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【爆音】METAL MASTER FILMS上映祭、開始・・・【カレーもあるよ】
METAL MASTER FILMSがやってきた!!
当館では12月18日より1週間の間、METAL MASTER FILMS製作の映画作品が上映される。
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METAL MASTER FILMSは監督・高橋佑輔が独自に手がけるインディーズ映画プロダクションだ。23年12月末までに既に10本もの映画作品が製作されており、特に近年は中長編作品も増えている。詳しくは後述するが、ゴアでアシッドでドラッギーな作風を得意とした令和でも稀に見る異色のプロダクションだ。
さて、当館での上映ラインナップは『abend』『SHIBUYA REDEMPTION』『キラークイーン BEGINS』の3本。特に『abend』は連日爆音での上映となる。今回の目玉作品だ。
『abend』について私が知っている2、3の事柄
長々とした前置きはこの際省くとして、とりあえず本上映祭の表題作『abend』の本編紹介文を一緒に読んでみよう。
謎の外資系IT企業に就職した新人プログラマの佐藤は、入社してすぐにプログラミングの研修合宿に行くことになる。ワンボックスカーで人里離れた研修所に連れて行かれた佐藤たちの前に現れたのは、殺気立ったプログラミング講師・大藤だった。大藤の指導方法は常軌を逸していた。地獄のプログラミング研修が今始まる…!
なるほど…
地獄のプログラミング研修って何だよという疑問は残るものの、まあ、確かにこの手の「ジョブもの」作品は他に例がないわけじゃない。それこそスポ根ブーム全盛期の漫画やアニメなどでは鬼教官が主人公たちをビシバシ鍛え上げる的な展開がそこかしこに散見されていたわけだし…
な〜んだ、じゃあ意外ととっつきやすそうじゃん!
じゃあ次に『abend』公式ホームページを見てみよう。
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…え?
いくらスポ根モノの裾野が広いとはいえ、空が真っ赤に染まり、迅雷がそこかしこに走り散らすような作品というのは流石に存在しないだろう。…いや、えっと、強いていえば『機動武闘伝Gガンダム』とか…??
いやしかし本作の主題は「IT」なのだから、どう転んだって喧嘩上等・暴力上等な『Gガンダム』にはなりようがない。いくら苛烈な外資系ITの技術研修とはいえ、言ってしまえば所詮はパソコンカタカタのデスクワークなのだし、せいぜい教官が目一杯に怒鳴り散らし、それに対して新入社員が必死に打鍵しまくる程度の描写が関の山……
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…などと思ったか?。
ネタバレになってしまうので詳しくは言えないが、とにかく無茶苦茶な映画だ。「想像の斜め上」という形容を地で行くトンデモ映画だといえる。1秒でも目を離すと置いていかれてしまう。いや、どれだけ丹念に画面を追っていたところでこの物語と最後まで伴走できる猛者はそうそういない。
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なぜ本作が当館で、しかもわざわざ「爆音」で上映されるのか?これは本当にただの「スポ根ジョブもの」なのか?今一度よく考えてみてほしい。
これは普通の映画ではない。
私は敢えてこの映画に「狂気」という陳腐な褒辞を捧げようと思う。狂気と名指される大抵のものは「ちょっとヘン」の域を出ないありふれたものだが、本作は本当に狂っている。おかしい。もはや怖い。
そうだよな、「狂気」って本来はこういうものだったよな、俺たちちょっと「狂気」をナメてたよな、と反省していただけること請け合いの問題作だ。
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ちなみに本作のジャンルは「デスメタル系ミュージカルスプラッターホラー」だそう。作品の要素をここまで羅列してくれているというのに何一つ理解ができないというのも逆にすごい。
とはいえ「作品の位置付けがわからない以上観に行こうか悩む…」というシネフィルの皆さんも多いだろうから、以下に本作を映画史的に説明した数式を用意した。ぜひ参考にしてほしい。
”初期石井岳龍の熱気 × ジョン・カーペンター流B級サイエンスフィクション × 監督の素朴な破壊衝動 = 『abend』”
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ここテストに出ますよ。映画秘宝が存命なら確実に照準を当てられていたに違いない。
他の作品もヤバい!『SHIBUYA REDEMPTION』&『キラークイーン BEGINS』
ちなみに今回の上映会のメイン作品こそ『abend』だが、他に2本の作品も併映される。『SHIBUYA REDEMPTION』と『キラークイーン BEGINS』だ。
『SHIBUYA REDEMPTION』は薬物と犯罪をめぐる怒涛の追走劇が繰り広げられるアクション大作。
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主人公たちの動向を追っているうちにいつの間にか今敏『パプリカ』あるいはクリストファー・ノーラン『インセプション』のようなSF的夢幻世界に呑み込まれていく。またシリアスな空気感の中に突如として現れるシュール描写が作品の異常性をさらに増幅させている。
お前たちの脳裏に存在する「もう一つの渋谷」を、お前たちは目撃することになる…
『キラークイーン BEGINS』は女子高生がひょんなことから大いなる戦いに巻き込まれるアクションホラー短編だ。ちなみに本作は現在METAL MASTER FILMSにて鋭意制作中のキラークイーンシリーズの第1作目となる。まったく、とんでもないシリーズが幕を開けてしまったものだ。
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ここまでお読みくださった方であれば、この可愛らしいポスタービジュアルに潜む禍々しい何かを感じ取ってくださることだろう。その予感が長と出るか半と出るか、いずれにせよ振られた賽は地獄の底へと転がり落ちていく。
ちなみに『キラークイーン』シリーズ続編の製作を支援すべく上映期間中は当館内にカンパ箱を設置しておく。どうで地獄へと落ちる身の一踊りだと思ってぜひ1000円でも10000円でも1000000円でもご支援いただければ幸いだ。
支援額に比例してスプラッター描写がドンドン派手になるらしい。
怖い。
上映・イベント情報
☆場所
川口映画館&バー「第8電影」
埼玉県川口市栄町3-9-11 リーヴァ第一ビル2F
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☆上映・イベントスケジュール
12/18(月) 19:00~『abend』『キラー』
12/19(火) 19:00~『abend』『SHIBUYA』
12/20(水) 19:00~『abend』『キラー』
12/21(木) 19:00~『abend』『SHIBUYA』
12/22(金) 19:00~『abend』『キラー』
12/23(土) 19:00~『abend』『キラー』※上映後イベント"大藤ナイト"
12/24(日) 19:00~ 『abend』『SHIBUYA』
…おそらく皆さんのうちのほとんどが土曜日の謎イベントに疑問符を浮かべているに違いないだろうから一応説明しておこう。
大藤とは『abend』に登場する鬼教官(演・ひがしゆうき)のことだ。「大藤ナイト」では彼がその場にいるみんなにカレーを配ってくれるらしい。これに関しては支配人である私でさえ全貌をよく理解できてない。
ちなみに『abend』とカレーには何の関係もありません。
マジで何なんだ…
とんでもなくカオスなことになりそうな1週間。ぜひとも皆さまお誘い合わせの上、当館までお越しください。
皆さまのメンタルが最後まで持続することを心の底よりお祈り申し上げております。
それでは今回はこの辺りで。
文章:「第8電影」支配人 岡本因果