競馬小説カフェ・ド・イーグル~サヨナラは8月のララバイ・2024ジャパンカップ~
トップ画像引用:ICHIRO MEETS KEIBA
■ 一触即発
2024年11月21日(木)午後7時
-岩手県某市早起村 カフェ・ド・イーグル-
「なにー? 多数決がいやだとー!?」
カウンター左端、いつもの指定席にいるイカ社長の大きな声が、バータイムのカフェ・ド・イーグルに響いた。イカ社長の右にはケチャ子がいて、その右には聖子ママがいる。三人とも険しい表情だ。
一方、カウンターの右端には貫一郎、その左にはミスターがいた。二人とも腕を組み、逆サイドの三人を睨みつけている。
今日発表されたジャパンカップの枠順は、9番にドウデュースが入るだろうという読みが外れ、秋華賞で二冠を達成したルメールのチェルヴィニアが入った。
予想馬番である9番を重視しようという貫一郎とミスターの二人に対し、イカ社長、ケチャ子、聖子ママの三人は、週中で本命候補に挙げられていたドウデュースを支持した。
くろたんもドウデュース本命だろうから、多数決なら4対2でドウデュースに決まりだとイカ社長は提案したが、貫一郎とミスターはこれに応じなかったのだ。多数決ではなく、みんなが納得できるまで議論すべきだという。
「そういうならさあ・・」
ケチャ子がいった。
「チェルヴィニアでしょうがないというネタをさっさと出してよ、ネタを!」
これには貫一郎もミスターも黙り込むしかなかった。週中、9番のネタは挙がっていたが、チェルヴィニアの名前は出ていなかった。
「ないんでしょ?」
詰め寄ろうとするケチャ子に、聖子ママがまあまあとなだめる。しかしイカ社長が黙っていなかった。
「ああもう埒が明かねえぜ! 今日は解散だ!!」
聖子ママが止めるのも聞かず、イカ社長は店を出ていった。後を追うように、ケチャ子が店を出る。これには、彼女と同棲している貫一郎も続くしかなく、必然的に今日の検討会はお開きとなった。
■ ソウルラッシュ
さかのぼること三日前-
2024年11月18日(月)午前7時半
-岩手県某市早起村 カフェ・ド・イーグル-
早起村の朝は早い。今日も三々五々、常連たちが集まりモーニングコーヒーをすすっていた。
「13番ソウルラッシュとはなあ・・」
スポーツ新聞を眺めていたイカ社長が唸るようにいった。昨日の夜も、幾度となく吐き出されたセリフだ。
「勝った団野大成はGⅠ2勝目。初勝利のファストフォースと同じゼッケンでしたね」
これまた昨日の夜を再現するように、ミスターが応じる。ケチャ子が続く。
「そうそう。オーナーの石川達絵もGⅠ2勝目。んでもって彼女のGⅠ初勝利も13番のキセキ・・・なんで気づかなかったのかしら?」
みんながうんうんと頷いた。
2017 菊花賞
(7-13)キセキ(石川達絵 ※GⅠ初勝利)
2023 高松宮記念
(7-13)ファストフォース(団野大成 ※GⅠ初勝利)
2024 マイルCS
(7-13)ソウルラッシュ
(団野大成・石川達絵 ※GⅠ2勝目)
「10年後とか20年後とか・・・JRAはみんなが忘れたころに同じことをするかもしれないから、覚えておかなくちゃね」
聖子ママがいった。
「まあ、生きていればだけど」
「おいおい! 寂しいこというなよ」
イカ社長が突っ込み、みんなが笑った。
「それはそうと」
ミスターが真剣な顔になりいった。
「石川達絵のGⅠ初勝利の翌週。結果はこうなっています」
2017 天皇賞(秋)GⅠ・芝2000
(4-07)キタサンブラック(武豊)
※7枠13番キセキ(石川達絵)が勝った菊花賞の翌週
2024 ジャパンカップ
ドウデュース(武豊)
前走:4枠7番 天皇賞(秋)1着
「へえー! 偶然にしてはよくできていますね!」
貫一郎が何度も頷きながらいった。
「石川達絵がGⅠを勝った翌週は武豊。ジャパンカップも武豊のドウデュースで決まりなら簡単なんですけどね」
なるほどと応じる者もいれば、そう簡単にいくかしらと訝しがる者もいた。
「いや、十分にあると思いますよ」
そのとき、そういいながら入ってくる男がいた。道路を挟んだ向かいの町中華、中華雑技団」の店主くろたんだった。先週、妻のアグネスに痛めつけられた顔面はだいぶ腫れがひいているが、目の周りはどす黒くなっている。
彼はイカ社長の右にスッと滑るように座り、両手を頭の上で合わせるポーズをした。モーニングのAセットという意味だ。
「団野大成がGⅠ初勝利を挙げた翌週のGⅠがこれです」
2023 大阪杯 GⅠ・芝2000
5-09 ジャックドール(武豊)
※7枠13番ファストフォース(団野大成)が勝った高松宮記念の翌週
みんながおおという声を挙げた。イカ社長がいった。
「なるほどなあ! 石川達絵も団野大成も、GⅠ初勝利が7枠13番。んでもって、その翌週のGⅠが芝2000で、武豊勝利という共通点がある。そのふたりがタッグを組んだマイルチャンピオンシップで、7枠13番ソウルラッシュが勝ったっつうわけだ?」
2017 天皇賞(秋)GⅠ・芝2000
(4-07)キタサンブラック(武豊)
※(7枠13番)キセキ(石川達絵・GⅠ初勝利)が勝った菊花賞の翌週
2023 大阪杯 GⅠ・芝2000
5-09 ジャックドール(武豊)
※(7枠13番)ファストフォース(団野大成・GⅠ初勝利)が勝った高松宮記念の翌週
2024 マイルCS
(7枠13番)ソウルラッシュ
(団野大成・石川達絵 ※ともにGⅠ2勝目)
2024 ジャパンカップ
ドウデュース(武豊) 1着?
前走:(4枠7番 天皇賞(秋)1着)
「まずはドウデュースに注目ですね」
ミスターの言葉にみんなが頷いた。
■ 高畑充希
2024年11月19日(火)午後6時半
-岩手県某市早起村 カフェ・ド・イーグル-
バータイムのカフェ・ド・イーグルに、常連客が揃ったのを待ち受けていたかのように、くろたんが入って来た。アポロとアグネスに店を任せて、10分だけ時間をもらったという。
「どうやらドウデュース優勝で間違いないようですよ」
くろたんはニヤリと笑うと、スマホの画面をみんなに見せた。画面には、高畑充希と岡田将生が結婚することを報じたネットニュースが映っている。
「高畑充希といえばモッコリホリデーの一員でしたね」
店内が完璧な防音室のように静まり返った。モッコリホリデーとは、高畑充希らがメンバーだった「HOT HOLIDAYS!!」のことをいっているらしいが、みんなスルーしたのだ。
「・・・・・うおっほん! とにかくその高畑充希が出演していたジャパンカップのCM。通し番号『 #44 』。今年のジャパンカップが『第44回』。結婚発表は今週にしてくれと、JRAサイドからお願いされたのでしょう」
2019 第39回 ジャパンカップ
1着:3-05 スワーヴリチャード(父ハーツクライ)
2着:1-01 カレンブーケドール(父ディープインパクト)
3着:2-02 ワグネリアン (父ディープインパクト)
※HOT HOLIDAYS!! CM #44
2024【第44回】ジャパンカップ
ドウデュース (父ハーツクライ)
ダノンベルーガ (父ハーツクライ)
ジャスティンパレス (父ディープインパクト)
[外]オーギュストロダン(父ディープインパクト)
プラダリア (父ディープインパクト)※回避
みんながおおという声を挙げた。
「ハーツクライ産駒が一頭じゃないのは残念ですが、例の団野大成、石川達絵ネタからもここは武豊で決まりでしょうね。みなさんは2番手、3番手探しに専念してください」
不敵な笑みを浮かべ、くろたんは「中華雑技団」へと戻っていった。
「くろたんがいう通り、軸はドウデュースでいいんじゃねえか?」
イカ社長の言葉にみんなが同意した。
■ 「ウマのそら。」
2024年11月21日(水)午後7時
-岩手県某市早起村 カフェ・ド・イーグル-
バータイムのカフェ・ド・イーグル。みんなが揃ったのを確認し、ミスターが口を開いた。
「昨日、『ウマのそら。』が更新されていました。今回は『蚊だな』でした」
ミスターがいっているのは、「ウマのそら。」家族団らん編の冒頭、祖父が蚊を叩いたあとにいうセリフのことだ。過去の4回、「蚊だな」、「蚊だ」、「蚊だな」、「蚊だ」ときて、今回は「蚊だな」だった。
<2024 秋「ウマのそら。」>
スプリンターズS 不動産編
秋華賞 家族団らん編「蚊だな」
菊花賞 家族団らん編「蚊だ」
天皇賞(秋) 家族団らん編「蚊だな」
エリザベス女王杯 アイドル握手会編
マイルCS 家族団らん編「蚊だ」
ジャパンカップ 家族団らん編「蚊だな」
「『ウマのそら。』が家族団らん編、かつセリフが『蚊だな』だった場合の過去2回・・・」
みんながミスターを注視する。
「そのひとつ前のGⅠとの関係はこうなっています」
スプリンターズS 1着 ⑬番
秋華賞 「蚊だな」1着 5番
菊花賞 1着 ⑬番
天皇賞秋「蚊だな」1着 7番
マイルCS 1着 ⑬番
JC 「蚊だな」1着 9番?
⑬1着の次、かつ「蚊だな」 5番 → 7番 → 9番?
(5番からの「奇数カウントアップ」)
みんながおおという声を挙げた。ミスターが続ける。
「秋のGⅠ、最初の2戦が13番、5番となったわけですが、13番チェルヴィニアが勝った時点で、秋華賞は5番を意識しておくべきでした」
「どういうことでしょうか?」
貫一郎が疑問をぶつける。
「イクイノックスのレーティングですよ。昨年のジャパンカップ。イクイノックスが勝ったレースが、『2023年ロンジンワールドベストレース』に選ばれています。イクイノックスの得たレーティングが『135』。13番ルガル、5番チェルヴィニアでそれを示したというわけです」
みんながおおという声を挙げた。
2023 ジャパンカップ
1-02 イクイノックス
※2023年ロンジンワールドベストレース
2023 ロンジンワールドベストレースホースランキング
1位:イクイノックス(135ポンド)
スプリンターズS
(13番)ルガル
秋華賞
(5番)チェルヴィニア
13&5 → 135(イクイノックス)
「それなら、9番に入るのはドウデュースじゃない?」
ケチャ子が目を輝かせていった。みんながそうだそうだと盛り上がったが、ミスターはひとり冷静にそれを見守っていた。本命候補馬と本命ゲート。このふたつがドンピシャ重なるのは、経験上非常にまれである。
明日の枠順発表をみて、また悩むのだろうな-
ミスターの心配は、翌日現実のものとなる。
■ 9番 チェルヴィニア
2024年11月21日(木)午後6時半
-岩手県某市早起村 カフェ・ド・イーグル-
「おいおい、まいっちまったなあ・・」
バータイムのカフェ・ド・イーグル。カウンター左端の指定席でイカ社長が頭を掻いた。経営するイカせんべい工場から直行したらしく、作業着からはほんのりとイカ臭い香りがただよっている。
彼が参ったといっているのはジャパンカップの枠順のことだった。本命候補馬のドウデュースは3番に入り、「ウマのそら。」からの読みであった9番には2番人気になると思われるチェルヴィニアが入ったのだ。
「いっそのこと・・」
貫一郎が眉根を寄せていった。
「9番にとんでもない人気薄が入ってたら、ドウデュースが本命とすんなり決まったんでしょうけど・・・」
みんながうんうんと頷いた。
その後、30分ほど意見を交わしあったが、全員の見解が揃うことはなかった。ドウデュースを支持するのがイカ社長、ケチャ子、聖子ママの三名。残った貫一郎とミスターは、「ウマのそら。」のネタを捨てがたいと主張し、9番チェルヴィニア支持に回ったのだ。
多数決ならドウデュースだろうとイカ社長は持ち掛けたが、貫一郎らはこれを拒否。結局今日はお開きとなった。
■ オーギュストロダン
2024年11月22日(金)午後7時
-岩手県某市早起村 カフェ・ド・イーグル-
いつもは並んで座るケチャ子と貫一郎だが、今日はそうではなかった。昨夜解散したときと同様、ケチャ子がイカ社長の右に座ったのである。
「あらあら景子ちゃん。今日は『いい夫婦の日(11月22日)』なんだから並んで座ったら?」
くろたんが経営する「中華雑技団」から買ってきた餃子と回鍋肉をみんなに配りながら、聖子ママがいった。
「あたしたち夫婦じゃないし!」
ふくれっ面でケチャ子が答える。ケチャ子と貫一郎は同棲こそしているが、籍はまだ入れていない。
重苦しい雰囲気をまとったまま、とりとめのない雑談で30分が過ぎた。みんな意識的にジャパンカップの話題は避けているようだ。
今週はもう無理かもしれないな。
ミスターがそうあきらめかけたとき、ケチャ子がポツリとつぶやいた。
「あれ? ・・・・・・・ あ、違った」
「景子ちゃん。何かありましたか?」
ミスターが訊いた。
「なんでもない。ちょっと勘違いしただけ」
ミスターのほうは見ずに、ケチャ子がスマホを見たまま答えた。聖子ママが、軽くため息をついてからいった。
「景子ちゃん。確かにわたしたちはドウデュースとチェルヴィニア、どちらを本命にするかで対立しているわ。でもね、正解にたどり着きたいという思いは一緒だと思うの。ベクトルは同じ方向を向いているのよ。ちょっとしたことがヒントとなる可能性があるんだから、隠さずに話してみて」
聖子ママの説得に、10秒ほど沈黙していたケチャ子が顔を上げた。
「・・・んとね、ホントたいしたことじゃないの・・・どうしてオーギュストロダンの引退お披露目式があるんだろうと思って・・・それで、オーギュストロダンについて調べてたの」
みんながケチャ子に注目する。ミスターは前傾姿勢となり、全身を耳にしている。
「オーギュストロダンの綴りを見てみたら、英語の『8月』だと思ったの。実際はちょっと違ってたんだけど」
[外]オーギュストロダン
(Auguste Rodin)
8月 August
「なるほど。最後の『e』が余計だが、オーギュストの部分にはオーガスト、つまり『8月』が入ってらあ」
イカ社長が眞露の水割りが入ったグラスを持ちながらいった。だが顔は少しバカにしているかのようでもある。ケチャ子がいった。
「ね? だから言いたくなかったのよ。なんでもないからみんな忘れ・・」
「いや、景子ちゃん!」
かぶせるようにミスターがいった。
「それ、すごい発見かもしれませんよ!」
みんながミスターに注目する。
「ちょっと10分ほど・・・いや20分ほどもらえませんか? 貫ちゃん、私が考えをまとめる間、これを歌っていてください」
ミスターは素早くカラオケのリモコンを操作すると、ある曲を入れた。吉川晃司の「サヨナラは8月のララバイ」だ。
■ サヨナラは8月のララバイ
貫一郎が吉川晃司の「サヨナラは8月のララバイ」を熱唱している間、ミスターはパソコンを操作していた。時折、腕を組んだり首を傾げたりしている。なるほどといいながら大きく顎を引いたかと思うと、今度は眉間にしわを寄せて天井を見つめるなど、じっとしていることがない。
5回目の「サヨナラは8月のララバイ」が半分ほど終わり、周囲の客からいい加減にしてくれと苦情が出始めたころ、ミスターがポンと手を叩いた。
「わかりましたよ! オーギュストロダンの引退お披露目式の意味が!」
貫一郎がリモコンで曲を止め、みんなが一斉にミスターに注目した。いつの間にかケチャ子は、指定席である貫一郎の左に座っている。
「これはオーギュストロダンの引退お披露目式ではありません。種牡馬ディープインパクトの引退式です!」
「どういうこってい?」
イカ社長がすかさず突っ込む。
「みなさん、競馬サイトのレース検索で『ディープインパクト』と打ってください。サイトはnetkeibaではなく競馬ラボでお願いします」
みんなは何がなんだかわからないまま、ミスターにいわれるままにスマホを操作した。
「2019年の8月第1週・・・これってなんでしょうか?」
「それですよ、貫ちゃん!」
ミスターが大きく顎を引く。気づいてほしいところを貫一郎が指摘したのだ。
競馬ラボのレース検索で「ディープインパクト」と打ち込むと、今年のメモリアルカップと弥生賞ディープインパクト記念がまずは出てくる。その後、2019年8月の第1週に、計6レースヒットするのだ。
「種牡馬ディープインパクトが亡くなったのは、2019年7月30日でした。それを受けてJRAは、8月第1週、3場開催の土日メイン全6レースを『ディープインパクト追悼記念競走』と銘打ったのです」
2019年7月30日
ディープインパクト死亡
<2019 ディープインパクト追悼記念競走>
2019/8/3(土)
札幌日経オープン
九州スポーツ杯
越後ステークス
2019/8/4(日)
UHB賞
小倉記念
レパードステークス(ハヤヤッコ)
2019/11/24(日)
ジャパンカップ(スワーヴリチャード)
みんながなるほどと頷く。
「レパードステークスを勝ったハヤヤッコは、今年8歳馬ながらアルゼンチン共和国杯で穴をあけましたよね。追悼の2枠でゾロ目でした。彼が現役を続けた理由は、同じ金子真人氏の持ち馬だったディープインパクトが亡くなった2019年と今年を結ぶ、貴重なピースのひとつであったからでしょう」
2019/8/4(日)
ディープインパクト追悼競走
レパードステークス(ハヤヤッコ・金子真人)
2024 アルゼンチン共和国杯
ハヤヤッコ(枠2-2 ゾロ目)
「そして、同じくディープインパクト追悼競走だったジャパンカップが、くろたんの高畑充希ネタで出てきたスワーヴリチャードってわけね?」
ケチャ子が訊いた。ミスターが頷く。
「そのスワーヴリチャードもまた、ハヤヤッコ同様アルゼンチン共和国杯を勝っているというのもよくできています」
みんながうんうんと頷く。
「さて、貫ちゃんに歌ってもらった『サヨナラは8月のララバイ』。JRAの仕掛けは細かいですね。今井美樹を登場させたCMがあります」
社会貢献・環境対策CM「Be With.」
「景子ちゃん。CMタイトルの『Be With.』・・・これをひっくり返して『With Be』としたら何か思い当たりませんか? 女性一人と男性二人・・・」
「ああ! ブルゾンちえみね! ブルゾンちえみWith B !」
「ご明察です! With Bの『B』は男性二人組のユニット名『ブリリアン』から来ています。『ブリリアン』を構成するのがコージとダイキ」
「ああ! それで僕に吉川晃司を歌わせたんですね?」
貫一郎がいった。聖子ママが補足する。
「今井美樹の夫は布袋寅泰。彼と吉川晃司のユニットがCOMPLEXよね?」
「なるほどそうつながるのか! だがイチローはどうなる? 彼ほどの大物を引っ張り出した以上、ネタとしてつながるんだろうな?」
イカ社長の質問が想定内だったミスターは、ニヤリと笑って続ける。
「吉川晃司の『サヨナラは8月のララバイ』は彼の2枚目のシングル。我々競馬ファンは、競走馬ディープインパクトの引退でまず一度目のサヨナラをし、種牡馬として現役だったディープが死亡したことを受け、二度目のサヨナラをしたわけです」
みんながうんうんと頷く。
「この2019年は、イチローがバットを置いた年であり、彼が最愛のペットとサヨナラをした年でもあるのです」
「もしかして一弓!? ディープインパクトと同じ年になくなってたの?」
ケチャ子の問いにミスターが深く頷いた。
「ついでにいうと、2019年は元号が平成から令和になった年でもあります。イチローの引退、元号の切り替わり、そしてディープインパクトの死・・・ひとつの大きな時代が終焉を迎えた年だったのです」
<2019年(平成31年→令和元年)>
3/21 イチロー引退発表
夏 イチローの愛犬 一弓死亡
7/30 ディープインパクト死亡
8/3.4 ディープインパクト追悼記念競走 6競走施行
11/24 ディープインパクト追悼記念競走 JC施行
「一朗と弓子夫人で一弓・・・」
貫一郎がいった。
「もしかして『邪馬台国はどこですか?』で一休さんが出てきたのって、この伏線だったんでしょうか?」
「そうだと思います。#13が公開された週に話題になりましたよね。京都でなく東京、寺でなく神社なのになんで一休さんなんだろうと」
みんながなるほどと頷く。
「一休さん・・・1番9番3番・・・それっぽい馬が入りましたよね?」
2024 ジャパンカップ
1-(01)[外]ゴリアット
3-(03)ドウデュース
6-(09)チェルヴィニア
「まんま3連複1-3-9がありそうじゃねえか!」
イカ社長が舌なめずりをする。
「話をドウデュースとチェルヴィニアに戻しましょう。先ほど挙げた、ハヤヤッコのレパードステークスを含む追悼競走全6レース。2つの重賞があった日曜日の3レースに限定すると、『6枠右』がすべて連対しています」
2019/8/4(日)
UHB賞
6-11(右)リナーテ 1着
小倉記念
6-08(右)メールドグラース 1着
6-09 カデナ( ≒ 蚊だな)2着
レパードステークス
4-06 ハヤヤッコ(金子真人)1着
(2024 アルゼンチン共和国杯 1着)
6-10(右)デルマルーヴル 2着
「同じ『6枠右』のチェルヴィニアってわけね?」
聖子ママがいった。ミスターが軽く頷いて続ける。まだまだネタがあるようだった。
「オーギュストロダンの引退お披露目式。引退式ではなく『引退お披露目式』・・・違和感を覚えたのでJRAニュースで検索したところヒットしました。
「今年の3月29日リリースのニュースでした。京都競馬場のステーションサイドに、新指定席がオープンするというもので、文章中に『お披露目』が使われていました。その週GⅠ大阪杯が行われ、『6枠右』のベラジオオペラが勝っています」
3/29 ステーションサイドに新指定席がオープン!
※文章中に「お披露目」
3/31(日)大阪杯
6-11(右)ベラジオオペラ
「まだあります。ディープインパクト追悼競走を勝ったハヤヤッコ。今井美樹出演のCMが示唆する元コンビのブリリアン。ハヤヤッコは一度だけ、ブリリアントステークスに出走があります」
2021/5/9
東京10R(ブリリアン)トS
6-11(右)ヒロイックテイル
「いやあ、こんだけ重ねられたら白旗をあげるしかねえな・・・6枠右のチェルヴィニアでいいんじゃねえか? イチローとのツーショットにお似合いはレジェンド武豊しかいねえと思ってたが、ルメちゃんなら文句はねえぜ」
イカ社長がいった。ミスターが最後のネタでダメを押す。
「土曜日の京都9レースに、『とがのお』と読む珍しいレースがあります。調べてみたらなんと、2006年以来の施行でした・・・そうです。ディープインパクトがジャパンカップを勝ったのがその2006年なのです!」
11/23(祝・土)
京都9R 栂尾特別
※2006年以来の施行
2006 ジャパンカップ
1着:6-06(右)ディープインパクト
2着:6-07 ドリームパスポート
3着:3-03 [外] ウィジャボード
※外国馬 最後の馬券圏内
みんながおおという声を挙げ、満場一致でカフェ・ド・イーグルの本命馬が決まった。
カフェ・ド・イーグル
ジャパンカップ 本命馬
6枠9番(右)チェルヴィニア
■ 39
「相手はどうするんでい? ドウデュースかい?」
イカ社長が訊いた。ミスターが即答する。
「ドウデュースでいいでしょうね。馬連3-9ならスワーヴリチャードが勝ったジャパンカップの第39回と一致します」
2019【第39回】ジャパンカップ
ディープインパクト追悼競走
(3)-05 スワーヴリチャード
2024 ジャパンカップ
(3)-(03)ドウデュース
6 -(09)チェルヴィニア
「一休さんは? 3連系まで買うなら1番ゴリアットで1、9、3よね?」
ケチャ子がいった。
「それも大いにありそうですね。枠の1-6で『イチロー』。馬番に直せば1-9で『いっきゅう(一休・一弓)』ですからね」
「よし! チェルヴィニアの単勝に馬連3-9が大本線。馬連1-9も押さえて3連系は一休さん馬券だ!」
イカ社長の言葉にみんなが同意し、カフェ・ド・イーグルの勝負馬券がきまった。
カフェ・ド・イーグル
ジャパンカップ 勝負馬券
◎9番 チェルヴィニア(GⅠキングバトル)
単勝:9番
馬連:3-9(本線)、1-9(押さえ)
3連複:1-3-9
3連単:9→(1.3)→(1.3)
■ ワンダフルタウン
今週ではなく先週ですが、ワンダフルタウンの登録抹消ニュースがありました。
ワンダフルタウンには「ワン」があります。(イチ)ローの「ワン」であり、犬の「ワン」でもある。
小説本編で、イチローの愛犬「一弓」を取り上げた理由のひとつでした。
このワンダフルタウンには、もうひとつの意味があると思っています。昨年の皐月賞に出走した(ワンダ)イレクトを示唆。
2023 皐月賞
1-01 ソールオリエンス 1着
1-02 ワンダイレクト(母父ディープインパクト)15着
※父、または母父ディープインパクトである唯一の馬
この一週前の桜花賞がこれ。
2023 桜花賞
1-02 ライトクオンタム(父ディープインパクト・ラストクロップ)8着
2-03 リバティアイランド 1着
2-04 ドゥアイズ(母父ディープインパクト)5着
※父、または母父ディープインパクトは2番と4番の2頭
ライトクオンタムがディープインパクトのラストクロップであることは、桜花賞の週でかなり話題になっていました。
桜花賞、皐月賞はいずれも父か母父にディープインパクトの血を持つ馬の隣が勝っていたことになります。
ワンダフルタウンの登録抹消が、このことを思いだせといっているのなら、ジャパンカップでもディープインパクトの隣が馬券になるのかもしれません。
オーギュストロダンがディープインパクトのラストクロップだからです。
2024 ジャパンカップ
3-03 ドウデュース
3-04 ジャスティンパレス(父ディープインパクト)
4-05 シュトルーヴェ (母父ディープインパクト)
4-06 ダノンベルーガ
5-07(外)シンエンペラー
5-08 [外]オーギュストロダン(父Deep Impact・ラストクロップ)
6-09 チェルヴィニア
3番から9番までと、対象馬は自身も含めると7頭。2023桜花賞と皐月賞同様、隣馬だけに絞ると3番ドウデュース、6番ダノンベルーガ、7番シンエンペラー、9番チェルヴィニアの4頭。
この4頭によるワンツーがあるのかどうか。
■ GⅠキングバトル 途中経過
<くろたんvsカフェドイ(スナ忘)>
2024 秋のGⅠキングバトル
●スプリンターズS
くろたん サトノレーヴ 7着 配当なし
スナ忘 ウインマーベル 5着 配当なし
●秋華賞
くろたん ボンドガール【2着 複勝290円】
スナ忘 アドマイヤベル 12着 配当なし
●菊花賞
くろたん アーバンシック【1着 単勝370円・複勝160円】
スナ忘 コスモキュランダ 14着 配当なし
●天皇賞(秋)
くろたん ドウデュース【1着 単勝380円・複勝200円】
スナ忘 ドウデュース【1着 単勝380円・複勝200円】
●エリザベス女王杯
くろたん レガレイラ 5着 配当なし
カフェドイ キミノナハマリア 11着 配当なし
●マイルCS
くろたん ブレイディヴェーグ 4着 配当なし
カフェドイ チャリン 5着 配当なし
●ジャパンカップ
くろたん ドウデュース ?着
カフェドイ チェルヴィニア ?着
※配当金総額 途中経過
くろたん 1,300円
スナ忘 580円