ある日のお話 Apple Story Frep編①
定期コーナー『ある日のお話』
アプリ【Frep★LOVE】(現在は配信終了)にて配信されていたバックヤードの裏話、”Apple Story”を再掲いたします。
今月は羽白くん、長谷川くんがStarburst!オーディションの一次審査を突破してファイナリストを目指していたころ、広沢くんがオーディションに誘われたころのお話、『2014年3月』をお届けします。
長谷川創多編【2014年3月】
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このシナリオは長谷川創多目線のお話になります。
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今日は研修生公演”50%感情論”の稽古が始まって二日目。
トレーナー
「長谷川! 佐藤! お前ら、振り入ってねーだろ!」
長谷川創多
「す、すみません」
佐藤光
「……すみません」
トレーナー
「前の奴を見て踊ってるようじゃ、お前ら、一生一番後ろだぞ!
もういい、やる気がないなら帰れ」
長谷川創多
「やる気はあります!」
佐藤光
「あります!」
トレーナー
「やる気があるのに、そんなド下手クソじゃ逆に望みねーわ!」
そこまで言わなくてもいいのにな
……と思うけど、ここは我慢。ひたすら謝ってやり過ごそう。
佐藤光
「才能なくても、底辺として頑張ります!」
長谷川創多
「ああっ、光……(余計なことを)」
案の定、ダンスの先生の額に青筋が浮く。
トレーナー
「底辺で頑張られちゃ困るんだよ!!」
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稽古が終わった後、俺と光は居残って床掃除。
佐藤光
「ねえ、俺、なんかダメなこと言った?」
長谷川創多
「ウン、底辺はマズかったと思う。 あー、また先生を怒らせちゃったよ。
今度の公演もまた最後列かなあ」
佐藤光
「むしろ出番があるかどうか」
長谷川創多
「だよねえ。公式サイトでのキャスト告知前だし……」
公演に出演することが内定してレッスンが始まっても、公式にキャスト発表があるまでは変更が入る。 レッスンが進む中で、アンダー組とレギュラー組の入れ替えられるのは珍しくない。
長谷川創多
「あー、アンダーに回されたらどうしよ……」
佐藤光
「アンダーでも頑張るしかない」
その時、レッスン室のドアが開き、白い妖精が入ってくる。
羽白沙螺
「あ。ヒトがいる」
長谷川創多
「サラくん」
羽白沙螺
「また居残り掃除ナノ?」
長谷川創多
「えっと、言われてはいないんですけど、
あの流れだったら、たぶんそうだなと思って」
佐藤光
「自主的に居残って掃除しております。 サラくんはどうしたんですか?」
羽白沙螺
「忘れモノ」
そう言って、サラくんは隅に置いてあったペットボトルを拾う。
長谷川創多
「それ、空ですよね? 捨てておきますよ」
羽白沙螺
「自分で捨てるからイイ。 それにしても、毎回毎回派手に怒られてるヨネ」
長谷川創多
「そうなんですよ。これはアンダー落ち確実ですかね?」
羽白沙螺
「落ちないんじゃナイ? 実際、落ちたことないデショ」
そう言って、彼は空っぽのペットボトルを持って去っていく。
長谷川創多
「自分のゴミは自分で片付ける。マジメだなあ」
佐藤光
「あのヒト、あんま喋らないよね。 ひさしぶりに声を聴いた気がする」
長谷川創多
「はあ、妖精みたい」
佐藤光
「クリオネ的な?」
長谷川創多
「違うよ。白くて細くて睫長くて、妖精みたいじゃん。
はー。もっと親しくお話してみたいなあ」
佐藤光
「無理無理。サラくんは歌もダンスもバリバリ上手い。
俺は研修生の中であの人が真の実力トップだと思う。
しかも、三島くん情報によると成績優等で学校から表彰されるらしい。
俺らみたいな底辺とは違いすぎますよ」
長谷川創多
「うっ」
佐藤光
「けど、Starburst!オーディションでファイナリストになれたら
同じステージに立って、60日一緒に活動できるよ」
長谷川創多
「ファイナリストになれるかなあ」
佐藤光
「どうだろう」
長谷川創多
「光だけ受かって、俺だけ落ちたらイヤだな」
佐藤光
「両方落ちるほうが確率として高いと思う」
長谷川創多
「でも、今年は17歳の夏じゃん? 一生に一度の大事な夏だもん。
アイドルとして完全燃焼したいなあ」
佐藤光
「つまりファイナリストになりたいってこと?」
長谷川創多
「うん」
佐藤光
「じゃあ、がんばろう。両方合格目指して」
光が俺の背中を軽くたたく。 この夏だけは諦めたくない。
光もそう言っているような気がした。
END
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