Bounty Dog 【アグダード戦争】71-72

一度誤って思い込んだものは、他に真を教えられない限りなかなか訂正出来ない。

71

 戦闘が、3箇所でされていた。1箇所は一方的に攻撃していて既に圧勝での終わりに差し掛かっており、もう1箇所での戦いは他の箇所にいる者は誰も存在を知らない極秘の戦いで、アグダード及び全ての人間の運命を賭けた最も重要なものだった。
 ミト・ラグナル保護官と”アグダード民間お掃除部隊”の副将である朱色目の黒布がしている3箇所目の戦いは、本人達は己の行なっている戦いこそが、アグダードの運命を賭けている最も重要なものだと思っていた。朱色目は屋敷にある機械を手当たり次第に破壊しながら、屋敷に居ると”思い込んで”、敵将のカスタバラクを探していた。
 顔を見ると強制的に過度に緊張させられて呼吸が出来なくなるというターゲットの特徴を頼りに、視覚と呼吸器官を頼りに該当する人間を探し回る。探すと言っても、実際はターゲットが逃げないように己の姿を敵勢から隠しながら捜索を行なっていた。ミトも同じく朱色目に付きながらステルス任務を実施している。
 2人は現在、3階建ての屋敷の2階の端にある小さな物置部屋に移動していた。カスタバラクが捨てたと思われる贈呈品の洋酒の瓶が山のように積み上がっている。警備兵が拝借しようとした形跡も何本かに見られるが、ミトは酒の瓶を見て、ストレスが溜まると酒に逃げる癖があった、己の上司だった人を思い出した。
 朱色目もストレスが溜まり過ぎているのか、酒に逃げようとしているようだった。適当な瓶を1本掴んで引き抜く。ミトを一瞥してから、蓋を開けて、中身を床に盛大にぶち撒けた。もう2、3本も同じように施した相手にミトは目を丸くしていると、朱色目は頭から被っている黒い布の四角く切り取られた部分から出ている、浅黒い肌に付いた目を限界まで吊り上げて、少女の無言の質問に答えてきた。
「保険です。”あなたが”燃やす火の範囲が直ぐに広がるように」
 ミトは唇を強く結んだ。泣きそうになるのを堪える。朱色目は、上司であり親友である軍曹を脅威から解放する為に、軍曹及び他の部隊員達に黙って、単独で計画していたカスタバラクの暗殺を実行していた。
 ミトは暗殺計画の最終手段で使う”爆弾人間”として同行させられていた。無数のダイナマイトが付いたポンチョを着せられているが、様々な理由で脱ぐ事が出来なかった。

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