【2023年最新版】発達障害者が押さえておきたい「法改正」!
近年、発達障害がある方を支援するための、国の制度が強化されているのをご存じでしょうか。
2023年1月、厚生労働省は「障害者雇用率」の引き上げをおこなう方針を発表しました。また、2024年4月1日から施行される法律(改正 障害者総合支援法)では、「就労選択支援」という制度が新たに盛り込まれる予定です。
これらの制度は、「だまっていても自動的に助けてくれる」というものではありません。障害者の側も「どのような支援を・どうすれば受けられるのか」を知り、自分に必要な支援が受けられるよう、適切な窓口に相談することが必要になってきます。
今回は「障害者雇用率」と「就労選択支援」の2つの制度について、当事者として押さえておきたいポイントを解説します。
① 障害者雇用率の引き上げ
障害者雇用率制度とは?
障害者雇用率制度とは、「障害者が能力を発揮し、適性に応じて働くことができる社会を目指す」ことを目的として、事業主に一定の割合で障害者の雇用を義務づける制度です。障害者雇用促進法という法律で定められています。
企業や公的機関など、すべての事業主は、常時雇用する従業員のうち、一定の割合以上の障害者を雇用することが法律で義務付けられています。この「法律で義務づけられた、障害者を雇用しなければならない割合」のことを法定雇用率と言います。
法定雇用率を満たしていない企業等は、国に納付金を納めなければなりません(満たしている企業には、国から調整金を支給)。厚生労働省の発表[1] によると、2022年12月時点での法定雇用率達成企業の割合は48.3%でした。半数以上の事業主が法律上の義務を達成できず、納付金を支払っているのが現状です。
納付金の支払いだけでなく、実雇用率(実際に雇用されている障害者の割合)が低い企業に対しては指導が行われ、改善が見られない場合には企業名が公表されるという罰則もあります。
実績の数字だけを見ると、日本における障害者雇用の推進はまだ道半ばです。ただ、近年は「CSR(企業の社会的責任)」や「SDGs」の観点から、障害者雇用に力を入れる企業が増えています。毎年9月には「障害者雇用月間」に合わせて民間メディアから「『障害者雇用率が高い会社』ランキング TOP100社」が発行[2] されるなど、社会的な注目度も高まり続けています。
どう変わるの?
法定雇用率は、事業主の区分によって割合が定められています。例えば、民間企業(従業員45.5人以上)の法定雇用率の割合は、2.7%(現在より0.4ポイントアップ)に、以下の2段階で引き上げられることが予定されています。
現在は2.3%
→ 2024年4月から2.5%に引き上げ(現在より0.2ポイントアップ)
→ さらに、2026年度中に2.7%に引き上げ(現在より0.4ポイントアップ)
これまで、法定雇用率の引き上げが発表された際の上げ幅は0.1または0.2ポイントずつでしたしかし、今回は合計0.4ポイントが引き上げられることが発表されており、国の障害者雇用率に対する姿勢が、より積極的になっている様子がうかがえます。
さらに、今回は法定雇用率の引き上げと合わせて「障害者を積極的に雇用する事業主」への新たな支援も発表されました。支援の概要は以下のとおりです。
・障害者を雇用するための助成金を設立
・中小企業などには助成金を上乗せ
・短い労働時間(週10〜20時間)で働く障害者も、法定雇用率の計算に含めて良い
発達障害の当事者にどんな影響があるの?
法定雇用率の引き上げにより、事業主には「法定雇用率を満たすために、今よりも多くの障害者を雇用しよう」というモチベーションが生まれます。これにより、発達障害のある方にとっても働く機会が増えることが期待されます。障害者を雇用したい事業主が増えることで競争が生まれ、雇用条件(給与や福利厚生など)がより良くなる可能性もあります。
また、中小企業に対する新たな支援がつくられることで、これまでは大企業中心だった障害者雇用が、今後は中小企業でも広がっていくことが期待できます。
② 「就労選択支援」の制度が新しく作られます
就労選択支援とは?
就労選択支援とは、障害のある方が就職先や働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して本人の希望・能力・適性などに合った「仕事の選択」を支援する新たな制度のことです。障害者総合支援法という法律に、2024年の4月から新たに盛り込まれる予定です。
補足:就労アセスメントとは?
就労アセスメントとは、働くために必要な能力や適性を客観的に評価し、本人の強みや課題を明らかにして、働くために必要な支援や配慮を整理することです。アセスメント(assessment)は「評価する」という意味です。
就労アセスメントは、これまでも就労系障害福祉サービス(就労移行支援、就労継続支援B型)の利用を始める際におこなわれていました。障害のある方が本人の希望や仕事の能力、適性に合った仕事をするためにとても大切なものですが、以下のような課題もありました。
・障害のある方が必ずしも就労系障害福祉サービスを利用するとは限らず、アセスメントを受ける機会がないまま、就職・転職活動をしてしまう
・せっかくアセスメントをおこなったのに、実際の就職・転職活動で十分に活用されず、結局、自分の能力や適性に合った仕事を選べていないケースがある
制度ができるとどうなるの?
障害のある方が、「就労系障害福祉サービスの利用」や「ハローワークでの就職・転職活動」をする前に、就労選択支援サービスを利用できるようになります。
このサービスでは、支援者と障害者本人が共同で、以下のような内容を評価・整理します。
どのような職種で働きたいか
どのような雇用条件を望むか
仕事に対して、どのような能力・適性があるか
これらを評価・整理して作成された就労アセスメントは、就労系障害福祉サービスの利用を希望する際に活用され、自治体の審査の参考資料として扱われます。福祉サービスを利用せず就職を目指す場合にも、就労アセスメントの内容がハローワークへ連携され、職業指導などをおこなう際に活用されます。
このように、就労アセスメントを活用することで、障害のある方がより自分の能力・適性に合った仕事を選べる可能性が高まります。
なお、これまでは就労系障害福祉サービスを利用できるのは「現在働くことができていない人」だけでした。この制度の開始に合わせて、現在働いている人が、一時的に就労系障害福祉サービスを利用できるようになります。一時的に利用できるのは、以下のような場合です。
・働き始めに、最初は短い時間から始め、少しずつ勤務時間を増やしていく場合
・働いている人が休職し、そこから復職を目指す場合
発達障害の当事者にどんな影響があるの?
発達障害のある方にとっては、自分の能力・適性だけではなく、障害による特性に合った仕事を選びやすくなることが期待されます。
大人の発達障害がある方の場合、障害による特性が原因で離職・転職されているケースもあるため、以下のように悩んでしまうケースが少なくありません。
・特性や適性に合う仕事が見つかるか不安
・自分の強みややりたいことが分からない
・就職先にどんな「合理的配慮」を依頼すべきか分からない
皆さんの中には、学生時代に就職活動で「自己分析」をした方もいらっしゃると思いますが、障害の有無にかかわらず客観的に自分を見つめ直して分析するのは難しいもの。就労選択支援のサービスが利用できれば、支援者の力を借り、一人でやるよりも客観的に自己分析=就労アセスメントをすることができます。
より豊かに、当たり前に人生を楽しめるように。
利用者様の一人ひとりの成長をサポートします。
川越市就労移行支援、川越市就労継続支援A型、計画相談支援。
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