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井の中の蛙 ~ジャカルタの経験を通じて~
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東京だけで過ごしていると、意外と世界のことが知れないようなそんな気がしてしまった。旅をしていると、意外と当初思っていたことと全く異なる世界があることに気付く。
人は知らないことについては過大評価するか、もしくは過小評価するかのどちらかと言われている。
例えば、欧米諸国については過大評価し、アジア諸国については過小評価をしがちだ。しかし、この世界においては普遍的に起こっていると思われる。このインターネットが普及した現代においてもだ。インターネットというのは便利な一方で、情報を流している人間の価値観というレンズを通じて展開されることとなる為、実際の自分が行った時とのイメージギャップが生じることになる。
価値観の近い人間であれば、それほど認識の差分が生まれることは少ないと思うが、逆であれば自分の実体験との乖離が激しくなるといえよう。とはいえ、やはり「百聞は一見に如かず」というのは事実としてあるように思う。直近、ジャカルタを訪問してみて、自分の思っていた世界とは異なっていることを感じた。つまり、都市に対して偏見の領域を脱して無かったのだと思う。今までなまじ東南アジア諸国を見てきたという自負があるだけに、逆に偏見を持ってしまっていた。
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本来であれば、国ごとに違いがあるはずなのに、自分の経験だけで国の状況を予測してしまっていた。今回、ジャカルタに来てその反省があった。シンガポールやマレーシアと近いだろう、そんな風に思っていたのだけれども、全く別の文化があり、しかも、彼らの文化は想像以上に深く、リスペクトを覚えたくらいだった。カフェ文化のリッチさだったり、都市の発展度合いもそう。インドネシアは将来的により可能性のある都市だと感じた次第だ。
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逆に欧米諸国においては過大評価されているようには感じるが、それでも、文化や都市の完成度は非常に高いものを感じた。久々にロンドンに行ったのだが、やはり生活の質は高い。エンタメ、芸術、学術、カフェ、食事、そして文化に至るまで全てのクオリティが高い。もちろん、物価が高いのはいうまでもないが、それでも、有り余る環境を提供していることを感じる次第だ。ロンドンについては過大評価ではない気がする。これはロンドンという都市よく知っているから、とも言えるかも知れない。
ジャカルタとロンドンを比較すると流石に都市のクオリティが違いすぎるのは間違いない。そして、さまざまな指標を見ても、この二つの都市には埋められない大きな壁があることは確かだ。だが、過大評価か過小評価化をこの二つの都市の差分では語るべきではない気がしている。
となると、ジャカルタのことを考えると、相当に過小評価をしていたかも知れない。ただ、文化的側面を切り取ると、やはり食の面での多様性は圧倒的に乏しいし、人種もマレー系に偏りがある。そして、外国人の数も圧倒的に少ないことも容易に窺える。ほとんどがインドネシア人だ。まだまだ国際都市というには程遠い感じがするが、それでもポテンシャルを感じる。
ポテンシャルは何を持って、という話だが、こちらは前回の記事を参照されたい。東京にいると、世界の情報が限定して入ってくるだけでなく、デフォルメされていることが多くある。
日本人は何となく自分の国が世界一と言ってもらえることに敏感だ。確かに、多くのものは世界一と呼べるものが多い一方で、必ずしも一番だとはいえないことに対しても一番だと思っている節はある。実際に世界を体験してみると、分野によっては日本よりも優れているものは当然に存在する。そこから目を背けず、その差分から何ができるかを課題を抽出し、よりクオリティの高いものを作っていく必要があるのではないか、そんな風に思うようになった。
確かに、東京の生活の質は高すぎるくらい高くなった。とはいえ、まだまだ伸び代はある。周辺国もずっと同じではない。他国のGDPの成長も日本よりも高い状態が継続されれば、もちろん日本との差分は縮まる。現在の差を過小評価してはいけない。経済的には日本は常に追われており、また、アメリカを追いかけている立場にある。それを忘れてはいけないのかも知れない。
そのためにも、今はしっかりと現実を自分自身の目で見て、偏見のない感覚を身につけていきたいと思う。