Bounty Dog【Science.Not,Magic】10-11
10
味方を囮にして犠牲にする事も、策略の内だった。最後の脱走亜人はロープを引っ張ってから離すと同時に岩陰から飛び出して、計画に組み込んでいた道具を拾った。
鮫の亜人が生え変わらせて口から落とした、鋸のような大きな歯を地面から1本手に入れる。ついでに猫の亜人が鮫を調理中に地面に置いていた、人間の道具も1つ拾って手に掴み持った。
“彼”は足が遅く持久力も無いが、瞬発的に動く事に関しては狼の亜人や猫の亜人よりも遥かに早い。
非常に素早い小回り移動をしながら別の岩陰に身を潜めると、先程まで己が居た場所を覗いている”クソ犬野郎”の金と赤色が組み合わさった不可思議な双眼付きの顔を見つめた。鮫の歯を使って、手首に装着させられていた腕輪型の機械を切り離す。無理矢理外した保護済み亜人用の追跡発信機を檻の近くに置いてから、鼬の亜人は追跡者達に勘付かれる前に、3つ目の岩陰の隙間に素早く滑り込んだ。
“クソ犬”と猫女が、何もない空間でニャーニャー、御意と独り言を呟き合ってから、檻の奥側に移動してくる。鼬は岩の隙間に身を潜めながら、ほくそ笑んだ。気絶した鮫(綱による胴体グルグル巻き仕立て)と鳥(直投入)が収まっている檻の中に顔を向けた”クソ犬”に、鮫の歯と人間の道具を使って背後から奇襲をしようと身構えると、
唸り声が聞こえてきて、鼬は硬直した。
グルルル、グルルル、低めの唸り声が聞こえてくる。
猛獣が出す、脅威的な”死”の唸り声。
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