリカ大統領ルーズベルトに送ったことがきっかけで、原爆を開発することが目的である「マンハッタン計画」が始まっている。

以上のことから、「原爆投下」を暗示する第1回小倉牝馬ステークスが開催される今週、ホープフルステークスの出馬表に仕込まれた「アインシュタイン(原爆開発関連者)」枠が作動する可能性高しと目論んだのである。

2024 ホープフルS
5枠両頭 → 「アインシュタイン

小倉牝馬S
5-09 クイーンズウォーク
5-10 アスコルティアーモ

■ センテニアル

「人気はクイーンズウォーク上位・・・というかたぶん一番人気だろうが、前走シンガリ負けの馬をあえて一番人気のここで買うのはどうなんだろう?」

イカ社長の疑問にみんなが頷いた。重賞2勝のクイーンズウォークの力量上位は明らかだが、負けてなお一番人気では妙味に欠ける。

「ならば断然アスコルティアーモのほうですよね?」

貫一郎がみんなに同意を求めるようにいった。

「18頭立ての10番は正100番。3走前のセンテニアルパークステークスは『100周年』の意味。社長さんがいってましたよね? 今年は昭和100年だって」

令和7年 = 昭和100年

小倉牝馬S 18頭
5-10 アスコルティアーモ(正100
(3走前:センテニアル・パークS 1着)

センテニアル(Centennial)=「 100 年の、 100 周年の」

みんながおおという声を挙げた。

センテニアル・パークとは、2023年にグランドオープンした京都競馬場の愛称である。淀に競馬場が開設されて2025 年 で 100 周年を迎えることにちなんで名付けられたものだ。

「難癖をつけるなら・・」

ケチャ子が申し訳なさそうにいった。

「アスコルティアーモの鞍上は津村明秀。中堅騎手の域を出ない彼が、2週連続重賞Vなんて派手なことするかしら?」

京成杯
2-02 ニシノエージェント津村明秀
11番人気 1着 単勝:4,940円

エージェント = 秘密工作員
オッペンハイマー → ロシアのスパイである嫌疑がかけられる

小倉牝馬S
5-10 アスコルティアーモ(津村明秀

■ 津村明秀

同棲相手の思わぬ反撃にしばらく沈黙すると思われた貫一郎だったが、ケチャ子の意地悪な質問は想定内だったようで、ニヤリと笑っていった。

「同じ津村明秀だからこそ、『終戦80周年』ネタにはぴったりですよ。ニシノエージェントは2番、アスコルティアーモは10番・・・2番10番20・・・昭和20年です」

02番 ニシノエージェント(津村明秀)
10番 アスコルティアーモ(津村明秀・5枠10番→15

2番と10番 → 20番(に・じゅう)

終戦記念日
昭和20年(1945)8月15

5-10(≒15)アスコルティアーモ(54キロ)

「なるほどなあ」

イカ社長がいった。

「ふたつの重賞・・・それも先週の日曜と明日なら連続した開催日・・・それで昭和20年。5枠10番は15日・・・するってえと相手に8番か8枠をつれてくりゃあ終戦記念日の日付が完成だな!」

小倉牝馬S
4-07 シンティレーション(閃光
4-(08)エミュー   (感動した

8-16 コスタボニータ
8-17 アリスヴェリテ(2024マーメイドS 1着)
8-18 ゴールドエクリプス

「4枠の両頭は意味深だわ・・」

聖子ママがやや声をひそめていった。

「あたしも今日の休憩時間に映画『オッペンハイマー』を観たんだけど、原爆実験の閃光と携わった人たちのうっとりとした表情・・・象徴的なシーンだったの」

1945年7月16日、アメリカ合衆国ニューメキシコで行なわれた人類最初の核実験、いわゆる「トリニティ実験」。

想像以上の威力、そして閃光。この歴史的な“成功”が、一か月後の人類への使用を決断させてしまう。

■ 田中健

10分間の休憩後、8を使うなら8枠も捨てがたいといったのはケチャ子だった。牝馬重賞路線改革から、最後のマーメイドステークス勝利のアリスヴェリテは外せないという。

小倉牝馬S
8-16 コスタボニータ
8-17 アリスヴェリテ(2024マーメイドS 1着
8-18 ゴールドエクリプス

マーメイドS → 府中牝馬S(GⅢ)

最後のマーメイドステークスを勝ったアリスヴェリテ。第1回の小倉牝馬ステークスとの橋渡し役を務める可能性はあるんじゃない? 第1回1日目、小倉11レース・・・1並びのレースに柴田裕一郎はお似合いよ」

1/25(土)
1回小倉 1日目
小倉11R 第1回 小倉牝馬S
8-17 アリスヴェリテ(柴田裕一郎
※勝てば柴田裕一郎は重賞“1勝目

みんながなるほどと頷いた。

「それにね、広島と長崎出身の騎手を調べてみたの。長崎出身は白浜雄造しかいなくて現在療養中。広島は田中健と岡田祥嗣なんだけど、田中健の明日のゲートが異常なの」

<広島・長崎 出身騎手>

長崎:白浜雄造(現在療養中)
広島:岡田祥嗣田中健

岡田祥嗣
1/25(土)騎乗なし
1/26(日)1鞍
中京5R ミスサンシャイン

田中健
1/25(土)4鞍
中京01R 8−16(16頭・逆1)
中京03R 8−15(16頭・逆2)
中京04R 8−15(16頭・逆2)
中京11R 8−14(14頭・逆1)

1/26(日)1鞍
中京5R エアビッグマム(笹田和秀

みんながおおという声を挙げた。土曜日の田中健は4鞍すべてが8枠。しかも正逆1番と2番が2鞍ずつだ。

小倉牝馬S
8-16 コスタボニータ
8-17 アリスヴェリテ  (逆2)
8-18 ゴールドエクリプス(逆1)

「まとめると・・・」

イカ社長がいった。

「アインシュタイン枠の5枠の相手筆頭は、広島出身騎手田中健が示唆する8枠・・・枠の5-8がいまんとこ大本線だな?」

みんながうんうんと頷き同意した。貫一郎が続く。かなり興奮している。

「日曜の中京5R新馬戦。岡田祥嗣と田中健は唯一の騎乗で対戦します。しかもです! 田中健が騎乗するエアビッグマムは広島出身調教師笹田和秀・・・広島か長崎出身の現役調教師は笹田和秀だけ・・・そして、田中健が笹田和秀厩舎の馬に騎乗するのはなんと初めてなんです!」

みんながおおという声を挙げ、貫一郎のほうをみた。

1/26(日) 中京5R 
ミスサンシャイン(岡田祥嗣)
エアビッグマム (田中健・笹田和秀

※JRAに2名しかいない「広島出身騎手」の対決
笹田和秀(広島)はJRA唯一の「広島or長崎出身調教師

「エアビッグマムが5枠か8枠に入るのが理想だけど・・」

聖子ママがいった。

「それ以外の枠だったら、そのときはまた考えましょう」

みんなが頷き、カフェ・ド・イーグルの暫定勝負馬券が決まった。

カフェ・ド・イーグル
小倉牝馬S 勝負馬券
◎10番 アスコルティアーモ
〇17番 アリスヴェリテ

暫定勝負馬券
単勝:10番、17番
枠連:5-8
馬連・ワイド:10-17

■ 中京5R

2025年1月25日(土)午前10時15分
-岩手県某市早起村 カフェ・ド・イーグル-

イカ社長が店のドアを開けると、すでにケチャ子はいつもの指定席にいた。カウンターの右から2番目だ。貫一郎は今日も、バーテン姿でカウンター内にいる。

「決まったわね、社長さん」

イカ社長からコーヒーのオーダーを受けた聖子ママがいった。明日の中京5Rの枠順のことだ。イカ社長が、カウンター左端の指定席に座って頷く。

「よりによって広島出身騎手紅白枠に置いてきたな。しかも広島コンビ6番広島に原爆が落とされた日だ」

1/26(日) 中京5R 
1-02 ミスサンシャイン
岡田祥嗣・広島出身

3-05 クリフ(ウォーク)(サンデー
306 エアビッグマム 
田中健・笹田和秀・広島出身コンビ初タッグ

1945(昭和20)8月6日
アメリカが広島に原爆投下

小倉牝馬S
1-02 ベリーヴィーナス
3-06 キミノナハマリア

5-09 クイーンズ(ウォーク)(サンデー
5-10 アスコルティアーモ(サンデー・染分

「広島コンビの同枠は『ウォーク・サンデー』の馬。染め分け帽発生で、サンデー2頭がいるクイーンズウォークがいる5枠のほうを示唆かしら?」

ケチャ子の意見に、貫一郎が同意した。

「僕もそっちのほうを取りたいですね。広島出身者が1枠と3枠に配置されたのは、小倉牝馬ステークスの1枠と3枠を示唆というより、紅白で平和を示唆・・・そして、本命は『ウォーク・サンデー』がいる5枠」

小倉牝馬S
1-02 ベリーヴィーナス
3-06 キミノナハマリア

5-09 クイーンズ(ウォーク)(サンデー
5-10 アスコルティアーモ(サンデー・染分

「よし! なら昨日の結論のままでいいな? アスコルティアーモとアリスヴェリテの単勝。枠連5-8は保険で、馬連ワイドの10-17が勝負だ!」

イカ社長の言葉にみんなが頷き、カフェ・ド・イーグルの勝負馬券が決まった。

カフェ・ド・イーグル
小倉牝馬S 勝負馬券
◎10番 アスコルティアーモ
〇17番 アリスヴェリテ

単勝:10番、17番
枠連:5-8
馬連・ワイド:10-17

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